MEMBERS SALON

ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーII(1/1) 2012年03月号(No.39)

ROLEX OYSTER PERPETUAL EXPLORER II

エクスプローラーIIは、サブマリーナーやGMTマスターに比べてどことなく控えめな印象だが、長年学術調査に貢献してきた歴史を持つ。昨年、誕生から40年を迎え、最新鋭の装備ですがすがしく生まれ変わった。

イェンス・コッホ: 文 Text by Jens Koch
ニック・シェルツェル: 写真 Photographs by Nik Schölzel
市川章子: 翻訳 Translation by Akiko Ichikawa

point
・最高水準の仕上げ加工
・自社キャリバーを搭載
・セカンドタイムゾーン機能の使い勝手が良い

point
・価格設定が高め
・日付表示が見えづらい

いざ未踏の世界へ

クスプローラーIIは、1971年に探検用時計として発表されたモデルだ。日付表示のほか、24時間表示の針が備わり、ベゼルに刻まれた一昼夜の時間を示す仕様になっている。初代エクスプローラーは日付表示とセカンドタイムゾーンなしでまとめられ、53年以来ロレックスのデザインアイコンとして今なお製造され続けているが、そのバージョンアップモデルとして、プロフェッショナル仕様に開発されたのがエクスプローラーIIなのだ。

追加装備された24時間表示針は、とりわけ探検隊にはありがたいものに違いない。一日中、昼とも夜とも知れぬ洞窟の暗がりの中で作業する研究者たちや、夏場は日の沈むことのない北極探検隊の人々にはさぞかし助けになることだろう。このモデルは実際に数多くの北極・南極探検の際に使用され、火山や洞窟の研究者たちにも伴われていった。それは当時の報道写真にも見ることができる。
ファーストモデルのRef.1655は、ストレートなパラレルハンドの時分針、正方形と長方形を組み合わせたインデックス、そして、オレンジ色の24時間表示針で構成され、いかにも70年代らしい容貌がたまらなく魅力的だ。

もっとも、このモデルは発売から何年かはベストセラーというまでには至っていない。83年にはマイナーチェンジされ、Ref.16550となり、24時間表示針の色はオレンジから赤(先端の三角矢印部分はメタルカラー)に変わってスリムになった。インデックスは正方形と長方形から今やロレックスに典型的な大型ドットになり、時針の形状も変更されている。
つまり、そもそもエクスプローラーIIは、おなじみのGMTマスターやサブマリーナーの顔を引き継いでいるというわけだ。そして、このRef.16550から、ブラックダイアルだけでなくホワイトダイアルも採用されるようになった。搭載のキャリバー3085は、同年発表のGMTマスターII用に開発されたのだが、時針を単独で操作できるようになっている。そのため、24時間表示針をホームタイム、時針をローカルタイムとしてセカンドタイムゾーンを設定でき、利便性が向上したというわけだ。

spec130205ro67b.jpg

搭載される自社製キャリバー3187。裏蓋はトランスパレント仕様ではないが、各パーツの装飾研磨やエッジの処理が美しい。リニューアルに際し、独自に開発したパラクロム・ヘアスプリングとパラフレックス ショック・アブソーバーが採用された。

復活を遂げたオレンジ針

さて、人生において、必要に迫られていないものほど、なんとしても欲しくなるのは世の常である。いわんやロレックスにおいてをや。エクスプローラーIIのファーストモデルは、その24時間表示針のカラー故にコレクターから“オレンジハンド"と呼ばれ、オークションでは必ず高値で落札されている。そのオレンジハンドが、昨年のエクスプローラーII誕生40周年を祝してのリニューアルに合わせてリバイバルしたのはうれしい限りだ。ケース直径は40mmから42mmになり、そのため針やインデックスもほかのロレックスモデルより若干大きくなった。これは視認性の向上にも一役買っている。

だが、今回のテストウォッチであるホワイトダイアルのモデルに関しては、視認性を長所と評価するにはいささか弱いだろう。ホワイトゴールドの針とインデックスの黒塗りの縁取りが、ホワイトダイアルとのコントラストを高めていることを考慮してもだ。ブラックダイアルのほうがいかんせん時刻を読み取りやすい。また、暗がりでほの青く光る夜光インデックスのクロマライトが役立ち、夜間から明け方まで持続性があるのが心強い。
ちなみに、日付表示のサイクロップレンズだが、これで日付が劇的に見やすくなるということはあまりない。これはどちらかと言うと、リュウズ上の王冠マーク同様、ロレックスのアイコン的なものととらえるべきだろう。しかし、我々編集部はそれを単純にありがたがるわけにはいかない。というのも、垂直に真上から日付表示を見た時は数字が大きく見やすいのだが、少し斜めから見ると、凸レンズ故に表示が隠れてしまうからだ。細かいことを言うようではあるが、やはりさっと見て分かりやすい表示に越したことはない。また、サイクロップレンズの存在故にフラットな風防が使われているのだが、レンズがなければドーム風防を採用するという選択肢もあるはずだ。ドーム風防もエクスプローラーIIには似合うに違いない。

