【時の記念日100周年企画展 「時」展覧会2020】東京・上野の国立科学博物館で開催

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2020.06.03

国立科学博物館

2020年6月10日、「時の記念日」は制定100周年を迎える。これを記念して、東京・上野の国立科学博物館では2020年6月5日から7月12日に「時の記念日100周年企画展『時』展覧会2020」が開催される。過去100年の間で私たち日本人の時間感覚は大きく変わり、それに伴って時計産業や「時間」に関する研究分野は大きな発展を遂げた。展覧会では、時間意識の変化への起点となったひとつである100年前の「時展覧会」での史料や、時計史のマイルストーンとなった名作時計約60点、情報通信研究機構(NICT)や時間学研究所による「時間」の最先端研究などが紹介される。昔の「時」を学び、現在の「時」を理解することで、未来の「時」に思いをはせるきっかけとなるだろう。


100年の間で私たち日本人の時間感覚はいかに変わったのか?

100年前に「時の記念日」が制定されたのは、人々に「秒」単位までの意識を促すため

 現在の時刻制度である「定時法」は、1872年(明治5年)の改暦により日本へ導入されたものであり、これによって暮らしに時・分・秒の時間感覚がもたらされた。しかし時代が大正へと移っても、庶民への認識はせいぜい「分」までで、なかなか「秒」までは浸透しない。鉄道や通信のインフラが加速度的に整う時代において、人々の秒単位までの意識付けが喫緊の課題であった。そのため秒の時間をより身近に感じてもらおうと開催されたのが「時展覧会」である。企画したのは文部省で、生活改善同盟会(会長/伊藤博邦、役員/渋沢栄一、棚橋源太郎ら)がこれを支援した。場所は国立科学博物館の前身である東京教育博物館であり、今からちょうど100年前の1920年(大正9年)5月16日から7月4日にかけて行われた。
 約22万人もの人々がこの展覧会へ訪れた盛況ぶりを受けて、同年6月10日に制定されたのが「時の記念日」である。なお、6月10日の日が選ばれたのは、『日本書紀』に「671年6月10日、天智天皇が漏刻(水時計)ではかった時間を、鐘や太鼓を鳴らして知らせた」という日本最初の報時の記述があるためだ。(参照/明石市立天文科学館『時の記念日のおはなし』)

時展覧会

「教材集録臨時号 誌上時展覧会」
展覧会終了後、南光社が「教材集録臨時号 誌上時展覧会」という書籍を発行。これにより遠隔地まで展覧会の内容を伝え、より多くの人の関心を引いた。なおこのイラストには時計と千両小判を秤にかける女性が描かれており、「時は金より重い」という趣向を設けている。所蔵:明石市立天文科学館
漏刻祭

「漏刻祭」
天智天皇を祀る滋賀県大津市の近江神宮では毎年6月10日に漏刻祭を行う。神宮付属の近江時計眼鏡宝飾専門学校は、漏刻の掃除や、女子生徒による采女(うねめ)としての奉仕などによって漏刻祭に従事する(写真は2018年のもの。2020年はコロナ対策として参列受付は行わない。内拝殿で神事のみを行い、舞などの奉納も行わない)。

時間意識の高まりとともに進化を遂げた、日本の「時計」製造技術

 明治の改暦以降、セイコーやシチズン時計といった時計メーカーの前身が誕生し、定時法に則った一分一秒まで表示する時計の製造を始める。すでに高度に完成していた西洋時計を研究しながら、当時の製造者たちは「世界に追いつけ」と量産体制を整え、研究者たちは「世界を追い越せ」と品質を追求した。その結果、日本も時計の一大生産国となり、今では世界の時計産業をリードするまでに成長した。
「『時』展覧会2020」で紹介するのは、このめざましい進歩を示すマイルストーンとなった約60の時計だ。次の写真は一例である。

クオーツアストロン

"クォーツレボリューション"を巻き起こし、世界の時計市場に衝撃を与えた世界初の量産型クォーツウォッチ、セイコー「クオーツアストロン」(1969年)
クリストロン・ソーラーセル

