【時計オタク向け】現代クロノグラフの進化を、歴史的ムーブメントとともに理解する

FEATURE本誌記事
2024.05.17

今やさまざまな時計ブランドから展開されている機械式クロノグラフ。しかし、その歴史は機械式時計の中では決して長くはなく、現在のような人気を獲得していくのは1980年代以降だ。本記事では、現代クロノグラフの進化の歴史を、マイルストーンとなったムーブメントとともに振り返る。

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
広田雅将(本誌)取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2020年9月号掲載記事]


現代クロノグラフはいかにして人気ジャンルとなったのか?

 機械式時計の中で、最も人気を集めるジャンルのひとつがストップウォッチを備えたクロノグラフである。しかし、フライバックや12時間積算計といった機構が完成したのは1930年代半ばであり、自動巻きクロノグラフに至っては、その出現を1969年まで待たねばならなかった。

 加えて言うと機械式クロノグラフがこれだけ注目を集めるようになったのは1983年にETAが8年ぶりに7750の再生産を始め、各社が自動巻きクロノグラフを使えるようになって以降だ。機械式時計の中でも、とりわけ歴史の浅いクロノグラフムーブメント。しかし技術の革新は、1980年代以降、このジャンルを最も魅力的なものに変えたのである。


クロノグラフ進化の系譜

 19世紀後半に完成した機械式クロノグラフを普及させたのは、製造技術の革新だった。それは1910年以降、クロノグラフの小型化を促し、腕時計のクロノグラフ化を実現した。30年代になると、製造技術の進化は腕時計クロノグラフの広まりと多機能化をいっそう加速。この時代には、さまざまな傑作ムーブメントが生まれることとなった。しかし、本当の革新が起こるのは69年を待たねばならなかった。セイコーの採用したコンパクトな垂直クラッチは、クロノグラフの在り方を一新したのである。

 普通の時計にストップウォッチを付けたクロノグラフ。そもそもはストップウォッチ用と時計用に別輪列を持つものだったが、19世紀の後期に、今のような形、つまり通常輪列にクラッチを噛ませて、クロノグラフのオン/オフを行うものに進化した。

 もっとも、設計ができても、量産できなければ広まることはない。しかし、この時代のスイスには小規模なサプライヤーが次々と誕生し、クロノグラフの量産に寄与した。とりわけ重要だったのは、ジュウ渓谷にあった小さな歯車を製造するメーカーである。アメリカやイギリスではなく、なぜスイスが機械式クロノグラフの量産に成功したのか。その大きな理由は、歯車の有無であった。

 ジュウ渓谷屈指の大メーカーだったロンジンは、1878年に初のクロノグラフであるキャリバー18.97をリリースした。もっとも、おそらくはレバー類を抜くプレスが充実していなかったことと、精密な歯車を入手しにくかったためだろう、このムーブメントは歯車の少ない、簡易式の垂直クラッチを備えていた。

 しかし、精密なプレスと歯車が普及すると、ロンジンは凝ったレバー類と細かな歯車を持つ、水平クラッチのクロノグラフを数多く作るようになった。91年には、エクセルシオ・パークが初のクロノグラフムーブメントを発表。続いてジュウ渓谷にあるさまざまなメーカーが、クロノグラフを手掛けるようになった。

 精密な歯車とレバーは、やがて製作が難しいとされた小径のクロノグラフの製造を可能にした。1912年に、ロンジンは直径13リーニュの腕時計用クロノグラフムーブメント、キャリバー13.33を発表した。おそらくは、これが世界で初の腕時計専用クロノグラフムーブメントだろう。その設計はかなり先進的で、クロノグラフ機構には、すでにブレーキレバーが備わっていた。筆者の私見を言うと、懐中時計用と腕時計用のクロノグラフを決定的に分ける要素は、サイズ以上にブレーキレバーの有無である。強い衝撃を受けやすい腕時計では、クロノグラフを強固に止めるブレーキレバーは必須だった。

 もっとも、このムーブメントの30分積算計は、極めて複雑なものだった。爪で積算計を送るというメカニズムは、積算計の瞬間送りを可能にした。あくまで推測だが、後のダトグラフの積算機構は、13.33を参考にしたのではないか。ともあれ、職人の賃金が安かった当時でさえ、13.33の製造コストは高くついたようだ。事実、35年の社内資料には「コストが高すぎる」と記されている。

