2026年、G-SHOCKのパイロットウォッチである「グラビティマスター」に、新作「GWR-B3000」が登場した。過酷なコックピット内での使用を想定した本作は、視認性やタフネス、優れた計時精度の確保に向け、外装およびムーブメントに新技術を投入した意欲作である。本記事では、発売に先駆け、本シリーズに属するRef.GWR-B3000A-2AJFの着用レビューをお届けする。

Photographs & Text by Kento Nii
[2026年6月30日公開記事]
マッハに挑む高性能ジェット機から着想を得た“空G”
G-SHOCKの「グラビティマスター」は、陸海空の各分野に特化したプロフェッショナルライン「MASTER OF G」に属するパイロットウォッチである。瞬時の判断が求められるコックピット内での使用が想定されており、ラインナップはいずれも、優れた視認性や操作性に加え、衝撃力・遠心重力・振動といった負荷に耐えうる耐衝撃構造「トリプルGレジスト」を特徴としている。
本コレクションより2026年にリリースされたのが、今回レビューを行う「GWR-B3000」シリーズだ。開発コンセプトは“スーパーソニック”。超音速のジェット機が見せる圧倒的なスピード感から着想を得たデザインと、それに見合う卓越した機能性を備えている。

タフソーラー。フル充電時約22カ月駆動(パワーセーブ時)。樹脂+SSケース(縦56.7×横47.3mm、厚さ14.1mm)。20気圧防水。12万6500円(税込み)。
併せて本シリーズで注目したいのが、実に多くの新技術が投入されている点だ。トポロジー(最適化同時解析)を駆使した耐衝撃構造に加え、視認性に長けたダイアル、精度を保つメカニズムを持つ新ムーブメントの搭載等、従来機より内外ともに刷新が図られているのである。他にも、複雑な金属成形を可能とするMIM(メタルインジェクションモールディング、金属射出成形)が活用されるなど、カシオの先進技術を集約させたタフネスウォッチに仕上がっている。
バリエーションは、ダークブルーもしくはブラックを基調とした3モデルが展開される。今回取り上げるのは、ダークブルーモデルの「Ref.GWR-B3000A-2AJF」だ。以下より、その機能性やデザイン、耐衝撃性・視認性の確保に向けた新たなアプローチを確認していこう。
パイロットウォッチの要、視認性を極限まで高める新開発ダイアル
まずは、パイロットウォッチの要である視認性について触れておきたい。パイロットウォッチは幅広い年齢層から支持を集める人気ジャンルであるが、実は全世界共通の性能やデザインの基準が設けられていない。つまり、その設計は各ブランドのさじ加減となるわけだが、それでもほぼ全てのパイロットウォッチに共通するのが、優れた視認性を有していることだ。
本作ではこの視認性の確保に向けて、立体的なインデックスや大ぶりな針に加えて、光拡散技術に基づく新開発のダイアルを持つ。その表面は、特殊形状のテクスチャーが無数に並べられただけでなく、マットな質感に仕上げられており、光をほとんど反射しない構造を実現している。さらに、傷に強く透明度の高いサファイアクリスタルに反射防止コーティングを加えることで、クリアな視界を確保。質感のギャップも相まって、強い日差しの中でも確実な時間の判読が可能となっている。

加えて、ダイアル上のディテールが、立体的な別体パーツによってあしらわれている点にも注目だ。各種インダイアルはもちろんのこと、電波受信機能やアラーム機能に用いられるインターフェースについても、明確にその存在が際立って見える。定価10万円オーバーと、G-SHOCKとしては高価格帯の本作だが、それに見合う完成度の高さをひしひしと感じられる仕上がりである。

最適化された「デュアル中空構造」と立体的な外装仕上げ
さて、個人的な本作のハイライトは、新開発の耐衝撃構造である「デュアル中空構造」だ。これは、グラビティマスターの代名詞たるトリプルGレジストをベースに、トポロジー最適化によって再構築した最新の外装設計である。心臓部であるモジュールをわずか4点のみで支持する“浮遊”構造とすることで、外部からの衝撃をダイレクトに伝えない、極めて理にかなった設計となっている。

なお、ここで言うトポロジー最適化とは、衝撃力・遠心重力・振動という3つの応力を複合的にシミュレートし、パーツ形状を最適化する最新のエンジニアリング手法(コンピュータ解析)を指す。本作では、複数のパーツから成る新構造を構築するためにこの技術が活用され、優れた耐久性と立体的な造形美が両立されているのだ。
そして、この複雑な設計を支えているのが、アウターケースの金属パーツに用いられたMIM成形だ。金属粉と樹脂を混ぜて金型に充填し、成形後に樹脂のみを取り除くプロセスを経ることで、構造の最適化に対応する精密な成形と、タフネスウォッチにふさわしい高密度・高強度を実現しているのである。

