俳優、ミュージシャン、ラジオDJとマルチな才能を発揮し、「相棒」などの人気ドラマにも出演する六角精児。乗り鉄、撮り鉄に続く鉄道趣味として自ら牽引してきたのが“呑み鉄”だ。冠番組「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」でその魅力を発信し続ける六角が、自身の率いるバンドの公式インスタグラムで見せたのは、ジンの本格ダイバーズウォッチ。8月19日から始まる新作放送を前に、愛用の1本に迫る。

Text by Yukaco Numamoto
編集:土田貴史
Edited by Takashi Tsuchida
[2026年8月9日掲載記事]
飲酒と鉄道を掛け算した、新たな旅のスタイル“呑み鉄”
呑み鉄とは、一般的には酒を飲みながら列車の旅を楽しむことを指す言葉だろう。しかし六角精児にとっての呑み鉄は、それだけにとどまらない。車中で杯を傾けるのはもちろん、鉄道沿線にある地酒の酒蔵を巡り、訪れた土地の居酒屋で地元の人々と語り合う――そんな旅そのものを“呑み鉄”と呼び、体現しているのが冠番組「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」である。乗り鉄、撮り鉄という言葉がすっかり定着した鉄道趣味の世界に、新たなアプローチとして“呑み鉄”を根付かせた立役者こそ、六角精児その人だ。
番組には旅番組にありがちな決まったルールはなく、六角精児が「行きたい」と思った場所があれば、タクシーやバスも積極的に使って向かう。自動車の運転免許を持たない六角が、普段の鉄道旅と変わらない感覚で旅を続けられるようにという工夫だ。番組がスタートしたのは2015年。当初はBSプレミアムで放送され、2023年末の編成再編を経て、現在はNHK BS・BSプレミアム4Kで放送を重ねている。
音楽へのこだわりも、この番組の大きな魅力のひとつだ。とりわけ列車が走行するシーンで流れる楽曲は、すべて六角自身が選んでいる。カントリーやフォーク、ブルース系のギターサウンドが中心で、番組初期には自身が率いる六角精児バンドの楽曲が採用されるのも定番だった。単なるBGMという扱いではなく、鉄道旅を盛り上げる“もうひとつの主役”として音楽が据えられているのだ。メジャー、インディーズを問わずシーンに合った選曲がなされているため、音楽好きが見ても楽しめる番組に仕上がっている。
2025年には放送10周年を記念し、初回放送から2024年12月放送分までの全37コース(38回)の旅のルートや、どの場面でどの曲が使われたかを詳細にまとめたオフィシャルブック『六角精児の呑み鉄本線・日本旅』(KADOKAWA刊)も発売された。訪れた酒蔵や飲食店の名前が紹介されており、ファンにとってはうれしい1冊となっている。
個性派俳優として、幅広い作品で存在感を放つ六角精児
「相棒」「不機嫌な果実」「民王」といった人気作から、大河ドラマ「おんな城主 直虎」「武蔵 MUSASHI」、NHK連続テレビ小説「純情きらり」「カーネーション」「まれ」まで、幅広い作品に出演してきた六角精児。だが、もともと芝居が好きだったわけではない。中学生の頃に演劇部の舞台を観て「あれをやる人の気持ちがわからない」と感じたほどで、芝居への関心は薄かったという。
転機が訪れたのは進学先の神奈川県立厚木高等学校。当時は全員が部活動に入部しなければならず、たまたま誘われるまま演劇部に入部したのがきっかけだった。すぐに辞めるつもりだったというが、キャスティングされた舞台が演劇コンクールの全国大会まで進出。結局、そのまま演劇部に在籍し続けることになった。
「観客の前に立ってドキドキするのは嫌いではなかった」とも振り返っているが、日本大学芸術学部を受験した際には、丸太を赤ちゃんに見立てて抱く実技テストで丸太を落としてしまい不合格に。浪人生活を経て学習院大学経済学部経済学科に合格するも、劇団活動に時間を取られて進級できず、6年在籍したのち中退している。
