ブレゲ/タイプXX

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.04.01

TYPE XXII  [Ref.3880] 6th Generation Model
積算計の高速運針を盛り込んだ最新現行機

タイプ トゥエンティトゥ Ref.3880
タイプⅩⅩⅠを高振動化したモデル。センターのクロノグラフ秒針は、60秒ではなく30秒で1回転する。この写真の場合、積算時間は21分49秒。7万2000振動/時という超高振動は、精密な積算と、それ以上に機械式クロノグラフらしからぬ超高精度を実現した。従来のモデル同様、すべての積算表示はフライバックが可能だ。自動巻き(Cal.589F)。28石。7万2000振動/時。パワーリザーブ約40時間。SS(直径44mm)。100m防水。218万円。

 変則的な30分積算計を持つアエロナバルと、デイト表示を加えたトランスアトランティック。好きな人にとっては個性だろうが、その弱点はブレゲも理解していたようで、2003年にはセンター60分積算計を備えたタイプXXⅠをリリース。ブレゲはこのモデルをさらに改良し、10年には、7万2000振動/時という超高振動を持つ、タイプXXⅡを発表した。これは初代のタイプⅩⅩから数えると、六代目にあたる。

 現在、タイプⅩⅩやⅩⅪといった軍用規格は公式には存在しない。そのため各社はタイプⅩⅩやⅩⅪ風のクロノグラフを作るようになった。しかし、その中でタイプⅩⅩに最も忠実なモデルが、ブレゲのタイプXXⅡではないだろうか。

 このモデルに関しては、7万2000振動/時という超高振動ばかりが注目される。しかしブレゲは、このモデルでオリジナルへの回帰を目指したのではないか。まず、タイプXXⅡが採用したシリコン製の脱進機と7万2000振動/時。精度向上というアプローチは、タイプⅩⅩが目指した方向性そのままだ。加えて文字盤に刻まれた「レトゥール・アン・ヴォール」(フライバック)の文字と、赤線が加えられた4時位置のプッシュボタンは、この時計の祖がフライバックであったことを強調する。指がかりを良くしたリュウズと、長く伸ばしたファイブミニッツインデックスも、やはりオリジナルを思わせる造形だ。

 これはタイプⅩⅩとは似て非なる時計である。機能面とその性能、また時計としての在り方も別物と言ってよい。しかし、この新しいクロノグラフは、そういって差し支えなければタイプⅩⅩの完成形だろう。フライバックであること。そして高精度であること。半世紀前にタイプⅩⅩ規格が目指した理想は、ドダネでもアウリコストでもヴィクサでもなく、結局のところ、ブレゲが実現することになったのである。

(左上)タイプⅩⅩⅠからは、3時位置にあった30分積算計が、センター配置の60分積算計に変更された。赤い針が30秒で1回転するクロノグラフ秒針。先端のみ赤い針が60分積算針。6時位置には12時間表示のGMT副時計を備える。(右上)「レトゥール・アン・ヴォール」(=フライバック)と記された文字盤。プロトタイプでは、12時位置に水平移動式の秒積算カウンター(積算秒針の1周目、2周目を表示)が付いていたが、製品版ではセンター60分積算針によるカラー表示に改められた。なお歴代モデルと異なり、それぞれのアラビア数字に蓄光塗料は施されていない。タイプⅩⅩⅠと異なり、あえて文字盤のツヤを落とした理由は、この時計が実用機であることを強調したかったためだろう。(中)ケースサイド。センター積算計の採用などによって、ケース厚は18.05mmに増えた。ただし重心が低めで、ラグを大きく曲げてあるため、装着感は良好だ。(左下)ネジ留め式のケースバック。スクリュー式でない理由は、高振動化をもたらしたシリコン製の脱進機を見せるためだろうか。(右下)より立体感を増したベゼル。もともとケースの仕上げは良好だったが、タイプⅩⅩⅠ以降はさらに鏡面がフラットになった。各部品の噛み合わせも良好で、エッジも極めて精密に成形されている。3時位置に見えるのは24時間表示のGMT副時針。


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