カシオが2026年新作として発表した、機械式ムーブメントを搭載する「EDIFICE AUTOMATIC(エディフィス オートマティック)」の第2弾。その実機レビューを行う。今回取り上げるのは、フォージドカーボンモデルと、ゴールドIP仕上げのステンレススティールモデルだ。前作同様の完成度の高さであり、その傑出した仕上がりに機械式時計を複数本所有する筆者も舌を巻く。
Text & Photographs by Tsubasa Nojima
[2026年7月23日公開記事]
カシオ機械式の第2弾、カーボンモデルをインプレッション
2025年、多くの時計愛好家を驚かせたカシオ。長年クォーツウォッチのジャンルをリードしてきた同社が、突如として自動巻きムーブメントを搭載した「EDIFICE AUTOMATIC(エディフィス オートマティック)EFK-100/EFK-110」シリーズを発表したのである。フォージドカーボンモデルを筆頭に、5種類のバリエーションが展開され、ケースやダイアルの質感、さらに装着感まで丁寧に作り込まれた完成度の高さが、同社のメカに対する本気度合いを示していた。そして2026年。早くも、その第2弾「エディフィス オートマティック EFK-200」シリーズが披露されたのである。
ラインナップは、フォージドカーボンモデルの「Ref.EFK-200XPB-1AJF」と、フォージドカーボンダイアルにステンレススティールケースを組み合わせた「Ref.EFK-200CD-1AJF」、そして、レトロな雰囲気を漂わせる電鋳仕上げのグラデーションダイアルを備えた「Ref.EFK-200D-2AJF」「Ref.EFK-200D-4AJF」「Ref.EFK-200DG-5AJF」の5種類。ケースサイズはいずれも直径39mm以下に抑えられ、前作のスポーティーでコンパクトな路線を踏襲している。
今回は、フォージドカーボンモデルのRef.EFK-200XPB-1AJFを中心に、ゴールドカラーで統一されたRef.EFK-200DG-5AJFにも触れつつ、実機レビューを行っていきたい。

フォージドカーボンケースを採用した、軽量なスポーツウォッチ。ケースと一体化したデザインのしなやかなレジン製ストラップを装着している。自動巻き(Cal.MIYOTA 8215)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。カーボン×SSケース(直径38.8mm、厚さ11.9mm)。10気圧防水。7万4800円(税込み)。

ゴールドIP仕上げのステンレススティールケースモデル。電鋳とクリア塗装を施した、グラデーションダイアルを組み合わせている。自動巻き(Cal.MIYOTA 8215)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.9mm)。10気圧防水。6万6000円(税込み)。
複雑な模様と視認性を両立させたカーボンダイアル
今回レビューするフォージドカーボンモデルにおいて、最も印象的なのはやはりカーボン製のダイアルだろう。近年、カーボン素材はモータースポーツだけでなく、高級腕時計でも広く用いられるようになった。軽量で強靭という機能面はもちろんだが、繊維が折り重なることで生まれる独特の表情も、注目を集める要素のひとつだ。その製法から、ひとつとして同じ模様にならないという点は、メテオライトやマザー・オブ・パールなどの天然素材にも通じる魅力であり、量産される工業製品でありながら、一点物のような個性を楽しむことが可能である。

さらにその有機的なパターンは、見る角度によって印象を大きく変える。時には真っ黒にも見えるが、光の当たり具合によって模様が浮かび上がる表情の変化を楽しむことができる。しかし、このようなパターンダイアルにはウィークポイントも存在する。パターンそのものが強く主張するため、インデックスや針を含めたトータルバランスに配慮しなければ、時計としての視認性が損なわれてしまう恐れがあるのだ。工芸品に振り切ったモデルであればそれも個性となるかもしれないが、多くの腕時計にとって、その本質は時刻を表示するツールであるはずだ。
しかし、本作にとってその心配は不要だ。基本となる色をブラックで統一し、ケース、ダイアル、ストラップまで一体感を持たせている。その一方で、インデックス、針、日付表示窓のみをローズゴールドカラーとすることでコントラストを生み出し、複雑なパターンに負けない視認性を発揮している。色数を絞ることで、複雑な素材感と優れた視認性を両立させている点には、G-SHOCKをはじめとする実用時計を作り慣れたカシオならではのノウハウが詰まっているように感じる。
インデックスの完成度も想像以上だ。高さ自体はやや抑えられ、平面的な印象であるものの、上面には粗めのヘアラインを施し、側面へ向かって斜めのカットを加えることで立体感を演出している。針も同様に、広い面積にヘアライン仕上げを与え、光を柔らかく反射させる。ホワイトの蓄光塗料は、時針と分針で明確に長さが異なり、暗所でも瞬時に見分けることが可能だ。低価格帯の腕時計では、これらのパーツにバリやプレス痕の粗さを感じることも少なくない。しかし本作に至ってはほとんど気になることがなかった。

