アラームや年次カレンダー、ジャンピングアワーなど、腕時計に搭載された多種多様な機能は、単に「時を知る」以上の価値をもたらしている。あるものは機能を充実させ、またあるものは機構を通して意匠を多様化させることで、腕時計の可能性を広げてきた。プチコンプリケーションは、単なる機能の追加ではない。実用性と審美性を実現する中で、各ブランドの思想が端的に現れる領域だ。ランキングを通して、今のプチコンプリケーションの輪郭が見えてくる。

小さな機構に宿る個性 プチコンプリケーションウォッチ
10位 ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート デュオ・カレンダー
22point / 2persons

手巻き。SSケース。294万8000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833
1938年のオリジナルの風味を保ちつつ、機能も充実させたさまざまなバージョンがあるなかでも、こちらのモデルの持つカジュアルなドレス感がいいなと思いました。(後藤)
9位 大塚ローテック/6号
25point / 2persons

自動巻き。SSケース。49万5000円(税込み)。(問)大塚ローテック https://otsukalotec.com
プリミティブなメカメカしさで大塚ローテック「6号」の右に出るものはない。開発者である片山次朗さんの工房にある古いカメラや計器から着想されたディテールが、機械好き男子の心を鷲掴みにする。(名畑)
8位 ショパール/L.U.C クアトロ- マーク Ⅳ
26point / 2persons

手巻き。Ptケース。781万円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
4つの香箱を搭載することで約216時間(約9日間)の超ロングパワーリザーブを実現しながら、ケースを直径39mmに収めているのが信じられない。ルックスも極めて端正で、ショパールだけに「能あるイーグルは爪隠す」と言ったところか。エシカルゴールドモデルも捨てがたいが、個人的にはプラチナモデル推し。(安藤)
7位 大塚ローテック/8号
26point / 2persons

自動巻き。SSケース。99万円(税込み)。(問)大塚ローテック https://otsuka-lotec.com
世界が注目するジャパニーズクラフトウォッチブランドは、毎回、プチコンプリのオンパレード。とにかく欲しくなる腕時計ばかり。8号は分表示にレトログラードが採用されていて、見るだけで楽しい気分になる。(安藤)
6位 フランク ミュラー/クレイジー アワーズ採用モデル全般
27point / 2persons

自動巻き。18KPGケース。517万円(税込み)。(問)フランク ミュラー ウォッチランド東京 Tel.03-3549-1949
時刻表示インデックスを一見ランダムに配置し時刻を表示する大胆な発想を、高度な技術で具現化した異形のウォッチ。「時間って一体、何?」という素朴な疑問を我々に突きつける永遠の問題作。(名畑)
5位 ゼニス/クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー
31point / 2persons

自動巻き。SSケース。203万600円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861
1980年代、ゼニスのエル・プリメロ搭載トリプルカレンダーは比較的、手頃だった。だがモダンなデザインに食指が動かず。そんな自分の眼力の乏しさを反省するサンプルとして、このモデルを推薦する。(名畑)
歴史的正統性とレイアウトの妙味が抜群。(篠田)
4位 カルティエ/タンク ア ギシェ
36point / 2persons

手巻き。18KYGケース。864万4600円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
とにかく顔つきが好きです。もう少し小さかったらもっとタイプでしたが、欧米のマーケットを考えるとこのサイズになるのは仕方ないとも思っています。かっこいいですね。(後藤)
3位 パテック フィリップ/年次カレンダー Ref.5205
40point / 2persons

自動巻き。18KWGケース。1016万円(税込み)。(問)パテックフィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109
プチコンプリケーションというジャンルを打ち立てた金字塔。パテック フィリップの年次カレンダーはどれも好みだが、視認性の高さで本作を選んだ。今の基準からするとパワーリザーブは短いし、販売価格も上がってしまったが、全体の完成度を思うとやむなし。(広田)
2位 オーデマ ピゲ/ネオ フレーム ジャンピングアワー
40point / 3persons

自動巻き。18KPGケース。979万円(税込み)。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000
基本形状はジャンピングアワーウォッチの王道ながら、ツートンのケースデザインやラバー加工の施されたレザーストラップにより、コンテンポラリーな世界観が生み出されている。約55時間のパワーリザーブで実用性も十分。個性派ながら、限定品ではなくレギュラーモデルというのがいい。(安藤)
オーデマ ピゲのお家芸であるジャンピングアワーを、今に復活させたモデル。表示を限りなく大きく取ることで、視認性を確保したのはお見事。また、ディスクを軽量化して平滑さを保持するなど、今の使用環境に合ったアップデートが施されている。(広田)
1位 ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール メモボックス
45point / 4persons

