世界記録に挑め!屈指の防水性能を誇る4本のダイバーズウォッチ

FEATUREWatchTime
2023.04.20

地球上にある海洋の最深部は、太平洋マリアナ海溝のチャレンジャー海淵だ。水深1万mを超えるこの場所の水圧に耐える腕時計を作ろうと、オメガやロレックスは長年にわたって挑戦してきた。現在ではその技術を応用した市販モデルも作られるようになり、この記録に挑む新たなブランドも現れている。今回は、世界屈指の防水性能を誇る腕時計4本を紹介する。

Originally published on watchtime.com
Text by Alexander Krupp
2023年4月20日掲載記事


オメガ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」

シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ プロフェッショナル

オメガ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ プロフェッショナル」
自動巻き(Cal.8912)。3石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径52mm)。1万5000m防水。非売品。

 2019年4月28日、探検家のヴィクター・ヴェスコヴォは深海潜水艇「DSVリミティング・ファクター」でマリアナ海溝の最深部に到達し、水深1万935mの潜水世界記録を樹立した。

 この時、潜水艇のロボットアームにはオメガの「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ プロフェッショナル」が取り付けられていた。このモデルは、事前のテストで1万5000mへの潜水が可能だと証明されていた。

 ベゼル、ケース、ケースバック、そしてリュウズは、グレード5チタンが使用されている。このチタンは、DSVリミティング・ファクターを製作した際の廃材を再利用したものだ。また、サファイアクリスタル風防をケースに強固かつ弾力性を持たせてはめ込むために、リキッドメタル™が採用されている。これらによって、1万5000mもの防水性能を持ちながら、時計の直径は52mm、厚さは28mm未満に抑えられた。

 全3本のシーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ プロフェッショナルのうち、2本は潜水艇のロボットアームに装着され、もう1本は海底で記録収集を行うランダーに装着された。すべての時計は問題なく潜水し、無傷で水面に戻ってきた。

シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ

オメガ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」
自動巻き(Cal.8912)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。O‑MEGAスティールケース(直径45.5mm)。6000m防水。ラバーストラップ。165万円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

 シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ プロフェッショナルの設計を受け継ぎ、市販モデルとして登場したのが「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」だ。

 6000mという高い防水性能を持つシーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープには、チタンケースのモデルとO-MEGAスティールケースのモデルが存在する。O‑MEGAスティールとは、オメガ独自のステンレススティール合金であり、高い強度と耐腐食性、耐アレルギー性を備える。ケースにはポリッシュ仕上げのブラックセラミック製ベゼルと、リキッドメタル™製ダイビングスケール、ドーム型のサファイアクリスタル風防が組み合わされた。

 ラッカー仕上げの文字盤には18Kホワイトゴールド製の針とインデックスが配され、いずれにもホワイトのスーパールミノバが塗布されている。コーアクシャル マスター クロノメーター キャリバー8912を搭載するケースの厚さは18.12mmだ。シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ プロフェッショナルと比べ、約10mmほど薄くなっている。


ロレックス「オイスター パーペチュアル ディープシー チャレンジ」

ディープシー チャレンジ

ロレックス「ディープシー チャレンジ」
自動巻き(Cal.3135)。SS×Tiケース(直径51.4mm、厚さ28.5mm)。1万2000m防水。試作モデル。

 映画監督で探検家でもあるジェームズ・キャメロンは、2012年に自身の所有する潜水艇ディープシー チャレンジャー号で、マリアナ海溝チャレンジャー海淵の水深1万908mに到達した。

 この時、潜水艇のロボットアームにはロレックスの「ディープシー チャレンジ」の試作モデルが取り付けられていた。この試作モデルは直径51.4mm、厚さ28.5mmと非常に大ぶりだ。サファイアクリスタル製の風防は14.3mmの厚さを持ち、強化されたチタン製ケースバックにより強い水圧に耐え抜いた。時計自体のテストでは、水深1万2000mの水圧に耐えることも証明されていた。

オイスター パーペチュアル ディープシー チャレンジ

ロレックス「オイスター パーペチュアル ディープシー チャレンジ」
自動巻き(Cal.3230)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。RLXチタンケース(直径50mm)。1万1000m防水。309万3200円(税込み)。

 このディープシー チャレンジからインスピレーションを受けて作られ、市販モデルとして登場したのが、1万1000mの防水性能を備える「オイスター パーペチュアル ディープシー チャレンジ」だ。

 ケースはグレード5のチタン合金であるRLXチタンで作られており、ヘリウムエスケープバルブを備えている。超軽量の金属であるRLXチタンの採用により、2012年のディープシー チャレンジから30%軽量化されている。ディープシー チャレンジのケース厚が28.5mmだったのに対し、こちらは23mmと、少し薄くなった。また、重さはディープシー チャレンジの330gに対して250gと、80g軽くなっている。


VDB「P1070 12000m マリアナ海溝」

P1070 12000m マリアナ海溝

VDB「P1070 12000m マリアナ海溝」
手巻き(Cal.1000)。Tiケース(直径48mm)。1万2000m防水。国内未入荷。約1万2000ユーロ(約177万6000円)。

 ロレックス「ディープシー チャレンジ」の防水性能に追随した時計がある。VDBが2015年に発表した「P1070」だ。

 VDBは、2007年にドイツのエルフルトで創業した時計ブランドである。がっちりと堅牢な作りのP1070も、1万2000mの水圧テストに耐え抜いたのだ。2020年には後継モデルの「P1070 12000m マリアナ海溝」が発表された。27mmのケース厚と12mmのサファイアクリスタル製風防によって、同じ防水性を実現している。

 なお、この時計に搭載されたムーブメントはロレックスの歴史的なムーブメントであるCal.1000。1953年に潜水艇トリエステ号の船体に取り付けられ、深度3150mに辿り着いたロレックスの「ディープシー・スペシャル No.1」にも、このCal.1000をベースとするムーブメントが搭載されていた。


H20 ウォッチ「カルマー2 オセアニックタイム 10マイル」

カルマー2 オセアニックタイム 10マイルズ

H20 ウォッチ「カルマー2 オセアニックタイム 10マイル」
自動巻き(Cal.ETA 2892)。21石。2万8800振動/時。Tiケース(直径44mm)。1万6093m防水。国内未入荷。1963.50ユーロ(約29万円)。

 世界でも最も防水性が高い腕時計は、ドイツ・ブレーメン近郊のゾットルムで2010年に創業したH20 ウォッチの「カルマー2 オセアニックタイム 10マイルズ」だ。

 その名が示すとおり、防水性能は10マイル、つまり1万6093mである。この水深は地球上では到達できないものだが、ドイツの専門調査機関による公式ラボラトリーでのテストによって防水性能が証明されている。ケース厚さは22.85mmで、理論上、水深2万5300mまで耐えることができる。世界記録を保持するこの腕時計は市販モデルであり、購入することが可能だ(日本国内では未入荷)。


脅威の1万1000m防水! ロレックスが“ひっそりと”発表した新作「ディープシー チャレンジ」を考察

https://www.webchronos.net/news/86135/
水深1万mに到達した“初代ウルトラディープ”の設計を受け継ぐオメガ「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」

https://www.webchronos.net/features/78638/
オメガのダイバーズウォッチの歴史。ブランド初のダイバーズと「シーマスター」コレクション

https://www.webchronos.net/features/93463/