ベル&ロスの2026年新作「BR-05 36MM ブルー ダイヤモンド イーグル」を実機レビューする。天然ダイヤモンドでわし座を形作ったアヴェンチュリンダイアルを特徴とする本作は、「BR-05」らしい汎用性と装飾性を兼ね備えた、日常使いにふさわしいジュエリーウォッチである。
Photographs & Text by Tsubasa Nojima
[2026年9月15日公開記事]
「BR-05」の小径モデルに加わった、詩情あふれる新作
航空計器から着想を得た角型時計を得意とするベル&ロス。そのラインナップにおいて、都会的ないわゆる“ラグジュアリースポーツウォッチ”の役割を担っているのが「BR-05」だ。
BR-05が誕生したのは2019年。スクエアケースとラウンド型ダイアルを組み合わせたベル&ロスらしい意匠を継承しつつ、ケースとブレスレットを一体化させたスポーティーかつ洗練されたスタイルは、注目を集め、同社を代表する存在となった。当初は直径40mmケースで登場したが、2025年には36mmの小径モデルがラインナップに追加されたことも記憶に新しい。従来のデザインコードを残しながらサイズを抑えたことで、男女問わず着用しやすい、ジェンダーレスなモデルへと仕上がった。
そんなBR-05の直径36mmケースのモデルに加わった2026年新作が、「BR-05 36MM ブルー ダイヤモンド イーグル」だ。モデル名が示す通り、本作のテーマは夜空に浮かぶ“わし座”である。ブルーアヴェンチュリンのダイアルにダイヤモンドを配することで、夜空に輝くわし座を表現している。ベル&ロスといえば機能性を前面に押し出したツールウォッチというイメージが強い。その中で本作は、詩情に満ちた異色の存在と言えるだろう。

ダイヤモンドが煌めくアヴェンチュリンダイアルを採用した新作。36mmケースの「BR-05」をベースとする。自動巻き(Cal.BR-CAL.329)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径36mm、厚さ8.7mm)。100m防水。73万7000円(税込み)。
夜空を思わせるアヴェンチュリンダイアル
本作最大の見どころは、何と言ってもブルーアヴェンチュリンを用いたダイアルだろう。アヴェンチュリンガラスとは、ガラスの内部に微細な金属結晶を析出させることでキラキラとした独特の輝きを生み出したものである。その歴史は16世紀末から17世紀初頭のイタリア・ヴェネツィア、ムラーノ島にまでさかのぼるとされている。アヴェンチュリンという名称はイタリア語で「偶然」を意味する言葉に由来し、一説には偶然の発見によって生まれたとされる逸話も伝わっている。
本作では真鍮製のベースにブルーアヴェンチュリンのプレートを重ねることで、深みのある神秘的な夜空を表現している。手首を動かすたびに光を受けた微細な粒子が煌めき、表情が変わる様子は、まさに夜空の一部を切り取ったかのようだ。
その夜空の中で一際輝きを放つのが、18個の天然ダイヤモンドである。このうち11個がインデックスとして機能し、残る7個によってわし座を再現する。10時と11時の間にセットされた最も大きなダイヤモンドは、わし座で最も明るい恒星、アルタイルだ。
興味深いのは、インデックスと星座を構成するダイヤモンドが一見して明確に区別されないことだろう。サイズの異なる石がダイアル上にちりばめられているため、時計であることを意識せずに眺めれば、それらは夜空に輝く星々そのものに見える。
ミニッツマーカーや日付表示を省き、時分針も細身のバータイプとするなど、その他の要素を極力控えている点にも注目したい。情報量を減らしたことでアヴェンチュリンとダイヤモンドの存在感が際立ち、わし座というコンセプトを純粋に楽しむことができる。

エレガントな小径ケース
詩情豊かなダイアルとは対照的に、外装はBR-05らしいスポーティーなデザインを踏襲している。ラウンド型のダイアルをスクエアケースで囲み、四隅にビスを配したベゼルは、一目でベル&ロスと分かるアイコニックな意匠だ。ステンレススティール製ケースにはサテン仕上げとポリッシュ仕上げが使い分けられ、シャープな造形を際立たせると同時に、光の反射によってラグジュアリーな雰囲気を生み出す。
3時位置には、リュウズガードに囲まれたねじ込み式リュウズを採用。華やかなダイアルに反して100mの防水性能を確保しており、あくまでBR-05というアーバンスポーツウォッチの基本性能を崩していない。

