セイコー? シチズン? 日本の時計ブランドは2026年も楽しい! 新作からオススメを5本選ぶ

FEATURE その他
2026.10.22

今回は、日本ブランドの2026年新作時計の中から、時計ライターの佐藤しんいちがおすすめの5本を紹介する。審美性と実用性が高次元で両立されたグランドセイコーの新しいダイバーズウォッチや、基本に忠実で実直なカシオ「EDIFICE オートマチック」、そしてオリエントスターが誕生75周年に満を持して送り出した「オリエントスター スケルトン」など、今年も日本ブランドからは、豊富に名作がラインナップされている。

日本ブランドの2026年新作時計から佐藤しんいちおすすめの5本

佐藤しんいち:文
Text by Shin-ichi Sato
[2025年10月22日公開記事]


高い完成度を誇る日本ブランドの2026年新作時計5本を紹介

 時計ライターの佐藤しんいちが、日本ブランドの2026年新作時計の中から注目すべき5本を紹介しよう。最初にグランドセイコーから、超高精度なスプリングドライブU.F.A.搭載の新作ダイバーズウォッチを取り上げる。また、セイコー プレザージュでは有田焼き文字盤の技術に磨きをかけた新作を、ザ・シチズンでは土佐和紙に伝統的な染めの技法を組み合わせたモデルという、文字盤表現の新たな挑戦にフォーカスする。さらにカシオからは、2025年の登場以来、完成度の高さが評判を呼んでいるメカニカルモデルの新作をピックアップ。最後に紹介するのは、オリエントスターが誕生75周年、満を持して送り出したスケルトンモデルの大作だ。

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A. Ushio 300 Diver」

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A. Ushio 300 Diver」

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A. Ushio 300 Diver」Ref.SLGB023/Ref.SLGB025
自動巻きスプリングドライブ(Cal.9RB1)。33石。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径40.8mm、厚さ12.9mm)。300m防水。各165万円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617

 最初に取り上げるのはグランドセイコーだ。本年は「エボリューション9 コレクション」の主要9モデルがアップグレードされ、そちらも取り上げたいところだが、今回は完全な新作となる「エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A. Ushio 300 Diver(以下、Ushio 300 Diver)」をピックアップする。

 Ushio 300 Diverは、年差±20秒を誇る、超高精度なスプリングドライブU.F.A.のCal.9RB1搭載モデルだ。このムーブメントを直径40.8mm、厚さ12.9mmというダイバーズウォッチとしては標準的ながらやや大ぶりなケースに搭載している。もっともケースはブライトチタン製であるため、軽快だ。防水性能は300mを実現している。このようにUshio 300 Diverは、デイリーユースから本格的なダイビングまで対応するハイスペックダイバーズウォッチと言えるだろう。

 そんなUshio 300 Diverについて、搭載ムーブメントから紹介してゆこう。Cal.9RB1や本作のモデル名に冠される“U.F.A.”とは、超高精度(Ultra Fine Accuracy)を意味し、1969年に発売された高精度モデルに付けられた“V.F.A.(Very Fine Adjusted)”にちなんだもので、グランドセイコーにとって特別な意味を持つネーミングである。精度を高めるため、Cal.9RB1には温度補正機能を追加したスプリングドライブの制御ICとエイジング済みかつ選定品のクォーツが採用され、そこに緩急スイッチが搭載されている。システム全体の精度を底上げしつつ、それを維持しやすい、極めて高い完成度が魅力のムーブメントだ。

 文字盤は日本列島を取り巻く海流をテーマとし、波や海流を表現する型打ち模様に、中央から外周へ暗くなるグラデーションを組み合わせている。ブルーのRef.SLGB023は光が差し込む広大な海を、グリーンのRef.SLGB025は、澄んだ浅瀬の透明感から着想を得たものとなる。文字盤とセラミックス製ベゼルはマットな仕立てで、彩度を抑えたブルーもしくはグリーンの色調と相まってシックな印象となっている。ブライトチタン特有のわずかにダークな表情も、本作のシックさを生み出すポイントとなっていそうだ。