 14年にリリースされたバルジュー22は、ロンジンよりはるかにモダンな設計を持つ、腕時計専用クロノグラフムーブメントの祖であった。30分積算機構は爪ではなく歯車で動くように改められ、レバー類の造形も、プレスで抜きやすい形状を持っていた。このムーブメントは、後に直径を30mmに縮小したバルジュー23に進化し、さまざまなメーカーが用いることになる。その基本設計の良さは、74年まで生産されたことからも明らかだった。

バルジュー22

バルジュー22。初出1914年。生産性の高い曲げの少ないレバー類や、歯車で動く30分積算計など、新しい設計を採用した腕時計専用ムーブメント。なお、写真の個体はブレーキレバーが追加された後年の仕様である。後に直径を30mmに縮小したバルジュー23に進化した。手巻き。直径32.6mm、厚さ6.4mm。1万8000振動/時。

 以降のクロノグラフの進化は、乱暴な言い方をすると、設計以上に、生産技術の進歩が可能にしたものだった。黎明期のクロノグラフがそうであったように、設計ができても、量産化ができなければ意味がない。スイスのメーカーは、プレスの技術を磨き上げることで、クロノグラフの量産化と多機能化を同時に推し進めたのだった。

 大きな変化が訪れたのは、30年代である。33年に、まずはブライトリングがふたつのプッシュボタンで特許を取得した。ボタンが増えると部品が増え、製造コストもかさむ。しかし、この時代、ふたつのプッシュボタンを実現できるほどにクロノグラフメーカーは生産性を高めていたのである。

ユニバーサル281

ユニバーサル281。初出1933年。クロノグラフメーカーのマーテルは、ゼニスとユニバーサルに優れたムーブメントを提供した。280系には複数のサイズが存在しており、これは直径が27.8mmの281である。なお、このムーブメントを122の名称で使用したゼニスは、1960年にマーテルを買収する。手巻き。直径27.8mm、厚さ6.35mm。1万8000振動/時。

 また、この前後に、クロノグラフ専用メーカーのマーテルが、12時間積算計を開発した(異説あり)。興味深いのは、その構造である。水平クラッチとレバー類が占拠する当時のクロノグラフに、12時間積算計を押し込むスペースはない。そこでマーテルは、文字盤側に12時間積算機構を据え、香箱から動力を取るようにした。香箱と積算機構の間には、もちろんクラッチとリセット機構が備わっていた。これもやはり、生産性が高まった時代が可能にした付加機構と言える。

 生産性の向上は、多機能化だけでなく、機械式クロノグラフの量産化をも促した。好例が、37年のランデロン48である。デュボア・デプラが設計と製造を手掛けたこのムーブメントは、プレスで打ち抜いたリセットハンマー一体型の巨大なカムを備えていた。できるだけ部品点数を減らし、切削部品を使わない。結果、各社はこのムーブメントを載せたクロノグラフを、廉価に提供できるようになったのである。その生産数は350万個以上(異説あり)。生産性の向上は、機械式クロノグラフの小型化と多機能化を推し進めただけでなく、その普及を促すこととなった。

ランデロン48

ランデロン48。1937年。機械式クロノグラフを普及させた立役者。製造コストのかかるコラムホイールに代えて、リセットハンマーと一体成形されたカムを持っていた。また、ブレーキレバーも省略されている。あくまで簡易型のクロノグラフだが、スイスの時計業界で広く用いられた。手巻き。直径31mm、厚さ6.3mm、1万8000振動/時。

 30年代に進んだ多機能化の究極が、フライバック機構である。クロノグラフを止めることなく再スタートできるこの機構は、主にパイロットが好んだものだった。おそらく、初めてフライバックを搭載したムーブメントは、36年のロンジンの13ZNだろう。これは42年に、センター同軸積算計を持つ後期型に進化した。後期型の13ZNをもって、近代的なクロノグラフは一通りの完成を見た、と言ってよさそうだ。もっとも、このムーブメントも、後に製造コストの高さが問題となる。

ロンジン13ZN

ロンジン13ZN。発表は1936年。13年に発表された13.33Zの後継機。複雑すぎた積算機構はシンプルなものに改められたほか、フライバック機構が追加された。42年には同軸積算計を持つ後期型になる。傑作中の傑作だが、高コストのため後に30CHに置き換えられた。手巻き。直径29.8mm、厚さ6.05mm。1万8000振動/時。

