フェルディナント・ベルトゥーの全く新しいクロノメーター「クロノメーター FB 3SPC.1」

FEATURE本誌記事
2022.12.21

あのフェルディナント・ベルトゥーが初のベーシックなモデルを発表した。新作「クロノメーター FB 3SPC.1」はしかし、ベルトゥーらしさに満ちた野心作だ。

クロノメーター FB 3SPC.1
フェルディナント・ベルトゥーの野心作。100時間を費やす仕上げは相変わらず傑出している。針はCDV処理を施した18Kゴールド製。手巻き(Cal. FB-SPC)。47石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG(直径42.3mm、厚さ9.43mm)。3気圧防水。価格未定。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
(2022年12月21日掲載記事)


シリンダー型ヒゲゼンマイを採用する全く新しいクロノメーター

 ウォッチズ&ワンダーズに出展したフェルディナント・ベルトゥー。ブースを訪問した筆者に、責任者のヴァンサン・ラペールはもったいぶって時計を見せてくれた。「まだ発表前だけど」ということで見せられたのが「クロノメーター FB 3SPC.1」である。

 本作は、同社初のトゥールビヨンを搭載していない腕時計である。モチーフとなったのは、ルイ・ベルトゥーが1793年に製作したデシマルウォッチの№26。文字盤側の9時位置は大きく肉抜きされ、そこに№26同様の、シリンダー型ヒゲゼンマイ付きの巨大なテンワが据え付けられた。以前ラペールは「ベーシックなモデルを作る」と語っていたが、これは予想以上の凝りようだ。また見た限りで言うと、100時間を費やしたという仕上げは相変わらずかなり良質だ。ベルトゥーの名を冠する以上、もう少し面取りの入り角を強調しても良さそうだが、現状でも十分か。また針合わせのぬるりとした感触や、懐中時計を思わせる剛直な巻き味は、好事家には好まれるはずだ。

 本作の魅力は数多いが、時計好きにとっての一番の朗報は、使える大きさに留まったことだろう。既存のモデルはいずれも大きかったが、本作は直径42.3㎜、厚さ9.43㎜と袖口を邪魔しないサイズにまとまった。15リーニュの機械を押し込んでこのまとまりは見事だ。もっとも、全体の完成度が高いが故に、残念な点もある。それが天真の上下に施されたインカブロックだ。もう少しクラシカルな耐震装置に替えれば、本作はよりデザインのまとまりを得るだろう。

 ユニークさはそのままに使えるサイズと、少しばかり魅力的なプライスになるであろう本作は、愛好家なら一度は見るべきだ。筆者は大変好みである。

時計の9時側にはシリンダー型のヒゲゼンマイを備えたテンワが鎮座する。ヒゲゼンマイはプレシジョン・エンジニアリング製。興味深いのは、低振動と縦長ヒゲゼンマイにもかかわらずクロノメーターを得た点。ヒゲゼンマイを厚くして変形を抑えているのが分かる。


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