グランドセイコー Evolution 9 Collection

Photograph by Shin-ichi Sato
筆者がRef.SLGB023をインプレッションした際に撮影したリストショット。ブライトチタン製であるため、着用感は軽快だ。
参考記事:https://www.webchronos.net/features/163460/

 ブレスレットには、長さ調整機能付きの新開発のバックルが組み合わされる。ブレスレットを持ち上げてロックを解除する調整機構を持ちながら、調整機構のないバックルと遜色のない、コンパクトで薄い仕立てが特徴だ。

 グランドセイコーらしいハイレベルな外装仕上げに加え、U.F.A.の超高精度さを備え、軽量かつコンパクト、そしてブレスレットの長さ調整まで搭載する本作は、審美性と実用性を兼ね備えるダイバーズウォッチとして、2026年、要注目の1本である。

セイコー プレザージュ「クラシックシリーズ クラフツマンシップ 有田焼ダイヤル 限定モデル」Ref.HCC007J

セイコー プレザージュ「クラシックシリーズ クラフツマンシップ 有田焼ダイヤル 限定モデル」

セイコー プレザージュ「クラシックシリーズ クラフツマンシップ 有田焼ダイヤル 限定モデル」Ref.HCC007J
自動巻き(Cal.6R51)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39.6mm、厚さ12.8mm)。日常生活用防水。世界限定1500本(うち国内400本)。24万2000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012

 続いて取り上げるのは、セイコーが長年にわたって取り組んできた有田焼き文字盤の魅力をさらに引き出したセイコー プレザージュ「クラシックシリーズ クラフツマンシップ 有田焼ダイヤル 限定モデル」Ref.HCC007Jである。本作は、セイコー創業145周年記念モデルとして企画され、有田焼き文字盤に“セイコー・ブルー”に着想を得た瑠璃釉(るりゆう)をプレザージュとして初めて採用している点がトピックスだ。

 文字盤は中央部が一段低く、放射状の凹凸を持つ構造で、そこに重なる釉薬によってブルーの濃淡が生み出されている。中央部と外周部の境界には白い縁が浮かび上がり、色調の変化とともに奥行きを感じさせる仕上がりだ。

セイコー プレザージュ クラシックシリーズ

Photograph by Shin-ichi Sato
グランドセイコーのUshio 300 Diver同様、筆者の撮り下ろしカット。文字盤が有田焼きらしい質感を示していることが分かる。
参考記事:https://www.webchronos.net/features/167795/

 本作を手に取ってみると、釉薬の濃淡による表情から“焼き物らしさ”を存分に楽しむことができるのが驚きだ。セイコー・ブルーの深みがある瑠璃色でありながら、文字盤の凸部分では有田焼きならではの白い磁肌が透けて見えるからであろう。このような、セイコー・ブルーらしさと、奥行き感のある表情を両立するためには、釉薬の色調と塗り厚さ、型模様の深さという3つの要素が絶妙に噛み合わなければならない。その難易度は、セイコーが“かつてない挑戦”と表現するほどのもので、有田の老舗「しん窯」の協力があっても簡単なものではなかった。

 このような困難の末に完成した、セイコー創業145周年記念モデルとなる本作の文字盤には、セイコーの「常に時代の一歩先を行く」精神が注ぎ込まれていると言えよう。

ザ・シチズン「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ 藍染和紙文字板限定モデル」Ref.AQ4090-08A

ザ・シチズン「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ 藍染和紙文字板限定モデル」

ザ・シチズン「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ 藍染和紙文字板限定モデル」Ref.AQ4090-08A
光発電クォーツ(Cal.A060)。フル充電時約1.5年駆動(パワーセーブ時)。スーパーチタニウム™ケース(直径40.0mm、厚さ12.2mm)。10気圧防水。世界限定200本。44万円(税込み)。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807

 3本目として、ザ・シチズンを取り上げよう。ザ・シチズンでは、和紙を用いた新たな文字盤表現にチャレンジした新作が毎シーズン、リリースされている。その中でも注目モデルが、「高精度年差±5秒 エコ・ドライブ 藍染和紙文字板限定モデル」Ref.AQ4090-08Aである。本作は、日本の伝統的な藍染めと筒巻き絞り染めによって、和紙文字盤に霞を表現したモデルだ。