とは言うものの、一歩引いて見ると、放射状サテンの装飾研磨で仕上げられ、傾斜したスティールベゼルに、ホワイトダイアルとオレンジの針の組み合わせは、颯爽としてよく考えられている。モダンな印象を与え、今やいかにもエクスプローラーIIという認識に落ち着いたデザインの妙味は、何十年もの間変わらぬアイコンであるサブマリーナーやGMTマスターIIの潮流を受けたものと言えるだろう。
ロレックスの完璧さは、仕上げ加工によく表れている。ケースの鏡面研磨とサテン研磨のそつのない仕上がりや、コマとコマの間がきちんと詰まったブレスレット、非の打ち所のない出来上がりの針、丁寧なプリントのダイアル。それらのすべてはルーペを通しての厳しい評価に堪える水準であり、この時計の価値の高さを雄弁に物語っている。直径42mmのケースサイズは、リニューアル前のものより大きくなったばかりでなく、サブマリーナーとGMTマスターIIをも超える大きさである。その存在感は腕に巻くとはっきりと分かる。

ケースはロレックス独自のトゥインロックリュウズで防水性は100m。過酷な環境下にある探検隊の装備品として、さらに気密性の高いトリプロックリュウズがなぜ採用されていないのかは、今のところ謎である。こうした不思議なことは同社ではこのモデルに限らない。いずれにせよ、トリプロックリュウズだからと言って、高防水仕様とは必ずしも言えないようだ。2005年以来、GMTマスターIIにはトリプロックリュウズが導入されているが、なぜか防水性は100mである。

spec130205ro67c.jpg

仕上がりの水準の高さでは定評のあるロレックス。ベゼルに施された放射状サテンと鏡面の装飾研磨の組み合わせも、完璧なまでに美しい。

操作性にも工夫あり

さて、そのリュウズだが、リュウズガードがあるにしては開閉しやすい。自動巻きながら、第1ポジションでは手巻き同様に主ゼンマイの巻き上げが可能。第2ポジションでは時針のみの針合わせができる。時針だけを1時間ずつ進めたり戻したりと、素早く合わせられるので便利である。第2ポジションで時針を操作すると、外国にいる時などは24時間表示針をホームタイム(自国の時刻)としておき、時針を現在地のローカルタイムに設定できる。ローカルタイムが午前零時を指すと同時に、日付表示も瞬時に切り替わる。つまり、日付の修正も前後に動かせる時針だけを回せば、望む日付に早く到達できるというわけだ。第3ポジションは時分針の針合わせ用。もちろん、分針を1周させれば、時針も24時間表示針も1時間進む仕組みである。

ブレスレットはケースと揃うように、上面はサテン、側面は鏡面に磨き込まれている。このブレスレットは本当に使い勝手が良い。クラスプは作りが頑丈に出来ている上、フラップ式のオイスターロック付きなので一層安心感がある。さらに役立つのはエクステンション式のイージーリンクが付いている点だ。ロレックスが特許を取得したイージーリンクは、エクステンション部分の開閉によって約5mm長さを微調整できるようになっている。メタルブレスレットはラバーや革のストラップに比べて肌当たりはより快適であるが、それでも夏場や運動量が多い場合はやはり汗ばむので肌がベタついてしまう。そんな時、ちょっとブレスレットを緩めるだけで不快さは軽減できるというわけだ。

その上、構造上のコンセプトとして、エクステンションを利用して長めにセットしても、外側からはみ出して見えたりしないように作られているのは心憎いばかりだ。
ケースの裏側はフラットになっているため座りがよい。そして何よりも、ブレスレットのコマがふっくらとカーブを描いた形状でしなやかに動くので、腕の毛が挟まっていらつくことがまずない。これが装着性の良さに一役買っている。また、クラスプの近くはブレスレットの横幅が若干狭くなっていることにも注目したい。この部分は太すぎると、さっと手を動かした時に手首に食い込み、下手をすると皮膚を傷付けてしまいかねないからだ。素材はケースと同じく904Lスティールを使用。この金属はステンレススティールの中でもとりわけ耐食性に優れるのが特徴である。

spec130205ro67d.jpg

クラスプも丁寧な作りで堅牢そのもの。ロレックスクラウンが添えられた小粋なロックフラップは、とても重宝する。

中身が肝心

丹念な加工は外装だけではない。ケースの中で息づくムーブメントも最新の水準に引き上げられている。自社製キャリバー3187にはロレックスが開発した耐震軸受けのパラフレックス ショック・アブソーバーが採用されている。パラフレックス ショック・アブソーバーは天真が衝撃を受けて揺れ動いた時の安定性が高く、あるべき位置に正確に戻すことができる機構だ。さらに、新しいエクスプローラーIIには、ブルーパラクロム・ヘアスプリングが搭載されている。パラクロムはニオブとジルコニウムの合金だが、このヘアスプリングは完璧なまでの耐磁性を持つだけでなく、従来のものより形状の安定性が断然優れ、形崩れを起こしにくい。エンドカーブはロレックスではおなじみの巻き上げ式。芸術的なまでに曲げられた渦巻きが脈打つように動く。緩急針のないフリースプラング方式も見慣れた機構のひとつだ。テンワに取り付けられたマイクロステラナットは、専用の特製工具で調整される。テンプを押さえているのはがっしりした両持ちブリッジだ。片持ちのテンプ受けと比較すると、このパーツも精度の向上に貢献している。このブリッジのおかげでテンプは上部にゆとりを持って固定されているので、姿勢差誤差が極小で収まるようになっているのだ。

