時計専門誌『クロノス日本版』の定番企画「Chronos Top10 Watches Rankings」。腕時計に精通した選考委員が各回のテーマに沿って、それぞれのお勧めモデルを10本選び、その中で票を集めたベスト10を決定するという企画だ。今回のテーマは、「傑作手巻きムーブメントを搭載した時計」である。

[クロノス日本版 2025年1月号掲載記事]
2025年5月22日更新


傑作手巻きムーブメントを搭載した時計

 時計市場のシェアでは極めてニッチな存在でありながら、時計愛好家を中心に、確たるニーズがある手巻き時計。今回のランキングでは、「傑作手巻きムーブメントを搭載した時計」をお題とした。手巻きであることをピュアに楽しむため、選考には「現行モデル」のほか、「時、分、秒、日付、パワーリザーブ表示以外の機能を搭載していないこと」を条件として設けた。

10位 クレドール/ゴールドフェザー U.T.D.

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クレドール ゴールドフェザー

クレドール「ゴールドフェザー U.T.D.」Ref.GBBY980
1960年に誕生したセイコーの薄型ウォッチ、「ゴールドフェザー」。その復刻モデルが本作だ。傾斜を多く取り入れたケースデザインは、視覚的に薄さを強調する効果も備えている。モデル名のU.T.D.は、「Ultra Thin Dress」の略称。手巻き(Cal.6890)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約37時間。18KPGケース(直径37.1mm、厚さ7.7mm)。日常生活用防水。374万円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(クレドール)Tel.0120-302-617

●「ゴールドフェザー」といえばセイコー薄型時計の原点。その名称を1969年に開発された極薄型ムーブメントの68系キャリバーを搭載して復活させたというのがポイント。実はオリジナルの「ゴールドフェザー」が大好きなので、この復活は大歓迎である。(名畑)
●日本の手巻きムーブメントの殿堂入りといえばコレ。(篠田)

9位 カルティエ/サントス デュモン

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カルティエ サントス デュモン

カルティエ「サントス デュモン」Ref.WGSA0097
18Kイエローゴールドケースにグレーのラッカーを施した、エレガントなモデル。サントスとしては珍しく、アラビア数字インデックスを採用していることもポイントだ。手巻き(Cal.430MC)。18KYGケース(縦43.5×横31.4mm、厚さ7.3mm)。日常生活防水。生産終了。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00

●専門家の間でも評価の高い手巻きのCal.430 MCを搭載した本作。逆回転時計の「リワインド」をはじめ、近年のサントスは手巻きが圧倒的に面白い。ラッカーを施したケースとアラビア数字のインデックスのこのサントスは、確実に将来のコレクターズアイテムとなるはず。(安藤)

8位 NAOYA HIDA&Co./NH TYPE 1D

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NAOYA HIDA&Co.

NAOYA HIDA&Co.「NH TYPE 1D-3」
往年のドレスウォッチに見られる数々の要素を、現代的な製造技術とともによみがえらせたマニア垂涎の1本。手作業で彫り込まれたブレゲ数字インデックスやシャープな造形のケースなど、シンプルな中に手の込んだディティールが光る。手巻き(Cal.3019SS)。18石。2万8800振動/ 時。パワーリザーブ約48時間。18KYGケース(直径37mm、厚さ9.8mm)。5気圧防水。990万円(税込み)。2025年~2026年に1本程度を生産予定。(問)NH WATCH https://naoyahidawatch.com

●手巻き時計の趣味性を高らかにうたい上げたのが、NAOYA HIDA&Co.である。汎用のクロノグラフを3針に改造するのは、昔からの王道だ。徹底したモディファイにより、往年の名機もかくやという感触を手にしている。昔の時計を思わせる緻密なまとまり感も好ましい。(広田)

7位 ローラン・フェリエ/クラシック オリジン

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ローラン・フェリエ クラシック・オリジン

ローラン・フェリエ「クラシック オリジン」Ref.LCF036.TI.CG.1
ミニマルなデザインと、手作業によって仕上げられた手巻きムーブメントを採用したドレスウォッチ。ブルーのダイアルには、外周に向かって色味が濃くなるグラデーションが施されている。手巻き(Cal.LF 116.01)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。Tiケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水。617万1000円(税込み)。(問)スイスプライムブランズ Tel.03-6226-4650

●まず時計としての佇まいが美しい。そして裏返すと19世紀の懐中時計を思わせる古典的なレイアウトながら、そこにモダンな仕上げを施すことで、まさに21世紀のヴィンテージ時計としての存在価値を確立しているように思う。(名畑)

6位 ノモス グラスヒュッテ/タンジェント

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ノモス グラスヒュッテ タンジェント

ノモス グラスヒュッテ「タンジェント」Ref.TN1A1W2
シンプルな機能美の宿ったバウハウスデザインが特徴的な、ノモスを代表する「タンジェント」。上品な白銀仕上げのダイアルに、ブルースティール針がアクセント。手巻き(Cal.DUW4001)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約43時間。SSケース(直径35mm、厚さ6.6mm)。3気圧防水。37万1800円(税込み)。(問)大沢商会 Tel.03-3527-2682