ロンジン30CH

ロンジン30CH。13ZNの後継機として1947年にリリース。機能は同じながら、生産性を考慮した曲げの少ないレバー類を多用していることが分かる。クロノグラフ中間車をテンプの上に重ねたのは、曲げの少ないレバー類により、他にスペースを捻出できなかったためか。手巻き。直径29.8mm、厚さ6.2mm。1万8000振動/時。

 機構が完成した40年代以降の機械式クロノグラフは、機構を省略せずに、いかに生産性を高めるかが課題となった。40年にリリースされたヴィーナス175が好例だろう。乱暴な言い方が許されるなら、これはバルジューの設計をいっそう〝モダン〞にしたものであり、生産性への配慮は際立っていた。42年のレマニア CHRO27(後のオメガ321)はなおさらである。レバー類を調整する偏心ネジは大きく数を減らし、オメガの資料に従うならば、コラムホイールは切削ではなくプレスで打ち抜かれたものだった。また、後に追加された12時間積算計も、オン/オフ用のクラッチを持たない、極めてシンプルなものだった。もっとも、これはコストを意識したムーブメントではあったが、決して廉価版ではなかった。

UROFA59

UROFA59。1941年に発表されたフライバッククロノグラフの傑作。ムーブメントを拡大することで、無理なくフライバック化に成功している。-3秒~+12秒以内という高精度と-10℃~+40℃の気温下でも使える性能を持っていた。1945年までに約3万個が生産された。手巻き。直径34mm、厚さ5.5mm。1万8000振動/時。

 40年代から60年代の間、スイスの時計業界は黄金期を迎えた。しかし、賃金の高騰は、各メーカーにいっそうの生産性向上を強いることになる。68年に、レマニアは名機321の後継機である、861をリリースした。これはプレスで打ち抜いたカムと、部品点数の少なさに特徴があった。興味深いのはブレーキレバーである。乱暴な動きをするカムながら、このムーブメントはコラムホイールを備えた高級なクロノグラフよろしく、ブレーキレバーを備えていたのである。だが、そのブレーキレバーは金属製ではなく、衝撃を吸収しやすい、プラスティック(デルリン)製だった。

 69年に登場した3つの自動巻きクロノグラフについては、本誌を含め、さまざまな人が記してきたので、軽く述べる程度に留めておく。それぞれユニークな設計を持っていた、ゼニスの「エル・プリメロ」こと3019PHC、ホイヤーやブライトリングなどの開発した「クロノマティック」ことキャリバー11、そしてセイコーの6139。後世に大きな影響を与えたのは、クロノマティックと、それ以上に6139だった。

 クロノマティックは、マイクロローター自動巻きの上に、クロノグラフモジュールを重ねるという設計を持っていた。既存のムーブメントにモジュールを重ねてクロノグラフにするというアイデアは、かつてのモバードが得意としたものである。対してムーブメントを開発したデュボア・デプラは、プレス部品を多用することで生産コストを抑え、クロノグラフの自動巻き化に成功した。モジュールをムーブメントに重ねるという発想は、83年のデュボア・デプラ2000系で開花することになる。

セイコー6139

セイコー6139。世界で初めて発売された量産型自動巻きクロノグラフ(1969年5月)。コンパクトな垂直クラッチと自動巻き機構の組み合わせは、後のクロノグラフの設計を大きく変えた。ただし、4番車をクロノグラフ車にしたため、秒針は省かれている。近代型クロノグラフの祖である。自動巻き。直径27mm、厚さ6.65mm、2万1600振動/時。

 セイコーの6139は、コンパクトな垂直クラッチと、省コストながらも巻き上げ効率の高いマジックレバーを備えた自動巻きクロノグラフであった。このムーブメントは、かつてスイスの時計業界が追求した省コストと省スペースを、最も極端なかたちで実現したものだった。秒針を動かす4番車の上にクラッチを重ねたため、このクロノグラフは秒針を持たなかった。また、垂直クラッチの耐久性も、必ずしも高くはなかった。しかし、その設計は多くの時計メーカーに影響を及ぼすこととなる。74年、オメガは垂直クラッチを採用した自動巻きクロノグラフの1045をリリース。これは同軸積算計に加えて、ユーグ・ブントが73年に特許を取得した、独自の垂直クラッチを備えていた。

 しかし、機械式クロノグラフにとって決定的だったのは、88年のフレデリック・ピゲ1185だろう。この自動巻きクロノグラフは、明らかに6139に範を取った設計を持っていたが、直径は26.2mm、厚さも5.5mmに過ぎなかったのである。90年代以降、さまざまなメーカーが1185の設計に倣った、新時代の自動巻きクロノグラフをリリースするようになる。

