じわじわくる、ノモスのシンプルウォッチ「デュオ」

LIFE編集部ブログ
2019.06.16

(左)やはり筆者の大好きな「タンジェント 33」。最小サイズのタンジェントである。手巻き。SS(直径32.8mm、厚さ6.5mm)、20万5000円(税別)。(右)新しく加わった「タンジェント デュオ」。秒針が無くなり、文字盤と針の色が変わった以外はタンジェント 33に同じ。手巻き(Cal.アルファ.2)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。3気圧防水。17万円(税別)。なお、いずれのモデルも+8000円で裏蓋にエングレーブを施せる。

 バーゼルワールドではさまざまな時計を見る。その中には積極的に取り上げることはあまりないが、じわじわくる時計が少なくない。そんな1本に、ノモス グラスヒュッテの「デュオ」がある。気に入ったので本誌にも載せてしまったが、実のところ、既存のモデルから秒針を取っただけの“新作”だ。これを新作に入れるのは反則だろと思ったが、気に入ったので仕方ない。

 ベースとなったのは、ノモスの定番であるタンジェント、オリオン、ラドウィッグとテトラ。ケースサイズは、それぞれ33mm(テトラは27mm)だから、ノモスの丸型、角型時計中で最も小さい時計。しかし、これがいいのだ。元ノモスユーザーからすると、テトラをのぞくノモスの時計は、どれもラグが長くて、実寸以上に大きく感じてしまう。長いラグはノモスの時計をドレッシーに見せてくれるが、38mm以上のサイズは僕の腕からは飛び出してしまう。その点、33mm、または27mmしかないデュオは理想的だ。

 ムーブメント自体は、既存のCal.アルファを改良した、Cal.アルファ.2。今さらクロノスの読者に説明するまでもないが、基本設計をプゾーのCal.7001番にさかのぼれる由緒正しき手巻きムーブメントだ。2針化に合わせて、4番車のホゾを短く切ったが、それ以外は既存のアルファと同じである。これまた蛇足だが、ノモスのアルファというのは大変に良いムーブメントで、この価格なのに、緩急針にちゃんとトリオビスを載せている。トリオビスというのは値段の高い部品なので、最近は一流メーカーでも使いたがらない。しかしノモスは、精度を出すため、あえてこの凝った緩急針を使い続けている。ただし薄型なので、磁気には気をつける必要があるし、小径なのでパワーリザーブは長くない。

 ちなみにノモスは、このデュオを女性用と見なしているらしい。事実、ウェブサイトには「極めて繊細であらゆるジュエリーにマッチする」と書いてある。確かに女性が着けても良さそうだが、個人的には、ガチの時計好きにこそ、このモデルを使って欲しいと思っている。軽くて使いやすい上、文字盤や針の質感も上々で、秒針が無いため、今日は日差何秒だった、なんて考えずに済むのである。ストラップを変えたら、かなりいい実用時計になるんじゃないか、と思う。というわけで、細腕のガチな人はぜひ。(広田雅将)
https://nomos-glashuette.com/ja/watches/new-releases/duo

デュオの文字盤は真鍮に亜鉛メッキを施したもの。しかし、タイポグラフィーが黒からモカブラウンに変更された結果、印象は大変ソフトになった。個人的には大変好ましい変更だ。