流星群への憧憬をダイアルに具現化するオリエントスターの先端技術

2025.07.18

今や国産メーカーにおける「輝ける星」となったオリエントスター。そもそもはオリエントの高級ラインとして始まったこのコレクションは、日本メーカーらしからぬユニークさに、高い品質、そしてエプソンの先端技術を加えることで、唯一無二の存在感を放つようになった。しかも、魅力的な価格という特徴は今までに同じ。今、そのユニークな各モデルを見ていくことにしよう。

奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota (Chronos Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos Japan)


国産メーカーにおける「輝ける星」、オリエントスター

 1951年に誕生したオリエントスター。エプソンによる吸収後、その方向性を大きく変えた。ムーブメントのスケルトン化を得意とし、12時位置のパワーリザーブ表示を特徴としていたオリエント。これだけでも日本メーカーらしからぬところ、オリエントスターはムーンフェイズも押し出すようになった。世界広しといえども、オリエントスターの価格帯で、こうしたユニークなメカニズムを取りそろえたメーカーは類を見ない。

コンテンポラリーコレクション M34 F8 デイト リミテッドエディション RK-BX0007B

コンテンポラリーコレクション M34 F8 デイト リミテッドエディション RK-BX0007B
オリエントスターのフラッグシップといえばムーンフェイズ。あえてそれを封印したのが、新作のM34 F8 デイトだ。代わりに「金属ナノ粒子積層技術」を文字盤に採用した、極めてユニークなダイアル表現を打ち出した。内容を考えると価格も驚異的だ。自動巻き(Cal.F8N64)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。限定80本。40万7000円(税込み)。

 加えて、エプソンの技術とノウハウが、オリエントスターの質を大きく高めた。分かりやすいのは見た目だ。ケースやブレスレットの造形は複雑になり、繊細なヤスリ目や歪みの小さな鏡面処理が多く使われるようになったのである。搭載するムーブメントも別物だ。基本設計を1971年にさかのぼる通称「46系」は、部品の精度と仕上げを一新。パワーリザーブが延びただけでなく、一部のモデルには、軽くて高いパフォーマンスをもたらすシリコン製のガンギ車さえ載るようになったのである。

 さらに近年のオリエントスターは、その技術力を見た目にも用いるようになった。まずはコンテンポラリーコレクションのM34 F8 デイト リミテッドエディション。このモデルに盛り込まれたのは、夜空に降り注ぐペルセウス座の流星群。その様子を再現するため、エプソンは「金属ナノ粒子積層技術」という全く新しい手法を腕時計の文字盤に採用した。ナノメートルサイズの超微細な金属粒子で構成されたインクを文字盤上に吹き付ける技術は、世界的なプリンターメーカーであるエプソンならではだ。

コンテンポラリーコレクション M34 F8 デイト RK-BX0005E

コンテンポラリーコレクション M34 F8 デイト RK-BX0005E
こちらはM34 F8 デイトの文字盤違い。エプソンが得意とするプレスで施された繊細な模様の上に、光学多層膜で鮮やかなグリーンを加えてみせた。光によってさまざまに色を変える文字盤を、あえてベーシックなモデルに合わせたのもオリエントスターらしい。自動巻き(Cal.F8N64)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。36万3000円(税込み)。

 M34 F8 デイトの文字盤も今までにないものだ。文字盤の複雑な型打ち模様は、同じくペルセウス座流星群をイメージしたもの。エプソンのお家芸である繊細なプレスを駆使して作られている。加えて、鮮やかなグリーン文字盤は、光学多層膜という技術で施されたもの。ほとんど透明なナノメートル単位の膜を重ねることで光の加減を調整し、今までにない色を出すことに成功した。現在、この手法を文字盤に使えるメーカーは、世界でも数社程度。オリエントスターの価格帯で採用した例はほかにない。

 技術力でいえば、スポーツコレクションのM42 ダイバー1964 2ndエディションも際立っている。デザインの原型は1964年のカレンダーオートオリエント。同社はまず、オリエントスターらしい高級な外装を与え、最新作では、なんと外装すべてを軽いチタンに改めた。長年、チタンを扱ってきたエプソンらしく、仕上げは今までのステンレススティール製に全く同じ。しかも、価格も18万7000円と驚くほど戦略的だ。

スポーツコレクション M42 ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン RK-AU0701B

スポーツコレクション M42 ダイバー1964 2ndエディション F6 デイト 200m チタン RK-AU0701B
ダイバーズウォッチ作りでも非凡なノウハウを持つエプソン。その技術を盛り込んだのが本作だ。タウンユースでも使えるよう、外装は軽くてアレルギーの起こりにくいチタン製。加えて、表面の硬さを高めるためにコーティングが施されている。自動巻き(Cal.F6N47)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径41mm、厚さ14.3mm)。200mスキューバ潜水用防水。18万7000円(税込み)。

 大ヒット作のクラシックコレクション M45 F8 スケルトン ハンドワインディングも、やはりエプソンの技術力が光るモデルだ。6時位置のスモールセコンド脇から見えるのは青いガンギ車。軽くて耐久性に優れるシリコンを使うだけでなく、表面処理に工夫を凝らすことで、今までにない鮮やかなブルーを得ることに成功した。シリコン部品といえば暗くて沈んだ色が当たり前、という常識を、本作は覆してしまったのである。

クラシックコレクション M45 F8 スケルトン ハンドワインディング RK-AZ0002S

クラシックコレクション M45 F8 スケルトン ハンドワインディング RK-AZ0002S
オリエントスターのアイコンである12時位置のパワーリザーブとスケルトンを合わせたモデル。スケルトンに向かない量産ムーブメントに「ヌケ感」を与えたのはオリエントスターのノウハウだ。またシリコン製のガンギ車には鮮やかなブルーが与えられた。手巻き(Cal.F8B63)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径38.8mm、厚さ10.6mm)。5気圧防水。35万2000円(税込み)。

 そしてお家芸のメカニカルムーンフェイズ搭載モデルも、全く新しい装いを得た。デザインは今までに同じだが、なんと針を含めてほとんどがダークカラーでまとめられた。しかし決して単調に見えないのは、色を細かく調整したため。また、エプソンの得意とする繊細なプレスで星を再現した文字盤は、光の加減で表情をさまざまに変えていく。 日本メーカーらしからぬユニークさに、高い品質を併せ持った今のオリエントスター。信頼できるうえに、個性的な腕時計を探しているユーザーにとっては、うってつけの選択肢となるに違いない。

クラシックコレクション M45 F7 メカニカルムーンフェイズ リミテッドエディション 2024 RK-AY0123N

クラシックコレクション M45 F7 メカニカルムーンフェイズ リミテッドエディション 2024 RK-AY0123N
あえて全面にダークカラーを施したモデル。従来のコレクション以上に踏み込んだ表現は、プレステージショップ限定なればこそ。しかし、文字盤や針、インデックスなどの色調を調整することで、腕時計としての視認性も確保してみせた。個性的な実用時計の大本命。自動巻き(Cal.F7M65)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.8mm)。5気圧防水。34万1000円(税込み)。



オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380


オリエントスター 盤面に降り注ぐ流星「コンテンポラリーコレクション M34 F8 デイト Ref.RK-BX0007B」

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