タイメックスの2026年新作「キャンパー リング ウォッチ」を実機レビュー。同社の名作「キャンパー」をベースとした本作は、時計の文化を独自の目線で醸成してきたタイメックスらしさにあふれたアイテムだ。
Text & Photographs by Tsubasa Nojima
[2026年7月7日公開記事]
遊び心あふれるタイメックス流のリングウォッチ

近年、密やかに盛り上がりを見せるリングウォッチ。これはその名の通り、指に装着する時計だ。起源は古く、18世紀頃には指輪に小さな時計を組み込んだ女性用の装飾品が存在していたと言われている。もっとも、当時は実用に耐えうる精度を持たず、あくまでもギミックを有した装飾品という位置付けであったようだ。
時代は変わったが、現代のリングウォッチもアクセサリーとしての性質が強い点は変わらない。手元で時刻を知りたいのであれば、大きなダイアルを備えた腕時計の方が視認性に優れ、使い勝手が良いだろう。ではなぜ、今になってリングウォッチが注目されるようになったのだろうか。
恐らくその背景には、腕時計がファッションアイテムあるいは自己表現の手段として認知されてきたことが大きいだろう。一昔前は必需品として多くの人が装着していた腕時計だが、スマートフォンをはじめとする時計機能を備えた電子機器の普及に伴い、人々は自然と代替手段を獲得するに至った。だからこそ、現代では腕時計を装着することそのものに、その人のライフスタイルやポリシーが表れていると言っても過言ではないはずだ。
そして、“どのような腕時計を着けているか?”もまた、そのことを如実に語る。時計店にディスプレイされている腕時計の多彩さは、多様化した人々の好みを受け止めようとする思いの表れだろう。さらに自分好みにカスタマイズしたいというニーズに対応すべく、容易にストラップを交換できる機構を搭載したものも珍しくない。リングウォッチのヒットは、そうした時計への向き合い方の変化がもたらしたものだと、筆者は考えている。
さらに付け加えるならば、正確で小型なクォーツムーブメントや日常生活に耐えうる防水技術などの進化も、これを後押ししていることだろう。リングウォッチが、取り扱いに手間のかかるプロダクトであったならば、ここまで注目を集めなかったに違いない。
そう考えればこそ、「キャンパー」や「アイアンマン」、「ウィークエンダー」など、数々の名作に並んでリングウォッチを発売し、腕時計のファッション文化を牽引してきたタイメックスが、そのリバイバルを決断したことにも合点がいく。すでにいくつかのモデルが発売されているが、2026年新作として発表されたのは、キャンパーをベースとしたアナログタイプだ。
タイメックスの傑作ミリタリーウォッチ、キャンパーがベース
タイメックスはベトナム戦争において、ミル・スペックにのっとって製造されたシンプルな手巻き式ミリタリーウォッチをアメリカ軍へ納入していた。キャンパーは1980年代、そのミリタリーウォッチをベースとした民生用として発売されたモデルである。やがてムーブメントをクォーツ式に変え、バリエーションを拡充しながらタイメックスの代表作として親しまれていった。
そのデザインを受け継ぐ新作の「キャンパー リング ウォッチ」には、24時間表記のアラビア数字インデックスやバトン型の時分針、ドット型のポインターを配した秒針など、小さいながらもミリタリーウォッチならではの意匠が取り入れられている。
ケースは樹脂製だ。オリジナルが樹脂製であったことを考えれば、キャンパーの伝統とも言えるだろう。ベゼルはなく、ぷっくりと膨らんだアクリル風防が装着されている。リュウズやケースバックの素材には金属が採用され、耐久性を確保した設計がなされていることが分かる。

ベルトはステンレススティール製の蛇腹式であり、指の太さに合わせて調整をすることなく使うことができる。気分によって着ける指を変えることや、複数人でシェアすることも可能だ。ベルトはバネ棒によってケースに固定され、ラグ幅10mmに合致するものであれば、市販のものに交換して楽しむこともできる。実際にそうするかどうかはともかく、物理的にはこのリングウォッチを腕時計化することもできるということだ。


バリエーションは3種類
さらに、カラーバリエーションは3種類と、好みに合わせて選べることもうれしい。ひとつはブラックダイアルにブラックのケース、シルバーのブレスレットを組み合わせたモデルだ。ミリタリーウォッチらしいブラックのカラーを基調としたシンプルなカラーリングは、さまざまな服装にも合わせやすいだろう。