ダイアル外周にはミニッツトラックを配したチャプターリングが設けられ、外周に奥行きを生み出しつつ、針と風防との視覚的な距離も詰められている。低価格の実用時計にありがちな、ダイアルの間延び感も少ない。
あえて気になった点を挙げるとすれば、日付表示の見にくさだろうか。デイトディスクがやや奥まった位置にあり、さらに窓自体も小さい。角度によっては少し暗く感じられる場面もあったことは否めない。特に10日以降の二桁表示に関しては、購入前に実機で確認しておくことをおすすめしたい。
軽量・強靭なカーボンケース
本作のもうひとつの注目ポイントが、フォージドカーボン製のミドルケースだ。近年は各社よりカーボン素材を採用したモデルがリリースされてきているが、その多くは中~高価格帯である。10万円を大きく下回る価格でカーボンケースを積極的に取り入れた点において、本作は驚異的である。
ケースデザインは、どこかレトロな印象を与えるクッション型。そのことを強調するベゼルは、ステンレススティールにブラックIP仕上げを施すことでミドルケースとの調和が生み出されている。ベゼル上面にはヘアラインを施し、四隅には斜めのポリッシュ面を設けることで、メリハリを利かせている。全体的にエッジの立った造形は、スポーティーかつシャープな印象だ。

ケースの直径は38.8mm。前作と大きく変わらない、存在感と装着性を両立させるサイズ感だ。小径化のトレンドが進む中においては、決して小ぶりというほどではないが、その分トレンドの移り変わりに左右されず、安心して着用することのできるタイムレスなサイズと言える。ベルト一体型のデザインも手伝ってか、ケースの全長は43.8mmに抑えられ、手首の細いユーザーでも違和感なく着用することだろう。もちろん、カーボン素材の軽量性も、装着感の向上に寄与する。

ベルトはコシのあるレジン製で、ケースと自然につながるラインが特徴だ。ラグ側面からネジによって固定されている。両開き式のフォールディングバックルが組み合わされ、さらに剣先側の調整穴も多く設けられているため、幅広い手首サイズへ対応可能だ。
ブラックIP仕上げのステンレススティール製ケースバックは、スクリューバック仕様。これによって、悪天候でも着用可能な10気圧防水を備えている。

ムーブメントは名機Cal.8215
前作ではセイコー傘下のTMIが手掛けるCal.NH35を搭載していたが、今作のムーブメントは、シチズン傘下のミヨタが長年生産を続けるCal.8200系に変更されている。国内外のさまざまなブランドに供給されるエントリークラスのムーブメントであり、製造工程の多くが自動化されている量産品だ。ややありきたりな、軽視されがちなムーブメントだが、そのスペックは決して見劣りするものではない。

特筆すべきは、シンプルな構造ゆえの信頼性だ。長年にわたって改良を重ねながら生産され続けてきたCal.8200系は、世界中で膨大な採用実績を持つ。さらに部品供給や整備性にも優れ、低価格なムーブメントでありながらも、オーバーホールを繰り返しながら長く使い続けることを前提とした設計思想を有しているのだ。公称精度やパワーリザーブは現行の最新機に一歩譲るが、量産ムーブメントとしてCal.8200系に肩を並べる存在は、そう多くない。
自動巻き機構は、シンプルな片方向巻き上げ式を採用。腕に装着していると、時おり、勢いよくローターが空転することもあるが、振動や音は気にならないレベルだ。特に音に関しては、個人的には、セラミックス製のボールベアリングを採用した一部の自社製ムーブメントの方が気になるほどであった。
操作性は、至って標準的なものである。リュウズを完全に押し込んだ状態で主ゼンマイの巻き上げ、1段引きで日付の早送り、2段引きで時刻調整となる。本作では八角形のリュウズを採用しており、指先で確実に操作することができる。
シースルーバックから覗くローターやブリッジは、無骨であまり見栄えのするものではない。しかし、工業製品としての機械式ムーブメントを突き詰めたCal.8200系には、華美さを全面に押したムーブメントとはまた違った魅力が宿っているのである。
レトロなグラデーションダイアルのゴールドカラーモデル
ゴールドカラーで統一された別のバリエーションモデル、Ref.EFK-200DG-5AJFについても触れておこう。その特徴は、ブラウンからブラックへと移り変わるグラデーションダイアルだ。これがクッション型のケースデザインと相まって、1970年代を想起させるレトロフューチャーな印象を与える。

