Sushi Hōseki(八重洲)/この世ならぬ美味のクリエイター

2026.07.15

2023年に華やかに開業したブルガリ ホテル 東京内に暖簾を掲げる「Sushi Hōseki」。星の数ほどある鮨屋のなかで、国内外の食通たちはなぜこちらを訪れるのか。

小肌

小肌
小肌は、江戸前の他に佐賀や熊本など九州産を使用することが多い。「天草あたりで揚がる小肌は、捌くとあおさ海苔の香りがするんですよ」と清水氏。産地や脂のりなどの身の状態によって、塩のあて方や酢の入れ方を変えている。酢飯には、2種の赤酢と有機栽培の米酢を使用。コースは、つまみと鮨を織り交ぜ、風味や温度など緩急ある構成で展開する。
外川ゆい:取材・文
Text by Yui Togawa
三田村優:写真
Photographs by Yu Mitamura
[クロノス日本版 2026年7月号掲載記事]


食べ手在りきの心尽くしの一貫

 藍色の暖簾をくぐると、鮨屋らしからぬ天井高7mの空間が広がり、ゲストの高揚感を一層高めてくれる。デニム生地の着物を身にまとい出迎えてくれるのは「Sushi Hōseki」料理長の清水拓郎氏。席に着き、手元に目をやると、魚や野菜などひとつひとつデザインの異なる愛らしい箸置きが並ぶ。「会話のきっかけになれば」という粋な計らいで、ゲストの心を和ます。

清水拓郎

清水拓郎(Takuro Shimizu)
神奈川県生まれ。地元の網元直営の魚料理専門店で約10年間働くなかで鮨職人を志すことを決意。東京のホテルや札幌の三つ星店で研鑽を積む。2023年、ブルガリ ホテル 東京の「SushiHōseki」の料理長に就任。鮨文化を丁寧に伝えるべく、ゲストをもてなす。

 昔ながらのやり方で、カウンターのつけ台に直に置かれる鮨は、女性の口でも食べやすい小ぶりでエレガントなアーチを描いている。店名に冠している宝石にたとえられる美しさもさることながら、口へと運ぶと、鮨種と酢飯が引き立て合いながら儚くほどけることに感銘を受ける。ふわりと空気を含ませるためにこの丸みを帯びた形状にたどり着いたそうだ。

 お米は、会津産の「天のつぶ」の新米を使用する。一般的に鮨には握りやすさから古米を使う。「でも、白米で食べるなら新米の方が美味しいですよね。扱いづらさは技術でカバーすればいいので」と清水氏はさらりと話す。さらにこう続ける。「持久力があるお米で、炊き上がった時のいい状態が長い時間続きます」。そう言いつつも、一度のコース内で2度に分けて炊く手間を惜しまない。作り手在りきではなく、食べ手在りき。「この範囲ならOKではなく、最善の小さなひとつの点を狙う仕事ができるよう常に考えています」。その語り口調からは、食材に対する深い敬愛が伝わってくる。

 さらに「Sushi Hōseki」の居心地のよさも、清水氏の腕によるところが大きい。瞬時にそれぞれの席の状況を把握して会話の量や間も最適に。そして、全体の空気感や調和を生み出す。同時に8名のゲストをもてなす大変さを尋ねると、すかさず「チームのおかげです」と共に働くスタッフたちをたたえ、謙遜するあたりも清水氏の人柄がよく表れている。

 鮨は、他の料理以上に職人の手を近くに感じる。それ故、どのような職人がどのような想いで握っているかが、味の感じ方を大きく左右し、好みも分かれるだろう。一度「Sushi Hōseki」を訪れると「また清水さんの鮨が食べたい」という気持ちが自然と湧き上がってくる。

Sushi Hōseki

Sushi Hōseki

無垢の檜のカウンターは、わずか8席がゆったりとL字型に並ぶ贅沢な空間。つけ台は少し傾斜をつけることで、握りが美しく見えるようデザインされている。窓の外には風情漂う枯山水を設置。

東京都中央区八重洲2-2-1 ブルガリ ホテル 東京 40F
Tel.03-6262-6624
火曜・水曜定休 12:00~14:00(木曜を除く)、18:00~20:00、20:30~22:30
ランチ2万8000円、ディナー3万8000円(共にサービス料込み)


Sushi Hōseki×黒龍酒造による一夜限りの饗宴。鮨と日本酒の最高峰が生むペアリングが心に響く

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