オーソドックスなブラックモデル。キャンパーの持つミリタリーな雰囲気を残しつつ、ステンレススティールのブレスレットが爽やかにまとめている。クォーツ。樹脂ケース(直径22mm、厚さ8mm)。30m防水。1万6500円(税込み)。
ふたつ目のモデルは、シルバーダイアルとクリアのケース、シルバーのブレスレットを組み合わせている。モノトーンでやや上品な印象だ。クリアであるものの、内部のムーブメントを見ることはできない。3本のうち、最も控えめなカラーリングという印象だ。

クリアなケースを採用したシルバーダイアルモデル。全体的に明るいトーンで統一されているため、上品な印象だ。クォーツ。樹脂ケース(直径22mm、厚さ8mm)。30m防水。1万6500円(税込み)。
3つ目は、ゴールドカラーのダイアルとブレスレット、シルバーのケースを備えたモデルだ。ダイアルカラーは公式の情報によるとゴールドだが、実物はカッパーに近い。ファッショナブルなカラーリングが魅力だ。

ブルーの針を採用したゴールドダイアルモデル。腕時計では少々派手さを感じるカラーリングであっても、リングウォッチならば程よいアクセントとなる。クォーツ。樹脂ケース(直径22mm、厚さ8mm)。30m防水。1万6500円(税込み)。
3本それぞれで印象が異なり、どれも甲乙つけがたい。ビジネスウォッチであれば、多少は人目を気にした選び方も考慮すべきだろうが、カジュアルに振り切ったリングウォッチとしては、完全にユーザーの好みで選ぶのが良いだろう。3本を買いそろえ、気分によって使い分けるということも可能だ。腕は2本しかないが、手の指は10本ある。迷ったら3本同時に着用するという荒業もできる。
ちなみに、キャンパーを象徴するオリーブカラーは、セレクトショップの別注モデルとして発売されているようだ。見ていると、ついつい集めたくなってしまうコレクション性もまた、本作の魅力なのである。
時計としての実用性も見逃せない
リングウォッチながらも、きちんと時計として機能する点も評価したい。時分針が太く設計されているため、小さなダイアルにも関わらず、アラビア数字インデックスと相まって時刻を読み取りやすい。時刻調整は、普通の腕時計と同じようにリュウズを引き出して行うが、その際のクリック感もはっきりとしたものだ。1段引くと秒針が停止し、時刻を調整することが可能となる。分針にふらつきはなく、狙った時刻に合わせることができる。
防水性は3気圧。なんとケースバックはねじ込み式だ。日常生活の中で水に接することの多い指先だからこそ、しっかりと防水が効いているのは心強い。手を洗う場合や水仕事のときは外しておくのがベターだろう。蛇腹式ブレスレットは軽く引っ張るだけで簡単に着脱できるので、あまり煩わしくはない。


ちなみに、リングウォッチならではの便利な使い方もある。腕時計と組み合わせることで、異なるタイムゾーンを表示させ、デュアルタイムとして使うことができるのだ。GMTウォッチを所有していなくとも、疑似的にその機能を再現することが可能なのである。
さらに、複数のリングウォッチを世界の主要都市に合わせて装着すれば、空港やオフィスビルのエントランスにあるような世界時計を再現することもできる。金融マンや投資家が、世界中の市場の取引時間を確認する際に便利なのではないだろうか。もっとも、あまりにもたくさん装着すると、パソコンのキーボードを打つのも一苦労であるため、お勧めはできない。

ファッション・文化に溶け込む、新たな時計の形
にわかに脚光を浴びているリングウォッチ。それは、時計を身に着けるという楽しみを拡大させてくれるアイテムなのである。かつて、わずか1ドルという破格の懐中時計「ヤンキー」を発売し、庶民に時計文化を根付かせたタイメックスは、その後もミリタリーウォッチやユニークなスポーツウォッチによって、流行を作り出してきた。同社の時計は、決して高級品ではない。しかしだからこそ、生活に根差したアイテムとして親しまれてきたのだろう。
今回発表されたリングウォッチに関しても同様だ。タイメックスらしい自由な発想が表れた本作には、手軽に身に着けられるアクセサリーとしての面と、本格的な時計としての機能が見事に調和している。



