パネライ/ラジオミール

FEATUREアイコニックピースの肖像
2019.02.14

RADIOMIR 1940 3DAYS-47mm [PAM00790]
ルミノールへと発展してゆく過渡期の造形美

ラジオミール 1940 スリーデイズ アッチャイオ-47mm

ラジオミール 1940 スリーデイズ アッチャイオ-47mm
2018年の新作。文字盤はフィレンツェのパネライブティックにかつて置かれていた、振り子時計をモチーフにしている。より高級な仕上げを持つモデルだ。手巻き(Cal.P.3000)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約3日間。SS(直径47mm)。100m防水。限定500本。100万円。

 紆余曲折を経て、高級なベーシックに落ち着こうとするラジオミール。その方向性を強調したのが、2018年に発表された「ラジオミール 1940 スリーデイズ アッチャイオ-47㎜」である。

 デザインモチーフに選ばれたのは、ワイヤではなく一体型ラグを持つ、1940年製のラジオミール。立体的なデザインを持つ(=製造コストも高い)ため、パネライはこのラジオミール 1940を、いっそう高級なラインと位置づけてきた。その方向性は、本作も変わりない。搭載するのは、量産型のP.6000ではなく、高級なP.3000。スペックはほぼ同じだが、仕上げが良く、テンプも大きいため、理論上の等時性も一層高い。現在のロゴはソリッドバックを持つが、本作を含むラジオミール 1940は、すべてシースルーバックである。あえて変更するだけあって、見られる仕上げを施しているのが、普通のラジオミールとの違いと言える。価格はロゴの2倍以上だが、凝った外装と優れたムーブメントを考えればやむを得ないところか。また、風防も、コストのかかる立体的なドームサファイアに変更されている。

 世界初の本格的な防水時計として生まれ、今や、高級なベーシックを体現するに至ったラジオミール。形こそ、1936年の第1作からほぼ変わっていないが、これほどさまざまなキャラクターを与えられてきたコレクションは他にない。しかし、一層見るべきは、コレクションの変遷以上に、質の向上だろう。

 かつてミリタリーウォッチであり、復活後はしばしばファッションウォッチと揶揄されたパネライは、今や申し分のないほど、実用的な高級時計へと変貌した。それを象徴するのが、今のラジオミールと言える。控えめに言っても、時計好きならば、現在のパネライ、とりわけラジオミールは、一度は手にすべきモデルだろう。

ラジオミール 1940 スリーデイズ アッチャイオ-47mm

(右)振り子時計のデザインを模した文字盤。つや消しした“地”の処理は通常のラジオミールに同じ。しかし、ロゴが深彫りされたほか、レイルウェイトラックと、内側の2本の線は、印字の難しい金色でプリント処理される。高級版のラジオミール 1940に相応しく、シンプルだが、凝った文字盤である。(左)ケース形状の変更に伴い、リュウズのチューブも改められた。121ページのラジオミールと比較すると、形状が違うだけでなく、仕上げも明らかに改善されている。

ラジオミール 1940 スリーデイズ アッチャイオ-47mm

ケースサイド。通常のラジオミールに比べて、立体感を増していることが分かる。高級ラインが採用するボックス状の通常のサファイアクリスタル風防は、アンジェロ・ボナーティ曰く「普通のドーム型サファイアクリスタルに比べて、5倍以上製造コストがかかる」もの。

ラジオミール 1940 スリーデイズ アッチャイオ-47mm

(右)極めて複雑な形状を持つケースサイド。鍛造に加えて切削を施すことで、今のパネライはより立体的なケースを持てるようになった。ケースは全面ポリッシュ仕上げだが、稜線はよく残っている。(左)シースルーになったケースバック。搭載するのは、量産向けのP.6000系ではなく、高級版のP.3000系である。スペックはほぼ同じだが、見た目と理論上の等時性が異なる。



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