「シーマスター300」オメガの名作を復刻した新型モデルを紹介。オメガ・ダイバーズの立役者をひもとく

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2022.12.17

スイスの工房で1848年に誕生した、究極を意味するギリシャ語をその名に冠したブランド「オメガ」。オメガを語る上で外せないのが、ダイバーズ時計として確固たる地位を築いているシーマスターシリーズだ。シリーズの中でも、防水性能が向上し、扱いやすくなった『シーマスター300』の人気は特に高い。今回はシーマスター300の歴史や魅力、旧型との違いについて紹介していく。


シーマスターの歴史

 街から水辺まで場所を選ばずに使えるユーティリティ時計を目指して、1948年に誕生したのが初代シーマスターだ。誕生当時はダイバーズウォッチという位置づけではなく、防水性も潜水用ではなく、生活防水レベルにとどまっていた。

 それから9年後の1957年、初代シーマスターから防水性能を向上させ、潜水機能に重きを置いて作られた「シーマスター300」が発表された。

 初代から大幅に扱いやすくなったシーマスター300は瞬く間に人気となり、その後「ダイバー300M」や「プラネットオーシャン」、「プロプロフ」など、シーマスターはダイバーズ向けのシリーズラインの代表となっていった。

オメガ初のプロフェッショナル向けダイバーズウォッチとして登場した、初代シーマスター300。ニトリル製のOリングや、ナイアス高耐圧リュウズ、変形しにくいアーマードガラスなどの新しい技術を採用したことにより、20気圧の防水性能を保持する。


シーマスター300の魅力

 人気ブランド・オメガの中でも特に人気の高いシーマスター300だが、2021年には最新モデルが登場した。

 ここでは、新型シーマスター300の魅力について紹介しよう。

高精度のムーブメントを採用

 シーマスター300に搭載されているムーブメントは、オメガ独自の技術である『コーアクシャル』が採用されている。正式名称は『コーアクシャル・エスケームーブメント』と言い、ガンギ車への摩擦を抑えて耐久性を高め、長期間で高い精度を発揮できるようになっている。

 マスター クロノメーター認定のムーブメントが採用され、パワーリザーブは約60時間と、実用性の高さもポイントだ。

キャリバー8912

新型のシーマスター300が搭載するのは、自社製のキャリバー8912。METAS認定の高い精度だけではなく、1万5000ガウスの磁気にも耐える実用機である。

ヴィンテージ感際立つ見た目

 新型シーマスター300は、文字盤の色味をベージュカラーで統一することで、シニカルさを演出している。回転ベゼルは、現在トレンドのセラミックではなくアルミ製のプレートを持つベゼルが採用され、全体的に艶消し感のあるマットな仕上がりが特徴的だ。

 また2021年モデルはクラスプに向けて先細りしていく形状となっていて、メタルバンドが過去モデルと比較して細身となっている点にも注目したい。

 こうしたデザインにこだわり抜いた結果、ヴィンテージウォッチのテイストが再現された見た目となっている。

洗練されたサンドイッチダイアル

 新型シーマスター300のダイアルは、サンドイッチダイアルが採用されている。これは、発光塗料と文字盤本体から構成されたダイアルの通称だ。これにより、文字が美しい光を放つ。暗いところで文字盤を眺めれば、神秘的に表れる文字に驚嘆するだろう。

サンドイッチダイアル

サンドイッチダイアルは、ダイアルのベースにスーパールミノバが重ねられ、その上にインデックスやアラビア数字がくり抜かれたプレートを重ねて作られる。

 インデックスには、1960年代のモデルには採用されていたアラビア数字が記されており、文字盤6の上にある「Seamaster 300」の筆記体で書かれた文字が引き立つ。

 新型シーマスター300では、ダイバースケールにも発光塗料が塗布されており、視認性が大幅に向上している。

伝統的な形状の針

 シーマスター300に採用されている針は、これまでもオメガのヘリテージモデルに採用されてきたものと同様の、ブロードアロータイプだ。

 矢印のような短針にドルフィンタイプの長針を合わせたブロードアローは、古くからオメガファン達の間で好評のデザイン。「ブロードアロー」というモデル名が登場するほど、オメガを象徴するファクターとしても知られている。