フレデリック・ピゲ1185

フレデリック・ピゲ1185。発表は1988年。ETA7750を設計したエドモン・キャプトの手掛けた、当時世界最薄の自動巻きクロノグラフ。1枚の板で構成されたリセットハンマーや耐久性を高めた垂直クラッチなど、その設計は今なお他社の規範である。後にエボーシュとして他社に提供された。自動巻き。直径26.2mm、厚さ5.5mm。2万1600振動/時。

エドモン・キャプト

バルジュー7750(現ETA7750)とフレデリック・ピゲの1185を手掛けたのが、写真のエドモン・キャプトである。機能と生産性を両立させた彼の設計は、時計業界で高く評価されている。1978年にフレデリック・ピゲに転籍して以降、さまざまな傑作を手掛けた。現在はスウォッチ グループで複雑系ムーブメントの開発に携わる。


クロノグラフ年表

1912
・ロンジンが腕時計用クロノグラフムーブメントのCal.13.33Zを発表

1914
・バルジューが腕時計用クロノグラフムーブメントのCal.A22ことCal.GHT(22)を発表。近代的な設計を持つ初の腕時計用

1916
・バルジューがCal.22をダウンサイズしたCal.A23ことCal.VZ(23)を発表。直径が30mmに収まったため、以降、各社が採用するようになった

1923
・ブライトリングが独立してスタート/ストップを行えるワンプッシュボタンを装備した腕時計クロノグラフを発表
・ミネルバが初の腕時計クロノグラフムーブメントのCal.13-20を発表

1931
・ロレックスが全回転ローターを使った片方向巻き上げ式自動巻き機構を発表

1933
・ブライトリングがふたつのプッシュボタンで特許を取得。ユニバーサルは1932年に同様の機構を開発したと主張するが、特許を得たのはブライトリングである
・ヴィーナスが初のクロノグラフムーブメントであるCal.130を発表
・マーテルが12時間積算計を備えたクロノグラフムーブメントのCal.285を発表(1934年説もあり)。おそらく12時間積算計を搭載した初のクロノグラフである

1936
・ロンジンが2プッシュボタンを備えたクロノグラフムーブメントのCal.13ZNを発表。航空パイロットが必要としたフライバック機能が装備された。1942年発表の後期型は同軸積算計に進化
・バルジューが世界最小のクロノグラフムーブメントであるCal.69を発表。クロノグラフ機構の小型化が進んだ1930年代には、12時間積算計やフライバック機構などが搭載されるようになった

1937
・デュボア・デプラがコラムホイール式ではなく、省コストのカム式クロノグラフを開発。ランデロンCal.48の名称で販売される。このムーブメントは1970年までに約350万個が生産されたと言われる。ただし、コラムホイール式のようなブレーキレバーを載せることはできなかった

1938
・バルジューが12時間積算計付きのCal.72 VZHを発表。直径30mmのサイズに12時間積算計の組み合わせは汎用性が高かった。以降、さまざまなメーカーがこのムーブメントを採用するようになった
・モバードがクロノグラフのCal.M90を発表。これはモジュール型クロノグラフの先駆けである

バルジュー72

バルジュー72。発表は1938年(36年とも)。文字盤側に12時間積算計を備えた機械式クロノグラフの傑作である。13リーニュのサイズで横3つ目のトリコンパックスレイアウトを実現していた。ただし、かなり高価だったため、採用するメーカーは限られた。1974年まで製造された。手巻き。直径29.5mm、厚さ6.9mm。1万8000振動/時。

1939
・ハンハルトがクロノグラフムーブメントを開発

1940
・ヴィーナスが近代的な設計を持つCal.175を発表(12時間積算計付きはCal. 178)。バルジューのCal.23やCal.72と並び、多くのメーカーに採用された

1941
・ピアースがクロノグラフの動力伝達方式に垂直クラッチを採用したCal.130を発表。腕時計クロノグラフ初の垂直クラッチ搭載機。ただし、天然ゴムを使用したクラッチは耐久性が高くなかった
・UROFA/UFAGがフライバックを搭載したCal.59を発表。直径34mmというサイズは、ゆとりあるフライバック機構の搭載を可能にした

1942
・ブライトリングが回転計算尺を装備した世界初のクロノグラフ「クロノマット」を発表
・レマニアが直径27mmで12時間積算計を搭載したCal.27 CHRO(後のオメガCal.321)を発表

