2026年3月、オメガが発表した「コンステレーション オブザーバートリー」。この新作コレクションは、時分表示のみの“2針”でありながら、マスター クロノメーターに認定された腕時計として話題になった。そんなコンステレーション オブザーバートリーを1週間にわたって着用レビューした中で思い知ったのは、ムーブメントにとどまらず、外装に至るまで光ったオメガのウォッチメイキングの腕前だ。

Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2026年8月18日公開記事]
“2針”のマスター クロノメーター認定機として誕生した「コンステレーション オブザーバートリー」
オメガは2026年3月26日、「コンステレーション」の新しいコレクションとして「コンステレーション オブザーバートリー」をリリースした。
コンステレーションは1952年に誕生したオメガの高精度な自動巻きクロノメーターモデルであり、「高精度」の象徴として、かつて時計の精度が競われ、オメガ自身も数々の受賞を果たした天文台クロノメーターコンクールを彷彿させる名称や意匠があしらわれた。時代に合わせてデザインやスペックは変わっていったものの、オメガが高精度を追い求めてきた歴史を体現する存在というポジショニングだと感じられるのが、2015年の「コンステレーション グローブマスター」の発表だ。このモデルはオメガ初のマスター クロノメーターを採用した1本であったのだ。

オメガがマスター クロノメーターとともに打ち出したコンステレーション グローブマスター。なお、グローブマスターは北米市場向けに販売されたコンステレーションに付けられていたモデル名である。自動巻き(Cal.8900)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm)。100m防水。生産終了。
マスター クロノメーターはオメガがMETAS(スイス連邦計量・認定局)とともに共同で開発した、腕時計の精度と性能に関する品質基準だ。日差0〜+5秒または0〜+7秒の高精度に加えて、耐磁性能や防水性能、パワーリザーブなどといった8つのテストをクリアした腕時計がマスター クロノメーター認定となり、とりわけ1万5000ガウス以上が条件として設けられている耐磁性能の基準は、オメガの高い技術力、そして性能を妥協しない姿勢の証しである。
コンステレーション グローブマスターの発売から約10年、コンステレーションのポジショニングを改めて思い起こされる存在となったのが、コンステレーション オブザーバートリーと言える。なぜならこのコレクションは時分のみを表示させる“2針”の腕時計でありながらも、マスター クロノメーターの認定を受けているのだ。

通常、秒針がないと細かい精度を確認することが難しい。しかし、小誌コントリ編集者の鈴木裕之が書いた原稿によると、「『ラボラトワール・ドゥ・プレシジョン(LdP)』に基づく音響検査の技術」によって、認定を可能にしたという。詳しくは引用元の記事を参照していただきたいが、時計のチクタク音を基準としつつ、25日間にわたって検査されているとのこと(引用:https://www.webchronos.net/features/159099/)。
まさにオメガが情熱を燃やしてきた高精度の、そしてコンステレーションの象徴である本コレクションのうち、O-MEGAスティール製ケースにブラックセラミックス製文字盤が組み合わされたモデルを借り受けたので、1週間着用した。果たしてその実力はムーブメントからのみならず、外装からも存分に伝わるものであった。

自動巻き(Cal.8914)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。O-MEGAスティールケース(直径39.4mm、厚さ12.23mm)。30m防水。181万5000円(税込み)。
精緻な作りの文字盤に時計ハカセも驚き!?
本作を着用している際、編集部内で「それってもしかしてコンステレーションの新作?」と、しばしば声を掛けられた。そうだと答えて本作を見せると、編集長のハカセこと広田雅将が文字盤をまじまじと見て、「これ、ニヴァロックス・ファー製かどうか聞いてもらえますか?」と。
ニヴァロックス・ファーはオメガが属するスウォッチ グループ傘下のブランドで、ヒゲゼンマイのサプライヤーとして知られている。広田は文字盤、とりわけインデックスが非常に精密に作られていることに目をつけ、このサプライヤーが手掛けたのではないかと。オメガに問い合わせると、そうなのだという。

