【78点】カール F. ブヘラ/マネロ フライバック

FEATUREスペックテスト
2019.07.27

機能性に優れたムーブメント

マネロ フライバック

ムーブメントは定評のある汎用機を大幅にモディファイしたオリジナルのもの。コラムホイールを使用し、フライバックモジュールを積んで機能性を高めている。

 マネロ フライバックはステンレススティールバージョンが88万円。ローズゴールドケースで文字盤が以前のものは236万円。いずれのバージョンも気軽に購入できる金額とは言えないものの、作り込みの良さは徹底している。そしてこのモデルの品質の高さのポイントは、モダンかつ機能性の高いムーブメントにもあるのだ。キャリバーCFB1970は定評のあるETA7750の代替機、セリタSW500をベースに、ムーブメント製造メーカーであるラ・ジュー・ペレ製のフライバックモジュールを積んでいる。そのため、クロノグラフでの計測を終えると瞬時にゼロリセットでき、すぐに再び計測をスタートできる。

 ベースムーブメントのSW500のクロノグラフ制御には製造原価を抑えられるカム式が採用されていたが、対してキャリバーCFB1970では青焼きのコラムホイールが使われている。カム式が打ち抜きされた平面パーツを採用しているのに対し、トラッドなコラムホイール式は立体的なパーツを使うため、作り上げる手の掛かり方が違うのは言うまでもない。

 自動巻き機構のブリッジはカールF.ブヘラのための特製仕上げで、見える箇所にはすべて装飾研磨が入っている。同じ設計のムーブメントでもランクはいくつかあるが、このモデルには〝エラボレ級〞のものが採用されている。テンワは金メッキを施した真鍮製で、3姿勢で調整済みだ。これが〝トップ級〞となるとテンワは温度変化に強いグリュシデュール製で、調整は5姿勢になる。マネロ フライバックもこちらの装備がより望ましく思える。もっとも、テストモデルは明らかにしっかりと調整されていたことが分かった。歩度測定器に掛けると、良好な結果が出たのだ。クロノグラフを作動させない状態では最大姿勢差はプラス5秒、平均日差はプラス4.5秒。クロノグラフが作動した状態では最大姿勢差はプラス4秒だった。一方、2週間にわたる着用テストでは、日差はプラス5〜8秒に至り、日を追うごとに進みが加速する傾向にあった。

優秀であっても弱点はあり

マネロ フライバック

1960~70年代のブヘラ(当時)によく見られた配色を用いてレトロなイメージを醸し出す。また、文字盤には目の細かいサンレイ仕上げが入れられていることが分かる。近年のカール F. ブヘラが文字盤に力を入れていることを象徴する出来栄えだ。

 マネロ フライバックは美麗かつ細やかに仕上がっていて、取り扱いも簡単で着用感も心地よい。それでも厳しくチェックすると、弱点を見つけてしまうものだ。それは何かと言うと、視認性だ。時針と分針が黒い文字盤の上で意外に目立たずおとなしい。手を動かして角度を付け、針に光を当てるとようやく主張するような感じなのだ。クロノグラフ針の赤い差し色も、やや暗めなのが惜しい。さらにドーム型風防とボンベ文字盤、そのどちらの縁も曲面になっているため、通常の時刻の読み取り時には影響ないが、クロノグラフ秒針が示す円周の目盛りを読み取る際は慎重さが必要だ。

 それらに比べると、サブダイアルと日付はコントラストがはっきりしているので分かりやすい。アラビア数字のフォントが全体に調和していて見やすいのも好ましい。とりわけサブダイアルの針が絶妙な長さであることが、視認性にとって明暗を分けるところでもあろう。

 厳格に言えば、視認性についての細かい点は使用感を左右するかもしれないが、実際のところはデザインと品質の高さがもたらす気分の良さが凌駕している。古き良き時代の雰囲気を最新式装備で堪能できるという愉悦には、なかなか抗えるものではないだろう。

Other model

18KRGケースにシャンパンカラーダイアルの組み合わせ。テストモデルが1970年代風のレトロ感を持ち合わせているのに対し、こちらのヴィンテージ感は50年代に通じる。

ステンレススティールケースにブルーグレーのダイアルを持ったモデル。アリゲーターストラップも白に近いグレーのため、全体的に爽やかなイメージをまとう。

18KRGケースを使用したモデル。見た目こそフォーマルに近い印象を与えるが、アリゲーターストラップには厚い芯地が入れられているため、装着感が高まり、カジュアルにも使用できる。