1944
・ユニバーサルがクロノグラフ機構とトリプルカレンダー、そしてムーンフェイズ機能を備えた「トリコンパックス」を発表。ムーブメントはマーテル製のCal.285

1948
・レマニアがオメガ向けに自動巻きクロノグラフを試作。ムーブメントの厚みが増すために、製品化を断念。設計に携わったアルバート・ピゲは「厚さは2倍になる」とコメントを残した

1952
・ブライトリングが航空用回転計算尺を装備した「ナビタイマー」を発表。ムーブメントはヴィーナスのCal.178

ヴィーナス179

ヴィーナス179。近代的な設計を持つ178を、スプリットセコンドクロノグラフに進化させたムーブメント。地板の大きな175/178は、無理なくスプリットセコンド機構を搭載することができた。生産性が重視された1940年代以降の設計らしく、レバー類の造形はいっそうシンプルになっている。手巻き。直径31mm、厚さ7.2mm。1万8000振動/時。

1957
・オメガが「スピードマスター」を発表。ムーブメントはレマニアが開発したCal.321(27 CHRO C12)。小さなムーブメントをインナーケースで支える構造は、優れた耐衝撃性をもたらした。後に本作はNASAの公式時計となり、人類初の月面着陸に帯同した(69年)

1960
・ゼニスがクロノグラフのムーブメントメーカーであるマーテルを買収。自動巻きクロノグラフの開発を推し進める1964 ・セイコーが「クラウンクロノグラフ」を発表。ムーブメントは諏訪精工舎製のCal.5717
・ホイヤーが「カレラ」を発表

1967
・シチズンがCal.5700を搭載した「レコードマスター」を発表。クロノグラフとの連結機構に簡易的な垂直クラッチを採用

シチズン5700

シチズン5700。初出1967年。シチズン発のクロノグラフは、ピアースに倣った板バネ式の垂直クラッチを持つもの。写真が示す通り、生産性を考慮した、極めて簡潔な設計に特徴がある。そのため、1967年当時の販売価格は8500円と、自動巻きの「クリスタルセブン」よりもはるかに安かった。手巻き。1万8000振動/時。

1968
・オメガがカム式のCal.861を「スピードマスター プロフェッショナル」に採用。これは、ブレーキレバーを持つ世界初のカム式クロノグラフムーブメントである。以降、カム式とコラムホイール式の機構的な違いはなくなった

1969
・1月にゼニスがエル・プリメロことCal.3019PHCを発表。3月にホイヤー・ハミルトン/ブライトリングがマイクロローターによる自動巻きクロノグラフムーブメントCal.11を発表。5月、セイコーが自動巻きクロノグラフムーブメントCal.6139搭載モデルを発売。Cal.6139の搭載したマジックレバーと近代的な垂直クラッチは自動巻きクロノグラフの設計に大きな影響を与えた

1973
・バルジューが後のETA7750である自動巻きクロノグラフムーブメントのCal.7750を発表。廉価な汎用ムーブメントとして多くのメーカーに使われた

1974
・オメガが音叉クォーツクロノグラフの「スピードソニック」を発表。搭載するムーブメントはCal.ESA9210ことオメガCal.1255。クロノグラフ機構は摩擦車式の簡易な垂直クラッチを持つモジュールだった

1978
・レマニアがオメガCal.1045の改良版である自動巻きクロノグラフのCal.5100を発表。前作同様、本格的な垂直クラッチを採用していた

1983
・デュボア・デプラがクロノグラフモジュール2000系を発表。もともとはレマニアの依頼で設計されたLWO283。このムーブメントは、1980年代以降のクロノグラフブームを支えることとなる
・ゼニスがエベルの依頼によりエル・プリメロの再生産を開始

1984
・ブライトリングが「クロノマット」を正式に発表。搭載していたのはETA7750
・エベルがエル・プリメロを搭載した永久カレンダークロノグラフを発表

1988
・フレデリック・ピゲが自動巻きクロノグラフの1185を発表。コンパクトな自動巻き機構と近代的な垂直クラッチを持つこのムーブメントは、自動巻きクロノグラフの在り方を大きく変えた

(年表は『クロノス日本版』編集部の調べによる)


ブライトリングとは? クロノグラフの歴史を産んだ時計メーカー

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時計史に輝く1969年の自動巻きクロノグラフ開発競争

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普通のクロノグラフでは満足できなくなったあなたへ。+αの計測機能を持ったモデル5選

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