燈辻(芝浦)/この世ならぬ美味のクリエイター

2026.06.24

世界各国にホテルを展開するフェアモントが、2025年7月、日本初上陸となる「フェアモント東京」を芝浦に開業。36階に位置する鉄板焼「燈辻」の魅力に迫る。

燈辻厳選黒毛和牛 サーロインステーキ

燈辻厳選黒毛和牛 サーロインステーキ
この日の黒毛和牛は、20~25日間熟成させた滋賀県の近江牛。融点が低いため、溶けるような脂身と旨味を感じる赤身のバランスの良さが特徴だ。添えている塩は、佐藤氏の故郷である千葉県の鵜原で、満月の夜に汲み上げた海水で造られたもの。ニンニクチップは、青森県産「福地ホワイト六片」を使用。昼夜共にコース内での提供(写真の80g)のほか、アラカルトでもオーダー可能(100g・8500円)。ミートキープはアラカルトの価格で300g~。専用のミートロッカーで最大150日間。
外川ゆい:取材・文
Text by Yui Togawa
三田村優:写真
Photograph by Yu Mitamura
[クロノス日本版 2026年5月号掲載記事]


肉にまつわる遊び心と優越感

 鍵を渡され、楠で作られた立派な箱を開けると、黒毛和牛の塊が目の前に現れる。選び抜かれたラインナップの中から、ゲストがお好みの部位をプライベートにリザーブしたものを、5000V、-2℃の専用のミートロッカーで大切に管理して理想の熟成を施したものだ。ボトルキープならぬ“ミートキープ”。それを「燈辻」の料理長・佐藤隆亮氏が目の前の鉄板で焼き上げていく。「ウェットエイジングなので、旨味を高めつつ、フレッシュな和牛香をキープすることができます。お客様にお肉を育てる楽しみをご提案できたらと考えております」。なんと贅沢な食体験だろう。

佐藤隆亮

佐藤隆亮(Ryusuke Sato)
1987年、千葉県生まれ。高校で調理師免許を取得し、ホテルニューオータニに入社。その後「表参道うかい亭」や「銀座おのでら」で鉄板焼きの料理人として研鑽を積み、パリでのレストラン立ち上げを成功に導いた実績も持つ。帰国後、ソムリエ資格を取得。会員制レストランや「IL LUPINO PRIME」などを経て、2025年7月より現職。

 佐藤氏の焼きの技にも目を奪われる。235℃の高温で香ばしい焼き色をつけると、100℃の場所に移して休ませる。塩は最初からあてずに途中で片面のみ、胡椒のまとわせ方にもオリジナリティーを感じる。「鉄板焼きやステーキを食べ慣れた方でも、このクリスピーさとジューシーさのコントラストに驚かれますね」。

 鉄板の上の食材には緻密な職人技で。ゲストとの会話は自然体で。佐藤氏と交わす会話は、よりご馳走感が増し、穏やかで和んだ食事の時間を演出してくれる。その振る舞いは、他のどのジャンルでもない、鉄板焼きの料理人が天職なのだと感じてしまう。「料理人を志したのは8歳の頃。大病を患い、外出が難しく、自宅でよく母の料理を手伝っていました。ゲームや漫画よりも夢中になって。病気は4年で完治。生まれ育ったのが、千葉県の漁師町だったので、幼い頃から魚を捌いたり、アワビを獲って食べたり」と振り返る。幼少期の豊かな経験は燈辻でも存分に生かされ、魚介類のファンも多い。

 食後、隣接する日本家屋を彷彿させるラウンジに移動し、目の前で仕立てるデザートと丹念に焙煎したほうじ茶を、ギターの生演奏とともに一服。もし時間に余裕があれば、最上階の43階へ移動していただきたい。個性際立つバーが出迎えてくれる。そして心地よく酔い、地上に降りたくないなと思ったなら、そのまま宿泊することができるのもホテルならではの極上の余韻。

燈辻(とつじ)

燈辻

わずか6席の特別感あふれるカウンターに座ると、東京湾を望む比類なき眺望が広がる。目の前で繰り広げられる鉄板焼きならではの音や香りとともに、佐藤氏との会話もたっぷりとご堪能いただきたい。

東京都港区芝浦1-1-1 BLUE FRONT
SHIBAURA TOWER S フェアモント東京 36F
Tel.03-4321-1111
日曜・月曜定休
11:30~14:30、17:30~22:00
ランチ1万2500円~、ディナー1万6000円~


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