エクスプローラーIIに限らず、ロレックスのプロフェッショナルモデルではケースの裏蓋をトランスパレントにしないのがお決まりだが、ムーブメントは目に触れないにもかかわらず美しく仕上げられている。ローターとローターブリッジには放射状サテン、スティールパーツには筋目、地板にはペルラージュの装飾研磨が施され、ブリッジなどの縁は面取りされて磨き込まれている。さらに、ネジ穴やルビーまでエッジは丁寧に角を落とされ、磨かれているのだ。
さて、ロレックスといえば高精度が決まり文句だが、今回のモデルはどうだろうか? 着用テストではほとんどパーフェクトな結果が出た。日差はプラス1・5秒から2秒の間に収まっていたのだ。ロレックスではクロノメーター基準に則り5姿勢で調整が行われているだけに、歩度測定機にかけたデータは良好であった。だが、「3時右」のポジションでの数値だけは、ほかの姿勢とは明らかな違いが出ている。このモデルはC.O.S.C.認定クロノメーターだが、最大姿勢差は8秒であった。しかし、平均日差はプラス1・5秒となり、総合すると、とても優秀だと言っていいだろう。

ところで、今回のリニューアルに伴って、価格改定が行われた。リニューアル前は56万7000円であったが、新作では69万3000円。これは独自のパラクロム・ヘアスプリングやパラフレックス ショック・アブソーバーを搭載するなど、技術の改良が反映された結果なのだろう。ロレックスは生産体制を近代化し、研磨作業は工業用ロボットを導入している。一品一品が一点物のような職人技的ハンドエングレービングなどは望むべくもないが、逆に最新システムではケースや針、ブレスレット、そして、ムーブメントも出来にむらのないパーフェクトな仕上がりになる。こういった生産体制は年産数が多いからこそ可能なのだが、他人と同じ時計はしたくないというユーザーには、いかに魅力的な時計を作っていてもロレックスはスルーの対象となるかもしれない。

しかし、新型エクスプローラーIIは、ホワイトダイアルというだけで例外的なのだ。ホワイトダイアルは“いかにもロレックスです"という雰囲気を感じさせない。同社のほかのモデルのように、飛行機に乗ったら隣の席の人と同じだったということは、そうそうないと思われる。加えて、購入を申し出ても長く待たされ、ウェイティングリストから自分の名前がしばらく消えないということも少ないだろう。ロレックスのクラシックなモデル群の中にあって、異色な存在と言える。エクスプローラーIIが感性に合うユーザーは、気に入ったら悩むことなくさっと選ぶに違いない。セカンドタイムゾーン機能をまったく利用したことがなくてもだ。そして、日常的に使ってみて分かるだろう。北極や南極に行かなくても、普段の生活の中で思いのほか役に立ってくれることを。それに気付いた時には、今までとは違う世界に足を踏み入れているのかもしれない。

技術仕様
ロレックス/オイスター パーペチュアル エクスプローラーII

製造者: ロレックス
Ref.: 216570
機能: 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、24時間表示、セカンドタイムゾーン、日付表示
ムーブメント: 自社製キャリバー3187、自動巻き、2万8800振動/時、31石、パラフレックス ショック・アブソーバー、巻き上げ式パラクロム・ヘアスプリング、マイクロステラナット付きグリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約48時間、C.O.S.C.認定クロノメーター
ケース: 904Lスティール製、ねじ込み式裏蓋、フラットサファイアクリスタル風防(サイクロップレンズ付き)、リュウズガード、ねじ込み式トゥインロックリュウズ、100m防水
ストラップとバックル: 904Lスティール製イージーリンク付きオイスターロックブレスレット
サイズ: 直径42mm、厚さ12.3mm、重量152g
バリエーション:
価格: 69万3000円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

文字盤上 +1
文字盤下 +3
3時上 +1
3時下 +2
3時左 +5
3時右 -3
最大姿勢差: 8
平均日差: +1.5
平均振り角:
水平姿勢 293°
垂直姿勢 261°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 9pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 12pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 18pt.
精度安定性(10pt.) 8pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 88pt.
前の記事

ブライトリング/クロノマット GMT

次の記事

オーデマ ピゲ/ロイヤル オーク オフショア ダイバー

おすすめ記事

pick up MODEL

正規時計販売店

正規時計販売店

高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!

時計ランキング

時計ランキング

その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。

スペックテスト

スペックテスト

クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!

基礎からの時計用語辞典

基礎からの時計用語辞典

時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。

PAGE TOP