『クロノス日本版』の編集部員が話題のモデルをインプレッションし、語り合う連載。今回は編集部の4人でユリス・ナルダン「マリーン トルピユール」を好き勝手に論評する。実際に着用したところ、視認性良し、デザイン良し、ムーブメント良しの三拍子そろった、理想的なデイリーウォッチだった。
阿形美子:文 Text by Yoshiko Agata
2022年11月16日公開記事

ユリス・ナルダンの意外な伏兵!? 「マリーン トルピユール」
細田
今回はユリス・ナルダンの「マリーン トルピユール」です。皆さん、よくご存知だと思うんですけど、最近のユリス・ナルダンは「フリーク」とか「ブラスト」とか結構派手なモデルがメインビジュアルを張ることが多い中で、改めて「マリーン」を着けてみようよ、と思って借りてきました。
広田
ナルダンといえば、マリーンクロノメーター(海洋精密時計)がルーツということで、そのデザインを腕時計に落とし込んだ実用モデルですね。
細田
これも、スモセコの3針にパワーリザーブインジケーターと、まさにマリーンクロノメーターの見た目で、しかも意外とケースが薄くて。僕は着けてみて正直、普通に毎日着けるにはめっちゃ良い時計じゃないか! と思ったんですけど。
広田
うん。ものすごく思った!
土井
使いやすかったです。
細田
僕はナルダンをあまり着けたことがなかったんですけど、予想以上ですね。

自動巻き(Cal.UN-118)。50石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径42mm)。50m防水。
鈴木
同感です。結構長い間試したけど、すごく自然に着けられた。
広田
厚さは11mmちょいくらい。
鈴木
ラグが短くて落ちてるから、腕に載せたときのフィット感が良いですよね。
細田
ケース自体もすり鉢状みたいになっていますし。
マリーンクロノメーターゆずりの視認性と左右対称の配置
広田
これ、載せてるCal.UN-118は直径31.6mm、厚さ6.18mm。それを直径42mm、厚さ約11mmのケースにぶち込んだのが上手い。皆さんも、読者の詳しくは定期購読者向け特典のムーブメントブックを見てください(笑)。
土井
文字盤が大きく、かつベゼルはかなり薄く出来てますよね。だから、パッと見た時にもう視認性がめちゃくちゃ良かったです。
細田
個人的な萌えポイントは、やっぱりスモセコのデカさと、ちゃんとリーチさせる秒針の長さ。これは自社製ムーブメントだからできる上手さかなと思います。やっぱ、このデザインはナルダンじゃないと作れない。
鈴木
スモセコはデカい。
土井
文字盤の中心まで届いてますね。

細田
これはすごいなって思いました。
広田
あと、パワーリザーブ表示。僕、普段はあんまり使わないけれども、これは結構使えた。
細田
僕も、パワーリザーブもデイトもいらない派なんですけど、この時計に関しては、マリーン クロノメーターって船上で止まらないようにパワーリザーブインジケーターが必須じゃないですか。そのデザインがうまく落とし込まれているから全然気にならないし、あとやっぱり、このスモセコの大きさだからここに収まるのであって、よく考えられてるなと思いました。
土井
デイトが6時位置に収まってるおかげで、左右対称のデザインになってますし。すごくすっきりしていますよね。
広田
それから、よく巻く!
鈴木
うん。パワーリザーブは約60時間だけど、非常に巻き上がるので、着用中はほぼフル巻きになってた(笑)。家に帰って外して8時間分くらい減っても、また3時間弱くらい着ければ減った分は巻き上がっちゃう。だから、普通に着けてればほぼパワーリザーブは気にしなくて良いね。ずっと精度が良い状態で使えるかな。
広田
今の基準ではちょっと短いって声もありそうだけど、これだけ巻いたら問題ない。
細田
自動巻きで60時間だったら外す時にもフル巻きなわけですから、例えば金曜の夜9時に外しても月曜の朝9時までは動いてます。普通の週末は問題ないですよね。
鈴木
着けたらまたすぐに巻き上がるし。
広田
いやぁ〜〜、これはあんまり文句のつけどころがないなぁ。
秀作ぞろいなアラウンド100万円の中でも、個性が光る
細田
針とかもすごい質感が良いですよね。
広田
強いて言えば、ブルー文字盤にシルバー針は強い光源下ではブラックアウトする可能性があるかな。問題のない範囲だけど。でもその意味では、白文字盤×青針を選ぶのもアリかも。
土井
デザイン的にはポリッシュのシルバー針で合ってますね。

細田
しかも、このクオリティで価格は108万9000円! 現在のミドルレンジにギリギリ収まる価格帯にしているのもさすが。
鈴木
十分にその価値はあるよね。皆が言ってるように、着けてみた時の満足度が想像以上に高い。やっぱり、ナルダンはもっとこれを推した方がいいよね。
広田
同じ価格帯だと、例えばグランドセイコーの「白樺(SLGH005)」とか、IWCの「ポルトギーゼ・オートマチック40」とか、ジャガー・ルクルトの「マスター・コントロール」とか、傑作がそろっていますけど、全然そこに伍していけますね。
鈴木
個性もちゃんとあるし。
土井
ケースはラグの上面とブレスの中ゴマをサテンにして、全部をピカピカにはしてないのもちょうど良いですね。
鈴木
ベゼルがスリムだから、着けた時の見栄えも良い。
広田
ベゼルが細いのでIQ高そうにも見えます。
鈴木
スポーティだけど、頭が良さそうに見えて。で、ローマンインデックスでちょっとラグジュアリー感もあって。ずっと着けていたくなった。
鈴木
地味だけど良い時計って、こういうことだよね。マリーンコレクションは昔からある分、成熟を感じます。
広田
昔のマリーンって、ここまで完成度高かったっけ!?
鈴木
ディテールに関しては明らかに良くなってますよね。
