2000年に創立し、翌2001年に初のコレクションをリリースしたジェラルド・チャールズ。時計デザインの名匠ジェラルド・チャールズ・ジェンタが遺した傑作を進化させ続けるこのブランドは、2022年にスケルトンモデル「マエストロ 8.0 スケルトン」を発表し、ジェンタの名作に新たな息吹を吹き込んだ。このモデルを発展させた新作「マスターリンク パーペチュアルカレンダー」を含め、ジェラルド・チャールズ流オープンワークデザインの魅力を探る。

2022年に発表されたブランド初のスケルトンモデル。“天球図”をテーマにブリッジをスケルトナイズし、薄型化を実現した、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエとの共同開発による自動巻きムーブメントCal.GCA5482を搭載。その厚さは、わずか2.6mm。自動巻き(Cal.GCA5482)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(縦39×横41mm、厚さ8.35mm)。100m防水。1300万2000円(税込み)。
Photographs by Eiichi Okuyama, Yu Mitamura
田中克幸:文
Text by Katsuyuki Tanaka
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2026年11月号掲載記事]
独創のケースとオープンワークとの優美な響き合い
1970年代のクォーツクライシスで、時計産業にとって唯一、怪我の功名的に開かれた道がある。時計デザインの自由化だ。クォーツによって精度が横並びになった時計で、他社と差をつける手段が個性的なデザインの創出だった。そこにひとりの天才デザイナーが出現する。ジェラルド・チャールズ・ジェンタである。老舗時計会社からの依頼で世に現れた彼の独創的なデザインは瞬く間に広がり、そのデザインコードは1970年代の時計を象徴するアイコンとなった。
このジェンタが、晩年の自由な創作活動を展開するために興したのがジェラルド・チャールズだ。ジェンタは2011年に亡くなるまで創作活動を続けたが、以後もブランドは、その独創的なデザインを軸にしながらモダンに進化させたラグジュアリーピースを発表し続けている。これを明示するのが、アイコニックなケースにオープンワークのデザインを組み合わせたふたつのモデルである。
まずは2022年発表の「マエストロ 8.0 スケルトン」。そのデザインに込められたのは「ブランドの個性を維持しながら、薄型でエレガントかつ機能性を維持し、ムーブメント自体を彫刻作品へと昇華させる」こと。スケルトナイズされたムーブメントは“天球図(セレスシャル・スカイチャート)”というテーマのもと、暗褐色のブリッジが星の連なりとなり、そこからはゴールドのパーツが金の星となって浮かび上がる構図だ。このスケルトンデザインを具現化すべく、デザインチームはヴォーシェ社の協力を得て、ジェラルド・チャールズ専用となる自動巻きキャリバーGCA5482を開発。ブランド初のオープンワークデザインをかなえるのみならず、前述の薄型、エレガンス、機能性の維持といった厳格な基準を満たすことにも成功した。


もうひとつが2026年発表の新作で、完全自社開発の「マスターリンク パーペチュアルカレンダー」である。特徴は、6時位置下方に弧を描く複雑な形状のケースにムーンフェイズ付きカレンダーが無駄のないかたちで収まったデザイン。3時と9時位置のふたつのカウンターに比べて、6時位置のカウンターが大きめに作られているのは、ムーンフェイズの視認性に加えてカウンターの円弧がケースのそれと見事に調和しているからだろう。ムーブメントは完全自社設計・製造の自動巻きキャリバーGCA11000。ケース形状に合わせたアシンメトリック設計のムーブメントは、本作への並々ならぬ創造性と技術力が発揮された結果である。

伝統的な技法を駆使しつつも、モダナイズされたブリッジ形状と、3種類の仕上げを施したケースとブレスレット、快適な装着感をもたらす独自の設計指標エルゴンテック®によって近未来的なデザインを実現。自動巻き(Cal.GCA11000)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。グレード5チタンケース(縦40×横40mm、厚さ10mm)。100m防水。1540万円(税込み)。
そして、このムーブメントをあらわにするオープンワークダイアルのバージョンは、古典とモダンをミックスしたような設計。その真骨頂はペルラージュ、直線および曲線のジュネーブ・ストライプ、アングラージュといった伝統的な仕上げ技法を駆使しながら、ブリッジやカム、レバーを意識的に露出したムーブメントデザインに見て取れる。一方でケースやブレスレットは、グレード5のチタンケースに、ダークブラスト®、ブラッシュとポリッシュの3種類の仕上げが施され、こうした要素を総合すると、かなりモダンフィニッシングが与えられた時計であることが分かる。
独創のケースと、それに調和するムーブメント、そこからモダンスケルトンを創出したジェラルド・チャールズのオープンワークモデル。そこにはジェンタの芸術性を現代的に昇華させた、創造と技術の粋が込められている。