インデックスは従来のコンステレーションとは異なるカイト型となり、ダイヤモンドを使って全体がポリッシュに磨かれている。広田に言われてじっくり見ると、この小さなパーツは複数のファセットを持ち、ドレッシーな雰囲気をたたえる細さでありながらも、しっかりとした立体感を持つがゆえに、文字盤上で存在感を放っている。18Kホワイトゴールド製のドーフィン針も3つのファセットを持ち、光を受けてキラリと輝く。蓄光塗料は塗布されておらず、スポーツモデルではなくドレッシーなモデルという立ち位置なのだろう。
文字盤はブラックセラミックス製だ。コンステレーション オブザーバートリー唯一の仕様で、耐食性に優れ、また高い硬度を持つ一方で割れやすいセラミックスでありながらも、外周に十二角形のファセットが施された、往年の“パイパンダイアル”も踏襲された。近年のオメガのセラミックス使いに、うならされている時計愛好家は少なくない。初見ではまるで金属を磨いたかのような光沢を放つセラミックス製「スピードマスター ダーク サイド オブ ザ ムーン」をはじめ、加工の難しいこの素材を自在に操る様は、コマデュールを傘下に持つスウォッチ グループのスケールメリットを存分に生かしていることをうかがわせる。
なお、セラミックス製文字盤はほかのモデルと厚みに違いはないとのこと。また、中央部が強くポリッシュされており、写真に収めようとするとスマートフォンが映り込んでしまったので、広報画像を挿入した。

“2針”マスター クロノメーターというキャラクターにも負けない外装クォリティ
コンステレーション オブザーバートリー最大の特徴は、繰り返しになるが“2針”であるのにマスター クロノメーターということにある。しかし、自分自身が時計“ルッキズム”の傾向にあることも関係しているとは思うが、この驚くべき美点と並びうる本作のキャラクターが、前述した文字盤を含む外装のクォリティにあると感じた。
オメガの高性能ステンレススティールであるO-MEGAスティール製ケースは直径39.4mm、厚さ12.23mm。目を引くのが、その複雑な造形だ。“2針”というとオーセンティックなラウンドフォルムのドレスウォッチが多い中、本作はユニークな形状を有しており、強いキャラクターの確立につながっている。オメガが“ドッグレッグ”と呼ぶラグはファセットが与えられ、また、ケースサイドから一段上がったような印象を受ける段差が設けられてセットされる。ベゼルにもファセットが与えられた結果、一般的なドレスウォッチとは趣を異にする意匠に仕上がっている。


複雑な造形も手伝って、ケース厚は12.23mmと、決して薄くはなく、立体感がある。ゆえに、本作はピュアなドレスウォッチではない。この点に、オメガの審美性という面での外装クォリティの高さを見て取れるのではないだろうか? 2針=ドレスウォッチという枠から外れ、「2針だけど存在感たっぷりの腕時計」という、ありそうでなかったジャンルを打ち立てたためだ。

ケースバックはシースルーになっており、マスター クロノメーター認定ムーブメントCal.8914を観賞することができる。このCal.8914は性能に優れるのみならず、天文台モチーフのメダリオンがあしらわれ、かつアラベスク模様のコート・ド・ジュネーブ装飾も施されたロジウムプレートのローター、同じく装飾されたブリッジ、しっかりと磨かれたネジや穴石などといった、美観においても特筆すべき点の多いムーブメントであり、所有欲をくすぐる大きな理由のひとつとなっている。

なお、精度については正直にお伝えすると、2針なので測り方が分からなかった(コーアクシャル脱進機なのでタイムグラファーでも計測せず)。1週間の着用の中で時間のズレはほとんど感じなかったものの、計測はしていないので正確なことは言えず。とはいえ「初の2針マスター クロノメーター」という画期性は揺るがず、また、耐磁性能や約60時間のパワーリザーブといった実用性を鑑みれば、外装のみならず、ムーブメントもまたオメガの手腕が光る1本であることが分かる。

オメガのウォッチメイキングを存分に知ることのできる快作
オメガが2026年に打ち出した、“2針”でマスター クロノメーター認定機というキャラクターを持った「コンステレーション オブザーバートリー」を着用レビューした。
大きな強みとなる「精度」については正直体感できなかったものの、非常に優れた外装クォリティ、そして日々安心して使えるスペックは、十分にオメガの技術力の「今」を感じられるものであった。マスター クロノメーターの樹立から約10年、オメガのウォッチメイキングは進化を止めない。