 文字盤に用いられるのは、極めて薄い土佐和紙の典具帖紙(てんぐじょうし)である。染色には、藍の葉を乾燥・発酵させた蒅(すくも)を原料とする、日本の伝統技法「天然灰汁発酵建て」を採用する。蒅に木灰汁などを加え、微生物の働きによって藍の色素を染色できる状態へと変える技法だ。この微生物の働きは、気温や染液のアルカリ性の強さによって変化し、染まり具合にも影響する。そのため、日々の状態を見極め、染色に適した環境を保つ管理が欠かせない。

 この染液を用いて和紙に霞の模様を生み出すのが、主に布の染色に用いられてきた筒巻き絞り染めである。和紙を筒に巻き付け、細かな皺を寄せながら一方向へ手繰り寄せ、絞りと染色を繰り返すことで模様を作り出す。力を加える工程を伴うため、布よりも繊細な和紙を傷めずに加工するには、職人の高度な技術が求められる。また、薄さと丈夫さを兼ね備える典具帖紙が、本作の表現を可能としている点も見逃せない。

 このような工程を経て完成した文字盤は、藍の背景に白い霞が立つ情景を思わせるデザインとなっている。染工程は手作業によるため、藍が見せる表情は1本ごとに異なっている。本作に興味を持ったなら、ぜひ実機を見たうえで、自分の好みに合った1本を選びたい。

 ケースには、軽量で耐傷性に優れるスーパーチタニウム™を採用する。表面にはデュラテクトプラチナを施しており、明るいシルバーカラーが淡い藍の色調を引き締めている。搭載するのは光発電エコ・ドライブのCal.A060であり、年差±5秒の精度に加え、永久カレンダーや針自動補正機能を備え、実用性も十分だ。

カシオ「EDIFICE オートマチック」Ref.EFK-110D-7AJF

カシオ「EDIFICE オートマチック」

カシオ「EDIFICE オートマチック」Ref.EFK-110D-7AJF
自動巻き。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。4万9500円(税込み)。(問)カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925

 続いては、2025年の登場以来、完成度の高さが評判を呼んでいるカシオ「EDIFICE オートマチック」を取り上げる。ピックアップするRef.EFK-110D-7AJFは、2025年に登場した同社初の機械式腕時計「EFK-100」シリーズのデザインを継承しつつ、直径38mm、厚さ11.8mmとコンパクトに仕立てたモデルである。多様なラインナップを持つカシオの中で、EDIFICE(以下エディフィス)はモータースポーツの世界観を取り入れてきたブランドだ。本作もその流れをくみ、直線的でエッジの効いたケースやブレスレットを有している。一方、電気鋳造による模様を持った文字盤が、エレガンスをも感じさせる。

 本作のステンレススティール製のケースは、面の境界をくっきりと際立たせた造形が特徴である。サテン仕上げとポリッシュ仕上げを使い分けることで、金属の光沢にコントラストを与えている。シルバーカラーの文字盤には浅い凹凸が設けられることで、不規則な模様が与えられている。これは、よりモータースポーツの世界観が落とし込まれた、フォージドカーボンをケースと文字盤に採用したRef.EFK-100XPB-1AJFを思わせるようなデザインで、光の射し込み方によって陰影が変化する表情豊かな仕上がりだ。時分針は、中央にスリットを設けた立体的な形状となっている。細身のインデックスでは、天面にサテン仕上げ、エッジにポリッシュ仕上げを施して、変化を加えている。

カシオ「EDIFICEオートマチック」Ref.EFK-110D-7AJF

Photograph by Shin-ichi Sato
フォージドカーボンから着想を得たテクスチャーの文字盤が特徴のEFK-110シリーズの中でも、シルバーによってエレガントにまとめられた1本。
参考記事:https://www.webchronos.net/features/155407/