そして本作を特徴付けるのが、直径36mmというコンパクトなケースサイズだ。厚さもわずか8.7mmに抑えられている。一般的に、スクエアケースは数値以上に存在感が出やすいが、このサイズであれば主張はほどよく、アヴェンチュリンとダイヤモンドを用いた華やかな時計でありながら、手元で過剰に目立つことはない。

ケースバックには、わし座の星図がレーザー刻印され、特別感を演出する。その内部に収められているのは、自動巻きムーブメントのCal.BR-CAL.329だ。汎用ムーブメントをベースとしつつ、約54時間のパワーリザーブを確保しており、日常使いには十分な実用性と信頼性を備える。

ブレスレットもBR-05の魅力を語るうえでは欠かせない要素である。ケースから滑らかにつながる一体型のデザインを採用し、広い平面を多用したリンクで構成されている。ケースと同様にサテンとポリッシュに磨き分けることで、腕を動かした際に光が細かく反射し、アヴェンチュリンダイアルとは違った種類の輝きを見せる。
バックルには、両開き式のフォールディングバックルを採用。閉じた状態では存在をほとんど意識させず、ブレスレットの流れを途切れさせないエレガントさが魅力だ。


メリハリを利かせた、実用性と装飾性のバランス
実際に手首に着けてみると、まず印象に残るのが装着感の良さだ。コンパクトなケースは手首への収まりがよく、しなやかなブレスレットも手首の動きを妨げない。ケースとブレスレットが連続したデザインも相まって、手首に載せた際の感覚は軽快そのものだ。袖口にも引っ掛かりにくく、長時間着用していても負担を感じない。防水性も高いため、日常的に使用する分にも懸念がない。

一方、時計としての視認性や判読性については、割り切って考える必要がある。ダイヤモンドのインデックスには明確な指標性がなく、ミニッツマーカーも存在しない。さらにアヴェンチュリン自体が複雑に光を反射するため、瞬時に正確な時刻を読み取るのは難しい。筆者が実際に使用した印象でも、おおよその時刻を知る程度と考えた方がよいだろう。
もっとも、これは欠点というより、本作が何を優先した時計なのかを示す部分でもある。高い視認性を備えた時計を求めるのであれば、ベル&ロスには他にいくらでも選択肢がある。本作は時計としての機能性をあえて抑えることで、夜空とわし座というコンセプトを深く味わうことのできるパッケージングを実現しているのだ。
実用面でもうひとつ気になったのが、リュウズの操作性である。薄型ケースに合わせてリュウズ自体がかなり小さく、加えてリュウズガードに挟まれているため、ねじ込みを解除したり締め込んだりする操作には少々手間取ってしまう。
本作のキャラクターだけを考えるなら、防水性能を多少抑えてプッシュ・プル式リュウズとするのもひとつの方法だったかもしれない。しかし、BR-05のバリエーションのひとつである以上、100m防水を備えたアーバンスポーツウォッチとしての基本設計を維持することにも意味がある。そう考えれば、この小さなねじ込み式リュウズはBR-05らしさを守るための選択であったと捉えるべきだろう。

日常に輝きを添える、スポーティーなジュエリーウォッチ
ダイヤモンドを用いたジュエリーウォッチは、オーナーに強い高揚感を与えてくれるだろう。しかし同時に、その華やかさゆえ着用する場所や服装を選びやすいカテゴリーでもある。
その点、本作は少し立ち位置が異なる。ダイヤモンドだけを際立たせるのではなく、アヴェンチュリンが放つ無数の光の中に溶け込ませることで、石の輝きをダイアル全体の表現へと昇華しているからだ。36mmという小径ケースも相まって、実物から受ける印象は、ウェブ上の画像などから想像するほど派手ではない。
何より、ベースにあるのは100m防水と一体型ブレスレットを備えたBR-05だ。ビジネスから休日まで幅広いシーンで使えるBR-05本来の汎用性を残しながら、ダイアルだけでまったく異なる世界観を作り上げている点に、自身のアイコンを生かしたベル&ロスらしい時計作りが垣間見える。
手元でふと光を受けたアヴェンチュリンやダイヤモンドが輝く様子は、それだけで少し気分を上向かせてくれる。実用品として突き詰めれば、視認性をはじめ割り切らなければならない部分は存在する。しかし、その割り切りを受け入れられるのであれば、本作は性別やシーンを問わず日常に取り入れやすい、スポーティーなジュエリーウォッチとなるだろう。
時刻を正確に表示することだけが、腕時計の存在意義ではない。夜空を手首に載せ、その輝きを日々楽しむ。BR-05 36MM ブルー ダイヤモンド イーグルは、そんな腕時計の楽しみ方を提案してくれる1本だ。