ステンレススティール製の直径38mmケースとブレスレットは、ゴールドIPを施すことで華やかに仕上げられている。しかし、派手さは感じない。ヘアライン仕上げを主体としているためだろう。ピカピカと光ることはなく、しっとりとした輝きを放つ。一方で、ベゼルの四隅やケースサイドはポリッシュが施され、手首を動かした際に、キラリと煌めく様子を楽しむことが可能だ。

ブレスレットは、H型のコマとスクエア型のコマを組み合わせたスポーティーなデザイン。各コマは割ピンによって接続され、見たところ全てのコマを取り外すことが可能だ。テーパーしているため、デザイン上取り外す数に限界はあるが、手首が細いユーザーであっても調整しやすいのはうれしい。中身の詰まった無垢のコマがもたらす、しっとりとした肌触りも魅力だ。バックルは、プッシュボタンによって開閉する三つ折れ式を採用する。


日常使いしやすい装着感
両モデルとも、装着感は良好だ。フォージドカーボンモデルでは、ケースそのものの軽量性と、しなやかなレジン製ストラップが、着用していることを忘れてしまうような軽快さを感じさせる。ステンレススティールモデルでは、負担にならないほどの程よい重量感を感じさせつつ、落ち着いたトーンのゴールドカラーの外装やグラデーションダイアルによって、個性を主張する。
ケースの厚みはどちらも11.9mmと、決して薄くはない。しかし、立体的な造形のベゼルや、針と針のクリアランス、チャプターリングの存在によって、見た目には過度な厚さを感じない。アクティブなシーンで着用する軽快なスポーツウォッチを求めるのであればフォージドカーボンモデル、さまざまなシーンで着用するデイリーウォッチを探しているのであれば、ステンレススティールモデルを選択するのが良いだろう。
完成度の高さに驚かされる
筆者がカシオの機械式モデルを手に取ってじっくりと試したのは、今回が初めてである。同社が機械式腕時計をリリースするというニュースを見た際、確かに驚いたものの、正直に言えば価格なりの出来栄えだろうと思っていた。同社が電卓技術の応用によって時計業界に参入したことを考えれば、その根幹を成すのは電子技術だ。実際、同社はG-SHOCKやオシアナスなどのハイテクなクォーツウォッチによって、確固たる地位を築いてきた。いくら汎用ムーブメントを使っているとはいえ、機械式腕時計は専門外なはずである。
しかし、実機を見てみるとどうだろうか。針やインデックスの処理を含むダイアルの見事な作りこみは、高級感を十分に感じさせ、エッジの効いたケースとともに、オーナーに所有満足感を与えてくれる。フォージドカーボンケースやグラデーションダイアルなど、しっかりとした個性を備えつつも、取り回しやすいサイズや10気圧防水など、マイナス要素の少ない堅実な設計には、カシオが長年にわたって積み上げてきた実用時計としてのノウハウが垣間見える。
しかも、販売価格は10万円を優に下回る。安易に“コストパフォーマンス”という言葉を持ち出すのは、評価を放棄しているようで好まないが、本作にその言葉を使わずしていつ使うのか、というほどに、そのクォリティは驚異的だ。
早くも第2弾が登場したカシオの機械式モデル。同社はこれからも新たなモデルを送り出していくことだろう。果たしてそれらはどのような進化を遂げていくのか、カシオの独創性の行く末を楽しみに見守っていきたい。




