ブランパン/フィフティ ファゾムス

FEATUREアイコニックピースの肖像
2021.05.29

FIFTY FATHOMS AUTOMATIC[2007]
アイコンとして復活を遂げた1stレプリカ

フィフティ ファゾムス オートマティック

フィフティ ファゾムス オートマティック
2007年発表の第3世代モデル。搭載するCal.1315は手巻きのCal.13R0を自動巻き化したものだが、併せてテンプを重いグリュシデュール製に変更し、携帯精度を改善した。自動巻き。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約5日間。SS(直径45mm)。300m防水。154万4400円。

 ジャン-ジャック・フィスターの退陣に伴い、1980年以降、フィフティ ファゾムスは、市場から一度姿を消した。しかし同社を継承したジャン-クロード・ビバーは、97年に「トリロジーコレクション」として、フィフティ ファゾムスを復活させた。これはオリジナルモデルに触発された造形を持っていたが、ケースや文字盤の作りは、明らかに高級機のそれだった。

 フィフティ ファゾムスが本当の意味での基幹コレクションとなったのは、2002年にマーク・A・ハイエックがCEOに就任して以降である。奇しくもフィスター同様、ダイバーだったハイエックは、フィフティ ファゾムスがブランパンの伝統を継承するコレクションであることを見出したのである。

 翌03年、ブランパンは過去と直結した新たなフィフティ ファゾムスを生み出すべく、外装を1953年のファーストモデルに近づけた限定版を発表した。このモデルの大ヒットを受けて、ブランパンはフィフティ ファゾムスの刷新に取り組んだ。完成したのが、2007年発表の「フィフティ ファゾムス オートマティック」である。直径は45㎜に拡大され、ムーブメントは開発に4年を要した自社製の新型自動巻きに置き換わった。

 新型ムーブメントのキャリバー1315は、直径こそ大きかったが、約5日間という長いパワーリザーブを持つほか、フリースプラングテンプの採用により、等時性と耐衝撃性を大幅に高めていた。また、デイト表示を逆戻しできる機構は、この時計にいっそう高い実用性をもたらした。

 優れた外装に加えて、自社製の自動巻きムーブメントを搭載した第3世代のフィフティ ファゾムス。07年発表の本作をもって、フィフティ ファゾムスはいよいよ完成を見たと言っていいだろう。

フィフティ ファゾムス オートマティック

(右上)ファーストモデルを思わせる回転ベゼル。しかしトップの素材は、プレキシガラスからサファイアクリスタルに変更された。なお、ベゼルのトップをドーム状に成形したのは、CEOであるマーク・A・ハイエックのアドバイスによる。2007年当時、サファイアクリスタルを立体的にくりぬくのは極めてコストのかかる試みだった。(左上)オリジナル同様、ペイントされた黒文字盤だが、高級機に相応しく、わずかにツヤが与えられた。外周に筋目を加えて、独特の表情を与えるのは、ブランパンならではの個性だ。またインデックスも、エンボスではなくアプライドである。(中)ケースサイド。直径は45mm、厚さは15.5mmもあるが、重心が低く、ラグを短く切ったため取り回しは悪くない。(右下)ファーストモデルとまったく違うのが、リュウズである。近代的なねじ込み式になったほか、サイズも拡大された。また、高級機に相応しく、ねじ込み式のチューブは交換が可能だ。ベルトの固定は、一般的なバネ棒ではなく、六角形の穴が設けられた特別なバーで行う。そのためストラップの交換には六角レンチが必要である。(左下)裏蓋もやはり大きく変わった。パッキンの進化に伴い、1970年代以降のフィフティ ファゾムスは標準的なねじ込み式のケースバックに改められた。97年以降のモデルもやはり例外ではない。ただ軟鉄製の耐磁ケースを内蔵する構成はファーストモデルに同じだ。なお97年以降採用された鏡面仕上げのケースは、切削ではなく冷間鍛造によるもの。極めて良質なうえ、傷が付きにくい。