オリエントのフラッグシップであるオリエントスターが、世界初(※)となるプリント技術を駆使した美麗な新作をリリース。大宇宙を渡るペルセウス流星群をリアルに文字盤へと写す秘策とは一体何か? 光の当たり方や見る角度によって変幻自在な表情を見せるレアダイアルの詳細をお伝えする。

Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
長谷川剛:文
Text by Tsuyoshi Hasegawa
吉田巌:編集
Edited by Iwao Yoshida
[クロノス日本版 2025年7月号掲載記事]
金属ナノ粒子積層技術による深遠なるダイアル表現

コンテンポラリーコレクションにおけるフラッグシップである「M34 F8 デイト」。本作はペルセウス流星群をイメージし、放射状に表現した壮麗な文字盤を持つ80本数量限定モデル。高精度を誇るシリコン製ガンギ車を備えた自社製ムーブメントを搭載。本ワニ皮革替えバンド付き。自動巻き(Cal.F8N64)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。限定80本。40万7000円(税込み)。
公式オンラインストア:https://orientstar-watch.com/pages/m34-f8-date-limited-2025ss
オリエントは今年75周年を迎える我が国の名門ブランドだ。そして、そのフラッグシップであるオリエントスターは「輝ける星」をイメージした高級コレクション。2023年には星雲や星団をテーマとする「Mコレクションズ」をローンチし、大いに注目を集めた。読者の中には24年に打ち出されたペルセウス座の散開星団をモチーフとするブルーダイアルの「M34 F8 デイト」を知る人も多いだろう。そして今季、早くも同モデルの数量限定版となる次作がリリースされた。

文字盤に降り注ぐかのような〝流星ダイアル〞を見どころとする本作は、オリエント時計と統合したセイコーエプソン運営による「信州 時の匠工房」が深く関係する。同工房はプレミアムウォッチの製作に始まり、「マイクロアーティスト工房」や「匠工房」「文字板工房」「ケース・宝飾工房」などを擁する同グループにおける時計作りの一大拠点。本作では約2210個もの流星が神秘的に流れる姿を世界初(※)の「金属ナノ粒子積層技術」を用いて完成させている。これはセイコーエプソンが持つインクジェットプリント技術を応用し、ウイルスよりも細かい金属ナノ粒子を吹き付けて作る、そもそも電子基板製作のために開発されたものだ。従来より微細な基板作りが可能なことに加え、廃棄物を抑えた製造法が世界で高く評価されている。この先進技術を文字盤装飾用に進化させ、本作では今までにない繊細なダイアルデザインを実現させたのである。
流星が発する光の筋は、ほのかな明暗を持つのが特徴。その極めて微細なグラデーションを、分割した版下データを基にナノインクを複数回重ねてプリントすることで、流れる星のごとく奥行き感ある筋模様を描き出している。また、金属インクならではの光沢は、クリア塗装膜を経る光の加減により、巧みに表情を変える。光源の強さや角度により、大輪の打ち上げ花火のごとくくっきり見える場合もあれば、線香花火のごとき可憐な印象を残すにとどまる場合もあるのだ。
文字盤同様ケースも「Mコレクションズ」らしく、M34星団にゆかりの深いペルセウスをイメージしたシャープかつ力強いデザイン。ムーブメントはシリコン製ガンギ車を持つキャリバーF8N64を搭載。60時間以上の持続時間と日差プラス15~マイナス5秒という精度を持つ。

この新作「M34 F8 デイト」は、すべてにおいて趣向と技術を凝らしたオリエントスターを代表する渾身のモデルである。スーツなどのドレススタイルに合わせれば、成熟した品格を主張し、カジュアルスタイルとのマッチングでは華やかさで注目を集めてくれる。実に完成度の高い1本と言えるのだ。
※腕時計の文字盤への加飾において、金属ナノ粒子/金属ナノインクを積層させてプリントする技術として世界初。
オリエントスター公式サイト 特集ページはこちら
https://www.orient-watch.jp/orientstar/contemporary/m34/