蒸し暑い季節こそ、腕時計の快適性が問われる。そんなときに頼りになるのが、金属製ブレスレットだ。装着感は重量や可動性、肌触りなどによって大きく左右され、デザインや機能性と並んで、日常使いの重要な要素となる。設計や加工技術の進化により、その完成度は着実に高まっている。今回は識者に、装着感に優れた注目モデルを厳選してもらった。ブレスレットの快適さは個人差が大きいが、それでも評価の集まる1本には、やはりちゃんとした理由がある。

[クロノス日本版 2025年9月号掲載記事]


装着感で選ぶ金属製ブレスレットの快適モデル

10位 ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・スモールセコンド

22point / 2persons

レベルソ・トリビュート・スモールセコンド

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート・スモールセコンド」
手巻き。18KPGケース。642万4000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

ミラネーゼブレスレットは、任意の位置でクラスプを締められるためジャストフィットが得られる。さらにラグ形状を専用設計に改めたことで、ケースとのベストバランスが図られた。2本の金線を密に編み込み、適度なプレスをかけることで最適な曲がり具合がかなえられ、ヘッドがぶれない剛性と良好なフィット感が両立された。(髙木)

9位 ロレックス/オイスター パーペチュアル デイデイト

22point / 2persons

オイスター パーペチュアル デイデイト 40

ロレックス「オイスター パーペチュアル デイデイト 40」
自動巻き。18KYGケース。648万6700円(税込み)。(問)日本ロレックス Tel.0120-929-570

プレジデントブレスレットの抜群の着用感は、ゴールドの重さも含めて完成するもの。スティールではこの感じにはならないだろう。クラスプパーツのデザインとサイズ感も絶妙。(団長)

8位 IWC/インヂュニア全般

24point / 3persons

インヂュニア・オートマティック 40

IWC「インヂュニア・オートマティック 40」
自動巻き。SSケース。184万8000円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868

「薄くエレガント。ソフトでエルゴノミック」なスポーツウォッチ。ラグからのテーパードがキツすぎず、重心の偏りが少ない。またコマ裏の仕上げが大胆で、角を丸刀で削ぎ取ったような形になっているのが面白い。(団長)

7位 ロンジン/ロンジン レジェンドダイバー

25point / 3persons

ロンジン レジェンドダイバー

ロンジン「ロンジン レジェンドダイバー」
自動巻き。SSケース。54万1200円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350

ロンジンの人気ダイバーズに登場した新作に装備されるこのブレスレットは、1960 年代に大流行したライスブレスレットを思わせる、ちょいレトロな雰囲気が最高。ダイバーズというとラバーが主流だがタウンユースなら、これもアリだね。(名畑)

6位 ルイ・ヴィトン/タンブール

36point / 3persons

タンブール オトマティック スティール シルバー

ルイ・ヴィトン「タンブール オトマティック スティール シルバー」
自動巻き。SSケース。305万8000円(税込み)。(問)ルイ・ヴィトン クライアントサービス Tel.0120-00-1854

可動域が狭く、やや癖のある固いブレスレットではあるが、コマ調整がドンピシャで合った際には、これ以上ない着用感を体験できるはず。ラグの高さに一工夫あることもポイント。着けたとき、ケースバックが手首に沈むようになっている。(団長)

5位 パテック フィリップ/Cubitus

38point / 2persons

Cubitus 7128/1

パテック フィリップ「Cubitus 7128/1」
自動巻き。18KWGケース。1213万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109

ノーチラスが代表する“うねうね系”ブレスレットを今に引き継ぐコレクション。45mm、40mmサイズとも重さのバランスが良く、腕への接触面が広いため装着感は秀逸だ。適度な重みがありつつも、不快でない味付けは老舗ならではか。(広田)

4位 ロレックス/オイスターブレスレット採用モデル

38point / 3persons

オイスター パーペチュアル 36

ロレックス「オイスター パーペチュアル 36」
自動巻き。オイスタースチールケース。93万2800円(税込み)。(問)日本ロレックス Tel.0120-929-570