 秒針には先端が丸状になったロリポップと呼ばれる形状が採用されている点にも注目したい。このロリポップの秒針は初代モデルを意識したもので、往年のファンにはたまらないデザインだろう。


旧型シーマスター300との違い

 2021年に登場した新型シーマスター300だが、前作が発売されたのは2014年のことだ。7年前とはさまざまな部分でディテールが異なっている。

シーマスター300

シーマスター300の2014年モデル。多くの点で異なるが、最も明確なのはダイアル。前述したサンドイッチダイアルではなく、インデックスは通常の印字である。

 特にベゼルやダイアルといった、時計の顔ともいえるデザインが大きくリニューアルされている印象だ。ひとつずつその違いを紹介しよう。

サンドイッチダイアルとスーパールミノバ

 新旧のシーマスター300を見比べてみて、ひと際目を引く違いといえば、やはりサンドイッチダイアルだろう。ダイアルを重ねた立体的な構造をしていることで、インデックスの奥行きに大きな違いが生まれている。

 文字盤の視認性も大きく向上し、暗い場所であっても時間を確認しやすい。塗料にはスーパールミノバが用いられている。N夜光の中でも特に光の強いN夜光がスーパールミノバだ。

 一般的な蓄光塗料よりも、より明るく文字盤を照らし出してくれるだろう。

夜光

新型シーマスター300は、サンドイッチダイアルのためインデックスだけではなく、アラビア数字も発光する。光が届かない海中でも高い視認性を誇る。

初代シーマスター300を意識したブランドロゴ

 新作モデルには、ヴィンテージ感を演出する意匠が随所に盛り込まれている。中でも特に目をひくのが盤面中央下部にある「Seamaster 300」のロゴだ。

 これまでのモデルでは、コーアクシャル・マスタークロノメーターモデルは、必ず盤面に「CO-AXIAL MASTER CHRONOMETER」のロゴがあしらわれてきた。

 しかし新作のシーマスター300は「CO-AXIAL MASTER CHRONOMETER」のロゴはなく、「Seamaster 300」のロゴのみが刻まれている。初代シーマスター300と同じロゴだ。初代シーマスター300を明確に意識付け、ヴィンテージ感をさらに高める仕様となっている。

これまでのイメージを変えてまで、名作モデルの復刻にこだわった本作からは、初代シーマスター300への思い入れが伺えるのではないだろうか。

個性的なロリポップ針

 針にも復刻モデルらしい意匠が盛り込まれている。

 これまでシーマスター300のほとんどのモデルには、先端の尖った秒針が使われてきたが、新作モデルの秒針には先端が丸くなったロリポップ型が採用された。このロリポップ針も、初代シーマスター300「CK2913-7」のデザインを明確に意識したものだ。

 そのクラシカルな見た目は、先鋭さの中に柔らかさを生んでいる。

ストラップとカラーのバリエーション

 新作シーマスター300では、カラーリングには伝統のブラック、人気のブルーがラインナップされている。

 ストラップのバリエーションとして、ベージュのレザーストラップも用意されており、ヴィンテージ感の強調や、カジュアルシーンでの使用にも問題なく対応している。


シーマスター300の概要

シーマスター300

オメガ「シーマスター300」
自動巻き(Cal.omega8912)。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm)。30気圧防水。89万1000円(税込み)。

シーマスター300の現行モデルの概要は上記の通りだ。

 素材は時計製造で最も広く使われているステンレススティールで、オメガが使用するのは316Lステンレススティールだ。美しさと耐久性、手頃な価格を実現しており、ケースの美しい輝きは数多くのファンを魅了する。

 オメガの時計は精度・耐磁性・防水性・耐久性・耐衝撃性にも優れており、少ないメンテナンスで長く楽しめるのも魅力的だ。


オメガ・ダイバーズ人気の火付け役「シーマスター300」

 シーマスター300は2021年に最新モデルが登場し、新しい技術を取り入れ扱いやすくなりながらも、初代モデルのデザインを踏襲した、ファンにはたまらない時計へと進化した。

 オメガのダイバーズ時計人気の火付け役ともなったシーマスターシリーズを語る上でも、見逃せない1本だ。

 シーマスター300を一度手に取り、シーマスターの軌跡に触れてみてほしい。


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