今や、日本の時計では当たり前になった光発電搭載機の祖である世界初の太陽電池充電式の腕時計、シチズン「クリストロン・ソーラーセル」(1976年)
G-SHOCK DW-5000C

従来の常識を覆す耐衝撃性能を確保したデジタル時計、カシオ「G-SHOCK DW-5000C」(1983年)

多局受信型アナログ電波修正時計

現在位置の電波を拾って時刻を自動修正する多局受信型の電波時計、シチズン「多局受信型アナログ電波修正時計」(1993年)


「時」を取り巻くさまざまな研究

日本の標準時や原子時計、次世代の光格子時計など

 現代を生きる私たちには、正しい時間を知ることが当たり前のことになっているが、その時間はどんな場所で、どんな仕組みによってもたらされているのだろうか。
 日本の時間は兵庫県明石市を通る東経135度の子午線上での時刻に統一されている。この時間の大本となる「標準時」を日本で維持管理しているのが、東京都小金井にある「情報通信研究機構」(略称‎:‎NICT)だ。水晶の振動数を基準にしたクォーツ時計よりもさらに高精度な時計である、原子の振動数を基準にした「原子時計」の司る時間が、ここから日本中に配信されている。原子時計の精度はなんと100億分の1秒以上。原子時計の発達は、例えばカーナビやスマートフォンなど、今では私たちの身近となった機器の発展にも大きく関係してきた。NICTでは現在、原子時計を腕時計に搭載できるまでの小型化に取り組んでいる。さらに、原子時計の次世代型となる、光を使った時計「光格子時計」の研究も進められている。

 

原子時計(左)と、超小型原子時計の心臓部(右) 所蔵:情報通信研究機構

さまざまな「時」を学ぶ「時間学」

「時間」を人々がどう捉えてきたのかその歴史を辿ろうとすると、古代エジプトやメソポタミアの時代までさかのぼる。かつての天文学者たちの仕事は、太陽や月や星の動きを調べて暦と時間を作ることだった。この時から現代まで、正しい時間を把握するための研究が続けられてきた。時間と天文学は今でも密接な関係にあり、その発展と合わせて宇宙の観測も進歩している。例えば2019年に観測成功したブラックホールの黒い影の画像撮影には、原子時計が活躍した。
 時計で計る時間の他にも、心が感じる時間や生物リズムの時など、時間にはさまざまな姿がある。時間について学ぶ新しい学問に「時間学」があることをご存じだろうか。時間学を中心となって行っている場所に山口大学の時間学研究所があり、ここでは時間というキーワードを軸に生物学・医学・工学・物理学・心理学・哲学・社会学・経済学・文学・文化人類学など多岐にわたる研究が理系・文系の壁を越えて進められている。「『時』展覧会2020」では、時間学の最先端研究について紹介する。


<イベント概要>

日程/2020年6月5日(金)~7月12日(日) ※毎週月曜日と6月22日(月)~26日(金)は害虫駆除のためのくん蒸期間で休館
時間/9:00~17:00
場所/国立科学博物館内の2箇所にて(日本館地下1階 多目的室と、地球館2階 常設展示室内) ※多目的室は常時、入場制限有り
住所/東京都台東区上野公園7-20
入場料/国立科学博物館の常設展示入館料に含まれる(一般・大学生630円、高校生以下および65歳以上無料)
主催/国立科学博物館、明石市立天文科学館、日本時計協会
協力/情報通信研究機構、カシオ計算機、シチズン時計、セイコーウオッチ、セイコーエプソン、セイコークロック、セイコーミュージアム、リズム時計、日本時間学会、山口大学時間学研究所
資料協力/海上保安庁、国立天文台、郵政博物館
※新型コロナウイルス感染症対策として人数制限があり、入館に際してはホームページでの事前来館予約が必要→ https://www.kahaku.go.jp/news/2020/reservation/




「『時』展覧会2020」公式ウェブサイト https://www.kahaku.go.jp/event/2020/05time/


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