36mmの「ロレックス オイスター パーペチュアル」を9年間愛用中。現在は主に馬術用として使用。ケースサイド、裏蓋、ラグ、そしてクラスプの設計が巧みなので、コマひとつひとつが大きいデザインながらも、着用感は抜群。( 団長)

3位 ブルガリ/オクト フィニッシモ全般

46point / 3persons

オクト フィニッシモ

ブルガリ「オクト フィニッシモ」
自動巻き。SSケース。211万2000円(税込み)。(問)ブルガリ・ジャパン Tel.0120-030-142

薄さと審美性、そして実用性を高度に兼ね備えた傑作。ブレスレットには過剰なほどのテーパーがついているが、時計全体が軽いため、まったく問題なし。ブレスレットにビルトインしたバックルも、いっそう優れた装着感をもたらす。この腕時計に微調整バックルは不要だ。(広田)

2位 オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク全般

48point / 3persons

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」
自動巻き。SSケース。価格要問い合わせ。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000

細部の仕上げも極上です。(篠田)

ジェラルド・ジェンタが手掛けた1972年当時のデザインを今日まで受け継いでいるが、その間、ディテールは繰り返し見直されてきた。現行コレクションのブレスレット関連でいえば、ラグの角度が修正されたことで腕なじみが向上した。全体をテーパードさせているのは初代と同じであり、美観としなやかさが両立する。(髙木)

1位 パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF

54point / 3persons

トンダ PF オートマティック ストーンブルー

パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF オートマティック ストーンブルー」
自動巻き。SS×Ptケース。345万4000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com

実際の装着感は秀逸。ケースと連続する複雑なフォルムながら、薄くてピッチ幅が小さいブレスレットは、仕上げも丁寧で快適そのもの。(菅原)

幅広で薄い設計のブレスレットが、手首をつかむような感覚。ケースとブレスレットコマの厚みのバランスがすごい。エルゴノミックデザインを非常に自然な形で体現した名作。(団長)


選考委員による選定モデルの詳細

菅原 茂(71歳) 時計ジャーナリスト
「理想はストレスフリー!」

近年はよく考えられたデザインも増えた。「装着感」とのお題なので、実際に触った、着けたことがあるものから選び、忖度なしの実感で評価。

  1. ブルガリ/オクト フィニッシモコレクション SSモデル全般
  2. パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF オートマティック ストーンブルー
  3. チューダー/ペラゴス ウルトラ
  4. ブランパン/フィフティ ファゾムス バチスカーフ(チタンモデル)
  5. ブライトリング/クロノマット オートマチック GMT40
  6. ロンジン/ロンジン レジェンドダイバー
  7. タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル20
  8. ブレゲ/タイプ XX クロノグラフ Ref. 2067RK/Y9/9WU
  9. IWC/インヂュニア・オートマティック 35
  10. セイコー/キングセイコー VANAC

篠田哲生(50) ウォッチディレクター
「ブレスレットの本懐は、機能性か? デザインか?」

金属ブレスレットは、思いのほかブランドの個性が出る。仕事柄、腕時計を試着することは多く、フィット感や肌あたりは千差万別。感触が合わず購入を見送ったことも、ストラップに替えたこともある。となると、手元にあるのは自然と「快適モデル」となる。所有してはいないが、腕時計のデザインと見事に融合した良質な快適ブレスレットも加えた。

  1. パテック フィリップ/ゴールデン・エリプス
  2. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク 全般
  3. パテック フィリップ/ノーチラス全般
  4. ブルガリ/オクト フィニッシモ 全般
  5. ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・スモールセコンド
  6. IWC/インヂュニア・オートマティック40
  7. ピアジェ/ピアジェ ポロ デイト
  8. ロレックス/オイスター パーペチュアル デイデイト
  9. ウブロ/ビッグ・バン インテグレーテッド
  10. ブライトリング/クロノマット B01

ウォッチ情熱応援団 団長
「実際は長く使ってみないと分からない……」

重量バランスとブレスレット裏面の形状、そして裏側の仕上げが大きく影響する世界。それらを腕時計全体のデザインの中で、どう落とし込むかが見どころです。ただし、人の腕の形はさまざま。自分に合う腕時計は人それぞれですし、腕時計を買うたびにその感覚はアップデートされていく。結局は、買って使ってを繰り返すしかないのかな。