自動巻き。SSケース。246万4000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833
アラームウォッチの雄といえば、なんと言ってもジャガー・ルクルトの「メモボックス」だろう。“スクールベル” と呼ばれる独特のアラーム音は、上品で温かみがあり、実際に使ってみると非常に実用的。(安藤)
私にとってジャガー・ルクルトとは音で約束の時刻を知らせる「メモボックス」。他社にも有名なアラームモデルがあるが、どれかひとつと言われたらコレだ。(名畑)
選考委員による選定モデルの詳細
後藤洋平(49歳) 朝日新聞編集委員
「偏愛のドレスウォッチリスト」
普段はシンプルな腕時計ばかりを使っていますが、今回は依頼を受けて憧れの腕時計も含めてこのようなリストにしてみました。近年はドレスウォッチばかりが気になり、購入を重ねています。この偏愛は年々強く偏っていまして、下記のラインナップになってしまいました。
- 大塚ローテック/8号
- カルティエ/タンク ア ギシェ Ref.CRWGTA0234
- パテック フィリップ/年次カレンダー Ref.5396
- ローラン・フェリエ/クラシック・ムーン シルバー
- ルイ・ヴィトン/タンブール コンバージェンス
- A.ランゲ&ゾーネ/ランゲ1・ムーンフェイズ
- ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート デュオ・カレンダー
- IWC/ポルトギーゼ・オートマティック 42
- グランドセイコー/SBGD202
- ヴァルカン/クリケット プレジデント
篠田哲生(51歳) ウォッチディレクター
「実用性と審美性がせめぎ合う。それが、カレンダー機構なり」
カレンダーは腕時計の実用的付加機構の最たるものだが、実用性だけでは色気やロマンに欠ける。トリプルカレンダーやアニュアルカレンダーは、その隙間を補完するものだ。実用性を担保しつつも、メカニズムの神秘性や文字盤表現への追求からは、ブランドごとの遊び心や個性がうかがえる。そこであえてカレンダーのみを選んだ。
- ゼニス/クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー ラピスラズリ
- パテック フィリップ/ノーチラス Ref.5726/1A
- IWC/ポルトギーゼ・アニュアル・カレンダー
- ジャガー・ルクルト/レベルソ・トリビュート デュオ・カレンダー
- ブランパン/ヴィルレ アニュアルカレンダー GMT
- ヴァシュロン・コンスタンタン/トラディショナル・コンプリートカレンダー
- A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア・アニュアルカレンダー
- パテック フィリップ/年次カレンダー Ref.5235/50R
- オメガ/コンステレーション グローブマスター アニュアルカレンダー
- ブレゲ/トラディション レトログラード デイト 7597
安藤夏樹(50歳) 時計ジャーナリスト
「腕時計の楽しさを教えてくれる存在」
時計愛好家の憧れ、コンプリケーションは高額でその入手は難しい。その点プチコンプリは、“ビンスキ(貧乏数寄者)”にはうってつけの存在だ。ここ数年、ビッグメゾンからもレトログラードやジャンピングアワーを採用した腕時計が多数発表されるようになった。いつもとは少しだけ違う1本の楽しさを、プチコンプリで味わってほしい。
- ショパール/L.U.C クアトロ - マーク Ⅳ
- カルティエ/タンク ア ギシェ Ref.CRWGTA0234
- ヴァシュロン・コンスタンタン/パトリモニー・ムーンフェイズ&レトログラード・デイト
- H.モーザー/ストリームライナー・パーペチュアルムーン コンセプト メテオライト
- オーデマ ピゲ/ネオ フレーム ジャンピングアワー
- グランドセイコー/SLGA015
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール メモボックス
- 大塚ローテック/8号
- アミダ/デジトレンド
髙木教雄(63歳) ライター
「良作ぞろいのジャンルだと再確認」
今回のお題は機構が多岐に渡り、選択肢が多く10本に絞り込むのが難しかった。選択基準は、オリジナリティの高さだ。何とかセレクトした後も、順位付けに苦悩。あぁできることなら10 作全部買いたい。プチコンプリケーションって、複雑機構よりも改良の余地が大きく、表現の自由度が高いのだと改めて思い知らされた。いいお題でした。
- パテック フィリップ/年次カレンダー Ref.5205
- A.ランゲ&ゾーネ/1815 アニュアルカレンダー
- フランク ミュラー/クレイジー アワーズ全般
- 大塚ローテック/6号
- オーデマ ピゲ/ネオ フレーム ジャンピングアワー
- ヴァン クリーフ&アーペル/ピエール アーペル ユール ディシ エ ユール ダイヨール
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール メモボックス
- ショパール/L.U.C クアトロ - マーク Ⅳ
- ブレゲ/マリーン アラーム ミュージカル 5547
- ローラン・フェリエ/クラシック ムーン
名畑政治(66歳) 時計ライター
「酸いも甘いもプチコンプリケーション」
プチコンプリケーションと言われても、すぐに思い出せるモデルはごくわずか。そこで編集部から提示された指針に従い、なんとか10個を選んだが、コメントを書いていたら、どれも自分の過去の経験が色濃く反映されていることに改めて驚かされた。例によって、すべて同列、順位なし。
- ペキニエ/ロワイヤル オリジン キャトルフォンクション
- クロノスイス/デルフィス ベンチャー
- ルイ・エラール/レギュレーター ルイ・エラール X シルヴィ・フルーリー
- フランク ミュラー/トノウ カーベックス クレイジー アワーズ
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール メモボックス
- 大塚ローテック/6号
- H.モーザー/パイオニア・レトログラード セコンド ミッドナイトブルー
- レゼルボワール/ロングブリッジ ブリティッシュ レーシング
- ゼニス/クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー
広田雅将(52歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「手堅い選択になってしまったが……」
各社が力を入れつつあるプチコンプリケーション。そもそもは実用的なアイテムだったが、ジャンピングアワーのような古くて新しい試みがリバイバルを遂げているのは面白い。1位は言うまでもなく、パテックフィリップの年次カレンダー。選から漏れたが、オメガのアニュアルカレンダーは魅力的なモデルだと思っている。
- パテック フィリップ/年次カレンダー Ref.5205G
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール メモボックス
- オーデマ ピゲ/ネオ フレーム ジャンピングアワー
- ブランパン/ヴィルレ コンプリートカレンダー
- ウブロ/ビッグ・バン メカ-10
- IWC/ポルトギーゼ・オートマティック
- ルイ・ヴィトン/タンブール オトマティック コンバージェンス
- ヴァシュロン・コンスタンタン/フィフティーシックス コンプリートカレンダー
- パネライ/ルミノール エイトデイズ
- シャネル/ムッシュー ドゥ シャネル
ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点……10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位なしの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える
(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデル、プライス設定の低いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。



