ユニークながら視認性は確保
細田
それから、時計としての評価も聞かせてもらってもいいですか。視認性とかはどうでした?
鈴木
率直に、着用する前はこのモデルって秒針がない上に時針も分針もぶっとくて、時間読めるのかな? と思っていたんだけど、意外と読めました! 普通にパッと手元を見て時間の判別ができたので。

細田
時分針が重なった状態の写真も撮りましたが、針は太いけど、長さが結構違うし、針高も余裕があるので、ちゃんと読めるんですよね。
鈴木
分針もちゃんとインデックスにリーチしているし。すでに登場から20年以上が経過しているから、さすがに配慮されていますね。
細田
遊星歯車を採用したのは、フリークXからでしたっけ?
広田
そうだと思います。仕組みとしては遊びが多そうだったけど、針合わせの感触は進ませる方向・戻す方向ともに、まあまあ良かったですね。重い構造物を回すにもかかわらずに比較的スムーズでした。
土井
僕が思ったのは、この遊星歯車の歯が腕時計としては大きいなと。見た目からするとガタやバックラッシュが大きいかなと思ったんですけど、触ってみるとそんなこともなくて。

広田
これ、受け側の歯車の先端が三角形みたいになっているのはインボリュート(※)ですよね?
※歯車の歯の軸と直交する断面の形状をインボリュート曲線としたもの。
鈴木
これで遊びがなく収まっているのはすごいですよね。むしろ、巻き上げ時のリュウズが不安になるくらい軽かったじゃないですか。それをブランド広報の方に聞いたらCal.UN-118もそうみたいで、ムーブメントの特徴なのかなとは思うけど、軽すぎて怖かった。
土井
フル巻きの状態でもリュウズが軽くてローターもかなりスムーズに動きましたね。切り替え車方式とかだとあまり見られない、独特の感触だと思いました。
細田
マジックレバーの受けがピン式なのはよくある話なんですか?
土井
形は違いますけど、セイコーもピンで留めていましたよ。ただ、ナルダンとは逆側で、受けの裏、Cリングみたいなので嵌めていました。
鈴木
これはマジックレバーがしっかり見えてるよね。

広田
単純にクリップで留めることで、軽く動くことを目的としているんだと思います。受けがない分を薄くできますし、簡素に支えて抵抗も増やさないっていう賢いやり方です。ユリス・ナルダンは昔、レマニアのクロノグラフムーブメントを改良して使っていた頃もマジックレバーを採用していました。そこからの経験値があるので、マジックレバーは巻くんです。だからハズレはない!
鈴木
確かに、使用感としては巻き上げ効率が良さそうな感覚はありました。
土井
画像でCal.UN-118と見比べると、巻き上げ部分はほぼ一緒ですね。前回のマリンクロノメーターみたいにパワーリザーブインジケーターは付いていませんが、基本は同じだと考えると使っていて安心感があります。
計算され尽くした外装も実にモダン
広田
ちなみに、この文字盤のブルーの加工は何ですか? 発色がすごく綺麗ですよね。
鈴木
地板の筋目が見えるから、PVDじゃないかな。この色味がシリコン素材ともマッチしていて非常にいいですね。ローターもブルーで合わせてるし。
土井
最近はムーブメントにもPVDを施すブランドが増えてきましたね。デザインとして認められてきたように思います。
細田
それから、このムーブメントって穴石の人口ルビーが全部透明なのも珍しいなと思いました。
鈴木
青がより際立つよね。
広田
穴石は人工ルビーで色を出しているので、あえて最初から透明で作らせているんじゃないですかね。穴石の色からもナルダンが今後も長く作るぞという意志を感じます。
鈴木
そうだね、きっとある程度のロットで生産しているだろうし。でも、透明な石を使うことで、見た目がすっきりしていいんじゃないですか?
細田
それとサイドから見ると風防がボックス状になっていますけど、これって文字盤に立体感をもたせるためにスペースを開けたと見ていいんですかね?
広田
比較的、上の構造物が大きいから、ケースをフラットにしてしまうとやっぱり厚みが出てしまうので。
鈴木
こうすることで立体感は残しながらもケースは薄くできるね。風防でスペースを稼げるから。
広田
プロファイルも絞っている。
細田
チタン製ケースの造形もよく見ると凝ってますよね。

土井
ケースと中身の配色のバランスがすごく上手いと思いました。ベゼルはムーブメントと同じ濃いブルーで、リュウズガードではないですけど、ケースサイドの別体パーツも同色を差し色として使っていて。
広田
お洒落です。ケースの仕上げも、分かりやすい高級感があるわけではないけど、上質に作られている感じは伝わるので、ナルダンぽいなと思いました。
鈴木
ケースサイズは43mm。それなりに大きさはあるけど、チタンで軽かったから取り回しは良かったです。
細田
ラグも短いですしね。
広田
これを着けた状態で、時計のコレクターと会って食事をしたら「これは良いですね! 買いますよ」って言っていたくらいなので。
鈴木
自分も結構長時間着用して、着用感も快適だったけど、やっぱり見た目がすごく目立つので、これまでレビューをやってきた中でも声をかけられる率が高かったな。会話のタネにしたいとか、存在感のある時計の好きな人にはぴったりかも。
土井
遠目から見ても違いはハッキリ分かりますよね。
鈴木
デザイン的にラグスポとは言わないけど、上質でちゃんとした作りはしているから。
広田
ちゃんとこの価格帯で良いものにはなっていますよね。
鈴木
個性もありますしね。
むしろ、オタク以外に触ってほしいモデルに成長
土井
ひとつだけ装着感について注文すると、自分はストラップの穴が足りなかったですね。一番小さいところでユルめに着けました。
鈴木
日本市場用は、もうひと穴必要かもしれないですね。
土井
それからこのストラップ、幅が21mmで。
広田
また微妙に汎用性のないサイズを(苦笑)。
土井
なので、フリークを持っている友人はサイズがなかなかないということで、オーダーで替えのストラップを作ったと言っていました。
鈴木
ストラップへの配慮もあるともっと良いかもね。
細田
それからバックルはどうでした? チタン製の両開きのバックルでしたが。
土井
腕の形に合わせて両端をキュッとカーブさせていて、厚みもかなり抑えられていて良かったですね。
細田
観音開きって着脱がしづらいものも多いけど、このバックルはすごい良くできていましたね。
鈴木
メタルブレスで観音開きバックルだと重くて着けにくい場合が多いけど、これはバックル自体が軽くてストラップタイプだから問題なかったな。
広田
デスクワークの邪魔にもならなかったですね。
鈴木
そうですね。やっぱりナルダンって手堅いなって思います。
広田
あまり過不足のない時計。面白いけど、ちゃんと使える時計。
細田
瞬時に読み取ろうとした時に時間が分からないタイミングは絶対出てくるとは思うんですけど、それでも実用性も担保されている時計です。
広田
フリークはオタクしか知らないコレクションだったけど、フリークXはむしろオタク以外に触ってほしい。全然気兼ねなく使えちゃうし、磁気帯びもしにくいし。
鈴木
そうですね。良い意味でなじんできました。時計オタクじゃなくてもファッション感度の高い人とか個性の欲しい人の手元にあると良いよね。しかも普通に使えるから。初代のジオングだと、一般の方には使いにくかったと思うけど、これは「針も合わせらんねーよ! ゼンマイも巻けねーよ!」っていうのはないです。
広田
フリークってすごい名前ですけど、成熟したなって超思いました、本当に。マルジェラとかを着ている人、ぜひ買ってくれ、という感じです(笑)
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