【84点】オメガ / シーマスター アクアテラ GMT

FEATUREスペックテスト
2013.02.03

オメガ独自の模様彫りで装飾されたマニュファクチュールムーブメントは、優れた内部機構について多くを語らなくても、美観を備えた強い個性を主張する

旅行において回り道が必ずしも息抜きとはならないように、複雑機構もいつでも道中の慰みになるとは限らない。むしろ、旅の途中では、時刻や日付を合わせるのに長い間、リュウズを回したくはないだろう。こうした声に応え、可能な限りシンプルな操作性を実現するために、シーマスター アクアテラ GMTには扱いやすいリュウズが装備されている。それぞれの設定ポジションは、ねじ込み式リュウズを緩めて解除すると簡単に見つけることができる。リュウズを1段引き出したポジションでは、時針を1時間刻みで進めたり戻したりして合わせることができ、分針を回して時針を合わせるという、面倒な手間はいらない。国際派のユーザーは、リュウズを2段引き出したポジションでセカンドタイムゾーン(ホームタイム)を設定することができる。赤いアロー型のポイントを持つGMT針は分針と連動しており、分針を動かせばGMT針も一緒に動く。正確に時刻を合わせられるようにストップセコンド機能が搭載されており、このポジションでは秒針が止まるようになっている。時刻合わせの利便性とは対照的に、6時位置に配された日付の調整は、1時間刻みでジャンプする時針を使わないと行うことができないので、少し手間がかかる。

旅先での出来事は、一刻も早く家族や友人に電話で伝えたい。とは言え、眠っている相手を叩き起こすことは避けたいものだ。そのためにも、正確な時刻を素早く把握することは必須である。スポーティーでエレガントなシーマスター アクアテラ GMTでは、ひと目で時刻を読み取ることができ、ぬきんでた美観と良質な加工だけではないことが証明されている。ステンレススティール製のインデックスと針は、さまざまな仕上げが組み合わされているにもかかわらず、高い視認性を発揮している。こうした仕上げを持つインデックスや針の場合、繰り返し施されたポリッシュ仕上げによって表面が強く反射し、かえって見づらくなるという問題が発生することがあるが、オメガは上側をサテン仕上げにすることでこの問題を解決している。つまり、複数の面に異なる手法で仕上げを施すことで、良好な視認性が確保されているのだ。さらに、針のフォルムもそれぞれ異なり、インデックスと同様に白い蓄光塗料が塗布されていることから、黒文字盤とのコントラストがより一層、強化されており、GMT針には、ほかの針と区別しやすいようにアロー型の赤いポイントが付けられている。目的地に到着した時刻がすでに日没後であっても、シーマスター アクアテラ GMTなら、強く発光する表示要素によって正確な時刻を知らせてくれるのだ。

これだけ素晴らしい特徴を備えているにもかかわらず、分針がミニッツスケールまで届いていないのは残念な点である。よくよく観察してみると、サイズの小さなアクアテラのベーシックモデルの分針をモディファイせずにそのまま転用していることが分かる。また、6時位置に配された背景の黒い小さな日付窓は、文字盤上のほかの表示要素とは異なり、すぐに認識することができない。