表面仕上げは、サテンを基本に、エッジ部やビスの側面にポリッシュが程よく取り入れられており、立体感が際立つ仕上がりだ。ベゼルはダイアルと合わせたダークブルートーンに彩られ、ここにはサーキュラー仕上げが施されている。正面から見た際は光沢のないストイックな印象を受けるが、サイドから見た際にはポリッシュによって質感のメリハリが効いており、本作の立体感のある造形を感じさせるものとなっている。
大ぶりなケースサイズに反する、軽快な着用感と優れた操作性
筆者の手首回りは16.5cmであり、本作の縦56.7mm、横47.3mmという存在感のあるケースはオーバーサイズ気味だ。しかしながら、プロフェッショナルに向けたツールウォッチとなると、このボリューム感もまた、ロマンを感じさせる要素となってくれる。

一方で、重量が102gにまで抑えられていることに加え、太くしなやかなソフトウレタンストラップが手首にしっかりとフィットするため、着用感は見た目の重厚感から想像するよりもはるかに軽快だ。トポロジー最適化によって、構造上の無駄もなるべく削られているのであろう。長時間着用していてもそこまでストレスは感じなかった。
また、実際に操作してみて驚かされたのが、樹脂製プッシャーの扱いやすさだ。一般的なG-SHOCKでは、周囲のガードを盛り上げることでプッシャーを保護しているが、本作はプッシャー自体をケースに埋め込む設計によって、衝撃が直接伝わらないようにしている。実際のところ、正面から見るとほとんどプッシャーの頭が出ておらず、ケースの造形に完全に溶け込んでいる。
それにもかかわらず、本作のプッシャーは、それ自体がとにかく大きく、指を添えるための開口部が大きめに設けられているため、非常に操作が容易であった。ここはぜひ手に取って多くの人に試してみてもらいたいポイントである。
精度を徹底的に守り抜く「TOUGH MVT.2」と、プロフェッショナルな機能群
これまで外装やダイアルを中心に見てきたが、本作では新ムーブメント「TOUGH MVT.2」の搭載もトピックのひとつに挙げられる。このムーブメントは「衝撃検知付き針位置自動補正機能」および「磁場検知機能」が新たに導入されており、過酷な環境下でも徹底して精度が保たれる仕様となっている。
例えば、時計に強い衝撃が加わると即座にこれを検知し、時分秒針の位置を自動補正することで信頼性が確保される。一方、内蔵の磁場検知センサーが外部の磁場を検知した際には、針の動きを一時停止させて基準位置のズレを防止。磁場が消失すると正しい位置へ針を戻し、運針を再開するという極めて高度な制御が行われるという。
もちろん、積極的に強い磁場や衝撃を与えることは推奨されていないため、今回のインプレッションでその真価を試すことはできなかった。しかしながら、衝撃や磁気といった外的要因を自ら検知して補正する機能と、新たな耐衝撃構造の合わせ技は、パイロットにとってなんとも頼もしい仕様となるだろう。
また、本作はパイロットウォッチとしての実用機能も充実している。Bluetooth®通信によって専用アプリ「CASIO WATCHES」と連携することで、正確な時刻情報を取得できるほか、フライトログの記録なども可能だ。加えて、暗所を鮮やかに照らす高輝度なLEDライト(スーパーイルミネーター)や、UTC(協定世界時)ダイレクト呼び出し機能なども備えている。
まとめ
トポロジー最適化による先進のデュアル中空構造に、航空計器さながらの立体的な造形美を取り入れ、新開発ムーブメントで信頼性をも突き詰めた本作。その妥協なきプロ仕様と、ストイックで大ぶりな外観も相まって、ガジェットやツールに男心を強くくすぐられる筆者にとっては非常に魅力的な存在であった。
実は、グラビティマスターをここまでじっくりと触ったのは今回が初めてだったのだが、実機を通してのインプレッションは、通常のG-SHOCKとMASTER OF Gとの設計思想の違いを肌で実感する機会となった。その分、多少なりとも値は張るが、ぜひ一度本作を手に取り、タフネスウォッチG-SHOCKのより深い世界へ足を踏み入れてみてはいかがだろうか。



