オーデマピゲ/ロイヤル オーク オフショア

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.05.26

Royal Oak OFFSHORE
DIVER CHRONOGRAPH [42MM]
オリジナルレイアウトに回帰した最新鋭

ロイヤル オーク オフショア・ダイバー・クロノグラフ[42mm]
Ref.26703ST。2016年初出。オフショア ダイバーと同構造のケースに、クロノグラフを搭載したモデル。ブティック限定モデル。自動巻き(Cal.3124/3841)。59石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SS(直径42mm)。300m防水。280万円。

 2010年にリリースされ、14年モデルで完成を見たオフショア ダイバー。慎重なオーデマ ピゲは、さらに2年かけて「オフショア・ダイバー クロノグラフ」を準備した。26703という〝若い〟リファレンスから推測するに、オーデマ ピゲは3針モデルと同時期にクロノグラフの商品化を考えていたのだろう。しかし同社は時間をかけてプロダクトを練り上げ、果たせるかな、非凡な完成度を与えることに成功した。

 それを示すのが文字盤である。オーデマ ピゲはオフショアの文字盤で、さまざまな取り組みを行ってきた。オフショアの代名詞であるメガ・タペストリー模様は、2000年前後から使われるようになったものだ。しかし当初はエッジのゆるいものであり、表面に施された厚いラッカー仕上げが、その印象をいっそう強調した。しかしオーデマ ピゲは同じエンボス仕上げながらも、後にメガ・タペストリーの仕上げを刷新。加えて、可能な限り薄いメッキ(または薄い塗装)を施すようになった。現在のオフショアが、文字盤の繊細な下地を誇るようになった理由だ。

 立体感と下地を改善できたら、次の課題は発色の改善だ。そこでオーデマ ピゲは、この新しいダイバー クロノに、定番のネイビーに加えて、オレンジ、グリーン、そしてイエローという難しい色味を与えてみせた。発色を改善するため、青以外の文字盤は色の出しやすいラッカー仕上げ。しかし下地の処理を殺しきらない塗膜の厚みは、オーデマ ピゲが文字盤にも熟達したという証しである。

 個人的な好みを言うと、最も好ましい意匠と仕上げを持つオフショア ダイバー クロノ。確かに、普通のダイバーズクロノとしては極めて高価だし、モジュールクロノであることを考えればなおさらだ。しかし、この時計のパッケージングとディテールには、手に取るだけの説得力が十二分にある。

(左上)回転式のインナーベゼルを持つにもかかわらず、ケースサイズと厚みは、オフショア・クロノグラフにほぼ同じ。スポーツウォッチとしては豪奢と言える仕上げも、やはり同様である。(右上)視認性向上のため、あえてツヤを落としたメガ・タペストリー文字盤。文字盤の仕上げに関しては、もはや文句の付けようがない。(中)ケースサイド。普通、こういった立体的なケースを作る場合、リュウズガードの部分は別部品にする。その方が仕上げしやすいためだ。しかしオフショアのほとんどのモデルは、ミドルケースとの一体成形。ヤスリで筋目を施す作業はかなり困難になるが、仕上げは写真が示す通り。サテン仕上げのケースとしては、最も高度なもののひとつと言えるだろう。この時計がそれなりの価格になるのもむべなるかな。(左下)回転式のインナーベゼルは、10時位置のリュウズで操作が可能だ。その感触は高級機に相応しく、適度な節度感がある。また青メッキの上にイエローのペイントを施すという難しい仕上げを施しているにもかかわらず、イエローの発色はかなり良好だ。なお、オレンジ、グリーン、イエローの文字盤はほぼラッカー仕上げである。(右下)ケースバック。時計自体は決して軽くないが、裏蓋が平たく、重心が低いため装着感は相変わらず優秀だ。



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