●手巻きムーブメントといえば絶対にはずせない名機。ベースムーブメントを大幅に改修しノモスのマニュファクチュールキャリバーと呼べるレベルにまで到達させたのがすごい。時計自体もケース径35mmとクラシカルだが、その頑固な姿勢が今や逆にトレンドだ。(名畑)

5位 ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート

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ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート

ジャガー・ルクルト「レベルソ・トリビュート」Ref.Q713842J
ポロ競技における衝撃から風防を保護するための反転機構を備えた「レベルソ」は、角形ウォッチの金字塔だ。砲弾型のインデックスやドーフィン型の時分針には、ファーストモデルの意匠が受け継がれている。手巻き(Cal.822)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦45.6×横27.4mm、厚さ8.51mm)。3気圧防水。164万5600円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833

●レベルソ特有の角型ケースと自社製Cal.822の組み合わせは紛れもないアイデアルペア。タイムレスなクラシックの決定版だ。(菅原)

4位 グランドセイコー/エボリューション9 コレクション手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours

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グランドセイコー エボリューション9コレクション

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours」Ref.SLGW003
約80時間のパワーリザーブや毎秒10振動のハイビートなどのスペック面だけではなく、装飾や主ゼンマイの巻き心地も追求したCal.9SA4を搭載。白樺の樹皮をモチーフとした型打ちダイアルが採用されている。手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。日常生活用防水。152万9000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617

●久々に出たグランドセイコーの手巻きは、ムーブメント良し、パッケージング良しと文句の付けようがない。リュウズを巻いた感触も、現行品らしからぬ程カッチリしている。価格は高いが、加工の難しいブリリアントハードチタンと考えればやむなし。Wondeful buy。(広田)

3位 グランドセイコー/ヘリテージコレクション45GS復刻デザイン 限定モデル

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グランドセイコー 45GS復刻デザイン

グランドセイコー「ヘリテージコレクション45GS復刻デザイン 限定モデル」Ref.SLGW005
1968年に誕生した「45GS」の復刻モデル。グランドセイコースタイルにのっとったケースデザインや第二精工舎のマークを忠実に再現している。ムーブメントの振動数は、オリジナルと同じ毎秒10振動。手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径38.8mm、厚さ10.4mm)。日常生活用防水。世界限定1200本(うち国内425本)。134万2000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617

●10振動へのこだわりや、巻き心地も含め、今最も愛したい手巻き。(篠田)

●復刻デザインに合わせて、当時と同様に搭載ムーブメントもハイビートの手巻き。長時間駆動の最新Cal.9SA4は設計、性能ともに秀逸だ。(菅原)

2位 パテック フィリップ/カラトラバ 6119

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パテック フィリップ カラトラバ 6119

パテック フィリップ「カラトラバ 6119」
ドレスウォッチの代表作である「カラトラバ」の現行モデル。クル・ド・パリ装飾のベゼルが華やかさを増幅させている。前作からムーブメントを一新し、スモールセコンドのバランスも良好に整えられている。手巻き(Cal.30‑255 PS)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KWGケース(直径39mm、厚さ8.08mm)。3気圧防水。537万円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109

●新開発による手巻きムーブメントCal.30-255 PSを搭載し、ベゼルにクル・ド・パリと呼ばれる装飾を導入した「これぞパテック フィリップ!」と膝をたたきたくなるような近年の傑作。グレーの濃淡を導入した文字盤もスタイリッシュ。(名畑)

●手巻きならではのサイズ感と美観をそろえたCal.30-255PSを搭載した、バランス抜群な1本。しかも約65時間のパワーリザーブは実用時計として十分だ。実用に適したドレスウォッチが欲しいという人におすすめしたい。(安藤)

1位 パルミジャーニ・フルリエ/トリックプティ・セコンド

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パルミジャーニ・フルリエ トリック

パルミジャーニ・フルリエ「トリックプティ・セコンド」Ref.pfc940-2010001-300181-JP
大きく余白を設けたダイアルやローレット加工のベゼルなど、パルミジャーニ・フルリエらしい意匠をふんだんに盛り込んだドレスウォッチ。シースルーバックからは、コート・ド・フルリエ装飾が施されたゴールド製のムーブメントを鑑賞することができる。手巻き(Cal.PF780)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRGケース(直径40.6mm、厚さ8.8mm)。30m防水。740万3000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com

●絶妙に計算されたシンプルかつミニマムなダイアルと手巻きムーブメントCal.780とのマッチングがこの上なく素晴らしい。1本だけ選ぶならこれにキマり。(菅原)

●新規設計のスモールセコンド付き手巻きで、厚さ3.15mm、約60時間のパワーリザーブというスペックもさることながら、この時計に搭載されているCal.780の最大の美点はその仕上げの美しさにある。スケルトンバックからのぞくコート・ド・フルリエはずっと眺めていられる。(安藤)