学生時代からギャンブルにのめり込み、家庭教師のアルバイト代だけでは足りず、学生ローンで借金を重ねる日々が続いた。ギャンブル依存は借金を完済した40代まで続き、その額は1000万円ほどにのぼったという。学生時代や劇団員時代には家賃が払えなくなるほど熱中していたといい、その波乱に満ちた日々を半自伝的エッセイ『三角でもなく 四角でもなく 六角精児 役者とギャンブル』で赤裸々に綴っている。作中では「仕事を断ってまでギャンブルをしなかったこと」(筑摩書房刊)が唯一の救いだったと振り返るほどだが、泥沼の借金生活も、4度の結婚、そして3度の離婚も、すべて人生の血肉、役者としての肥やしとして前向きに捉える――そんな独自の人生哲学が、六角精児という人物の奥行きを物語っている。
バンドの公式インスタグラムで発見した愛用の1本
俳優業だけでなく、ミュージシャンとしての顔も持つ六角精児。自身がボーカルとギターを務める「六角精児バンド」は、佐藤克彦(ギター、コーラス)、髙橋悟朗(ベース、コーラス)を加えた編成で、「呑み鉄本線・日本旅」の劇伴にも通じるカントリー、フォーク、ブルース調のサウンドを持ち味とする。『石ころ人生』『そのまま生きる』『ともだちのうた』とアルバムを重ねながら、全国各地でのライブツアーも精力的に行っているのだ。
そんな六角精児バンドの公式インスタグラムの投稿を追っていたところ、六角が着用しているのを発見したのが、ジン「U200.W(EZM8)」だった。直径37mmとコンパクトなケースながら、2000mという驚異的な防水性能を誇るプロフェッショナル仕様のダイバーズウォッチである。
「U200.W(EZM8)」はクリアな白のダイアルとシリコンストラップが、爽やかな印象を与えるモデルだ。ケースにはドイツの最新鋭潜水艦Uボートと同じUボートスチールを採用し、特殊結合方式による逆回転防止ベゼルとともに、セラミックスと同じ1200ビッカース、あるいはそれ以上の硬さとなるテギメント加工とブラックハードコーティングを施している。

自動巻き(Cal.ETA2824-2)。25石。2万8800振動/時。Uボート・スチールケース(直径37mm、厚さ14.5mm)。200気圧防水。生産終了。
注目すべきは、ジンが誇る「Arドライテクノロジー」を搭載している点だ。これは腕時計内部の湿気を抑え、部品の傷みや精度低下を防ぐための特別な除湿機構。なかでも中核を担うのが「ドライカプセル」で、特殊乾燥剤がケース内の水蒸気を吸収し、湿気を取り除く。吸収した水分量が増すにつれて、淡いライトブルーからネイビーブルーへと色を変えていく仕組みだ。さらに、潤滑オイルの劣化が引き起こす放電腐食を防ぐため、ケース内には希ガス(プロテクトガス)を充填し、静電気や不安定なガスを含む空気をできる限り排除している。充填後は、外部から拡散してくる水分のみをドライカプセルが吸収する構造だ。文字盤3時位置に記された「Ar」の刻印は、この機構が搭載されている証である。
「呑み鉄本線・日本旅」新作は8月19日スタート。旅のお供にも期待
六角精児が愛用する「U200.W(EZM8)」は、すでに生産を終了しているモデルだ。しかし、8月19日から3週連続で放映される「呑み鉄本線・日本旅」の最新作でも、その姿を確認することができるだろう(初回がBSプレミアム4K、数日後にNHK BSで再放送)。福井県のハピラインふくい、石川県のIRいしかわ鉄道、富山県のあいの風とやま鉄道――北陸の鉄路を巡る今回の旅でも、六角の左腕には変わらずこのジンが輝いているはずだ。
生産終了後もなお着用し続けているという事実こそ、六角にとってこの1本がお気に入りである何よりの証拠だろう。北陸路をゆく呑み鉄の旅と、そこで選ばれるBGM、そして相棒の腕元に光るジン。3週にわたる新作放送を、じっくりと楽しみに待ちたい。