 筆者が本作を取り上げたのは、本作を含むエディフィス オートマチックが、基本に忠実な、実直で良質な機械式時計であるためだ。分針と秒針は文字盤外周のスケールまでしっかりと届く長さを持ち、秒スケールは機械式ムーブメントの振動数に合わせて刻まれている。文字盤は表情がありながら視認性に優れ、幅広いシーンで活躍するシンプルなデザインだ。4万9500円(税込み)というプライスタグを見れば、エッジの効いた外装の仕上げ品質の高さに満点をつけたくなる。ぜひ店頭でチェックいただきたい。

オリエントスター「オリエントスター スケルトン」Ref.RK-BR0001N

オリエントスター「オリエントスター スケルトン」

オリエントスター「オリエントスター スケルトン」Ref.RK-BR0001N
手巻き(Cal.F9B82)。20石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40.0mm、厚さ9.5mm)。3気圧防水。世界限定130本(うち国内75本)。110万円(税込み)。2026年12月10日(木)発売予定。(問)オリエントお客様相談室 Tel.042-847-3380

 最後に取り上げるのは、オリエントスターが誕生75周年を記念して送り出す「オリエントスター スケルトン」Ref.RK-BR0001Nである。本作はオリエントスターのフラッグシップモデルに位置付けられており、本作のために開発された手巻きムーブメントCal.F9B82の構造そのものを意匠として取り込んでいる点が特徴だ。

 本作は「時空間」をテーマに、星々の軌道に着想を得たサークルと、日本の美意識である「間」を取り入れてデザインされており、ブランドが35年にわたって培ってきたスケルトンウォッチ製作の技術が集結されている。

 本作の見どころは、星々の軌道を伸びやかに描く造形と、ケースバック側まで見通せる抜け感のあるスケルトン構造だ。このようなデザインを実現するため、ムーブメントを固定する中枠を廃し、ムーブメントの直径を36mmに拡大している。併せて輪列配置を見直し、香箱やテンプ、スモールセコンドを外周側へ移して、よりダイナミックなデザインを実現している。

 そして、部品配置に合わせて地板や受けを肉抜きし、機能とデザインに必要な部分を残すことで、光が通る空間を確保している。その際、実用性も配慮した設計が行われている点にも注目だ。本作の大胆なオープンワークと耐衝撃性を両立させるため、テンプ受けには両持ち構造が採用されている。さらに、受けの裏側を削って軽量化することで、衝撃を受けた際に生じる力を抑えているのだ。

 こうして生まれた立体的な構造を、各部の仕上げによって際立たせている。表側の顔となる裏物押さえには、職人の手作業による細かな筋目模様を施し、その奥の地板には梨地仕上げを採用。質感の違いによって部品の重なりを引き立てるとともに、サークルに沿う溝にはブラックを施し、円の輪郭を強調している。

 これらの仕上げに青のアクセントを添えるのが、シリコン製ガンギ車と青焼きの時分針だ。時分針は本作のために製作した型でスケルトン状に肉抜きされており、細い部分と根元では熱容量が異なる。そのため、均一な発色を得られるよう、職人が一本ずつ加熱を微調整して仕上げている。

 このように本作は、オリエントスターの従来モデルとは大きく異なる設計を持ち、隅々まで手を抜かない仕上げ、実用性の両立など、非常に完成度が高く、オリエントスター誕生75周年に合わせた大きな飛躍が感じられるモデルである。また、これまでのオリエントスターが地上から見上げる星々の情景をテーマとしてきたことに対し、本作ではその視野を大きく広げて宇宙空間を俯瞰するデザインを取り入れたことは、本作の重要なメッセージであると筆者は捉えている。本作は世界限定130本、うち国内75本と、実際に目にする機会は限られそうだ。それでもチャンスがあれば、本作の立体的な構造と、細部に施された仕上げをじっくりと確かめて欲しい。


幻想的なダイアルに目を奪われる。ザ・シチズンの藍染和紙を使った限定モデルを深掘り

FEATURES

カシオ「EDIFICE(エディフィス)」メカモデル最新作が登場。その完成度の高さに時計オタクも舌を巻く!

FEATURES

誕生75周年を迎えたオリエントスターがたどり着いた造形美

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