  1. ジラール・ぺルゴ/ロレアート全般
  2. パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF
  3. ロレックス/オイスター パーペチュアル デイデイト
  4. ロレックス/オイスター パーペチュアル
  5. カルティエ/パンテール ドゥ カルティエ(LMサイズ)
  6. IWC/インヂュニア全般
  7. ウブロ/ビッグ・バン インテグレーテッド チタニウム
  8. ブライトリング/スーパーオーシャン オートマチック 42
  9. ロンジン/ロンジン レジェンドダイバー
  10. ルイ・ヴィトン/タンブール

髙木教雄(62歳) ライター
「心地よさと美を伴う10作」

装着感は、ブレスレットとケースとのバランスで決まる。ブレスレット単体で見れば、ケースが揺らぐようなガタがなく、各リンクの動きが滑らからで、かつクラスプに長さ調整機能が備わっていれば言うことなし。となると、ラグスポ系がセレクトの中心となるが、ミラネーゼやミルマイユのようなドレス系も捨てがたい。美観も評価基準とし、10作を選んだ。

  1. ルイ・ヴィトン/タンブール
  2. パテック フィリップ/Cubitus
  3. ロレックス/オイスターブレスレット採用モデル
  4. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク 全般
  5. A.ランゲ&ゾーネ/オデュッセウス
  6. ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート・スモールセコンド
  7. チューダー/“T-fit” クイックアジャストクラスプ採用モデル
  8. シャネル/J12 全般
  9. グランドセイコー/エボリューション9 コレクション全般
  10. ブランパン/ミルマイユブレスレット採用モデル全般

名畑政治(65歳) 時計ライター
「もっともっと工夫が欲しい!」

改めてメタルブレスレット装備モデルをチェックしたが、思ったほどバリエーションが豊富ではないな、という印象を受けた。もう少し、各社が工夫をして多彩なブレスレットを作っていただけるとうれしいのですが。例によって、すべて同列、順位なし。

  • H.モーザー/ストリームライナー・センター セコンド マトリックス グリーン
  • エベル/スポーツクラシック レディ Ref.1216387A
  • ロレックス/オイスター パーペチュアル デイトジャスト 36( ジュビリーブレスレットモデル)
  • ノモス グラスヒュッテ/タンジェント スポーツ ネオマティック 42 デイト
  • オメガ/シーマスター ダイバー 300M
  • ロンジン/ロンジン レジェンドダイバー
  • ブルガリ/オクト ローマ全般
  • シチズン/ザ・シチズン Ref.AQ6021-51E
  • ブランパン/ヴィルレ ウルトラスリム
  • グランドセイコー/エレガンスコレクション SBGK017

広田雅将(51歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「煎じ詰めると、装着感とは好みの問題である」

腕時計の着け心地を決める条件は無数にある。ただし腕時計の本体ケースとブレスレットの重量バランスが良く、加えて全体が軽ければ、着け心地は悪くなりようがない。バックルに微調整機能があればなおさらだ。装着感こそ、個々人の好みが最も強く出る要素だ。

  1. パテック フィリップ/Cubitus
  2. パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF
  3. オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク エクストラシン
  4. ルイ・ヴィトン/タンブール
  5. ブルガリ/オクト フィニッシモ全般
  6. クレドール/ロコモティブ
  7. ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラー
  8. グランドセイコー/エボリューション9 コレクション Sスプリングドライブ U.F.A. LGB003
  9. ブライトリング/プロフェッショナル エアロスペース エヴォ
  10. IWC/パイロット・ウォッチ・マーク XX


ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点…… 10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位無しの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。


“ブレスレット付きドレスウォッチ”の代表作は、パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」

FEATURES

オーデマ ピゲ 進化を続ける「ロイヤル オーク」コレクション

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「オクト フィニッシモ」をキャンバスにブルガリが描く〝自由な〟薄型時計

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