ハリー・ウィンストン/レトログラード Part.3

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.05.23

HW OCEAN RETROGRADE

アワー&ミニッツを表示する最新同軸レトログラード

HW オーシャン・レトログラード オートマティック 42mm

HW オーシャン・レトログラード オートマティック 42mm
2018年にザリウムケースで発表された「プロジェクト Z12」の素材違い。文字盤の上下に時分のダブルレトログラードを持つ。自動巻き(Cal.HW3306)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRG(直径42.2mm、厚さ11.27mm)。10気圧防水。485万円。

 レトログラードを極大化することで、ユニークさを強調し、視認性も向上させる。近年のハリー・ウィンストンが好む路線を、いっそう推し進めたのが2018年初出の「プロジェクト Z12」だ。最大の特徴は、文字盤の上下に、時と分の同軸レトログラードを配置した点。翌19年に発表された「HW オーシャン・レトログラード オートマティック42㎜」は、その意匠を忠実に受け継いでいる。

 一般的に、今あるレトログラードの多くは、レトログラード式の分針とジャンピングアワーを持っている。理由は、ふたつの同期がとりやすいのと、文字盤に余白を残しやすいためだ。文字盤の重要性が増す近年、この構成はいっそう目立っている。

 対してハリー・ウィンストンは文字盤のほぼ全面を、あえてレトログラードで埋め尽くした。同社が極めて優れた文字盤を与えるようになったことを思えば意外だが、ハリー・ウィンストンは、むしろレトログラードを、明確なアイコンとして打ち出したいのだろう。ザリウムを用いた18年モデルと19年の本作では、その傾向が一層強い。もっとも、レトログラードの軸を支えるカバーにはマンハッタン橋の高欄を模した模様が施されるほか、黒いカバーの模様も、マンハッタン橋のケーブルに範を取っている。いずれも仕上げは良く、文字盤を持たないこの時計の、大きなアクセントとなっている。逆説的な表現になるが、文字盤でさまざまな表現ができればこその、ダイアルレスという構造を取れたわけだ。

 1989年のHW プルミエールから約30年。他にはない表示を設けて進化し続けるハリー・ウィンストンのレトログラード機構は、ついに文字盤全面を覆うようになった。モデルではなく、ひとつの機構をアイコンにまで育てあげたという点で、ハリー・ウィンストンは非凡なメーカーである。

HW オーシャン・レトログラード オートマティック 42mm

(左)お馴染みのリュウズガード。本作に限らず、HW オーシャン・コレクションのリュウズはスポーツウォッチに相応しく、極めて大きい。遊びは全くなく、針合わせの感触も良好だ。(右)文字盤の上下に設けられたダブルレトログラードは、その中心に軸を押さえるカバーを設けている。マンハッタンブリッジの高欄を模した模様は、サンドブラスト仕上げ。文字盤に注力する近年のハリー・ウィンストンらしく、仕上げは際立っている。2本の針の下に見えるのは、放射状のジュネーブ仕上げを施した飾り板。これも最近のハリー・ウィンストンが好むモチーフだ。なお、2本のレトログラード針は完全に同期して帰零する。

HW オーシャン・レトログラード オートマティック 42mm

ケースサイド。やはりHW オーシャン・コレクションに準じた造形を持っている。近年のハリー・ウィンストンはケースのエッジを立てているが、それぞれの角は微妙に落とされている。そのさじ加減は、生半な高級時計メーカー以上にうまい。

HW オーシャン・レトログラード オートマティック 42mm

(左)搭載するCal.HW3306の直径は34.0mmしかない。42.2mmのケースに載せると間延びしてしまうが、裏蓋の一部を筋目仕上げにすることで、ムーブメントの小ささを感じさせない。(右)別体のラグ。立体感を強調すべく、やはりすべてのエッジには、わずかに面取りが施されている。


Contact info: ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション Tel.0120-346-376


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