セイコーは創業145周年を記念し、セイコー プレザージュから「クラシックシリーズ セイコー創業145周年記念 限定モデル」を発表した。「真っ白な絹の美しさ」をテーマとした“白練(しろねり)”の文字盤に、「セイコー・ブルー」の針とインデックスが組み合わされたモデルだ。そんな本作を、時計ライターの佐藤しんいちが深掘り。ケースサイズやシンプルな文字盤から、クラシカルな魅力にあふれるモデルとなっており、初めての1本としてもおすすめできる完成度の高さであった。

Text by Shin-ichi Sato
[2026年5月28日公開記事]
セイコー創業145周年を祝うプレザージュの注目作
現在のセイコーの起源は1881年の服部時計店の創業にさかのぼる。創業者の服部金太郎の精神であった「常に時代の一歩先を行く」という信条の下、1913年には国産初の腕時計を完成させた。そして1964年に国産初の機械式クロノグラフウォッチを、1965年に国産初のダイバーズウォッチを、1969年に世界初となる量産型クォーツウォッチを世に送り出す等、画期的な技術・製品によって時計業界で高いプレゼンスを示した1960年代、現在でも同社のロゴやさまざまなモデルに採用される「セイコー・ブルー」を制定した。そんなセイコーは2026年、創業145周年を迎える。この記念すべき年と、セイコー・ブルーが今回深掘りするセイコー プレザージュ「クラシックシリーズ セイコー創業145周年記念 限定モデル」のキーワードだ。

自動巻き(Cal.6R51)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径36.0mm、厚さ12.5mm)。10気圧防水。世界限定2500本(うち国内500本)。13万2000円(税込み)。2026年6月10日(水)発売予定。
創業145周年を祝い、セイコー・ブルーを取り入れた記念モデルのRef.HCC004J。本作の文字盤のテーマは「真っ白な絹の美しさ」だ。文字盤色は、絹糸を精練することで生まれる混じりけのない白を意味する“白練(しろねり)”である。白練は色で染める前の白であることから、“新たな門出”や“はじまり”に通じ、本作についてセイコーは、「身に着ける人の挑戦をそっと後押しする1本」と説明している。
また、文字盤には放射状の型打ちが施されている。この型打ちは、放射状の装飾というとよく目にするであろうサンレイブラッシュ仕上げと比較して、凸部の高さが高くて立体的であることに加えて凸部のサイズがランダムとなっている。均一で整った仕上げとは趣の異なった、有機的なデザインが印象的であった。

ここに組み合わされるのが、セイコー・ブルーから着想を得たブルーの時分秒針、インデックスである。このブルーは、彩度が高くてくっきりとしつつ、明るすぎなくて落ち着きがある。細部に注目して見ると、分針と秒針は文字盤縁までしっかりと届いており、その先端は文字盤側に軽く曲げられているのが分かる。これは、針先端を文字盤に近づけて視認性を向上させつつ、同様の曲げが施されていたヴィンテージウォッチの持つクラシカルなテイストを取り込むワンポイントとなっている。
クラシカルな印象を生み出すコンパクトなデザイン
本作のクラシカルな印象を生み出す最大のポイントはケースサイズだ。直径36.0mmというサイズは現代基準ではコンパクトだが、1960年代、すなわち現在にも通ずるセイコーのデザインコードが生まれ、セイコー・ブルーも制定された時期には、ドレスウォッチの標準であった。

本作を見て「小さい」と感じる方もいるかもしれないが、実際にフィッティングしてみると、かつての標準サイズであっただけあり、「しっくりくる」と感じる方も多いはずだ。ヴィンテージウォッチに慣れ親しんだ筆者は好印象であった。コントラストの高い文字盤は視認性が高くて不満がない。蓄光塗料などを持たないため暗所での視認性は低いが、多くのドレスウォッチでも同様なため、ここは割り切りたいところだ。
今回はトラッドスタイルの厚手のオックスフォードシャツと組み合わせた。シンプルなデザインであるので、ブロードシャツやシャンブレーシャツ、ニット類など何にでも合わせやすい。また、コンパクトであるため、袖への収まりも良い。
ケースのディテールにも注目
もう少しケースについて深掘りしよう。ベゼルは、丸みを帯びた凹凸の並ぶコインエッジタイプである。艶のある仕立てで、光の乱反射を生んで煌びやかさがある。コインエッジベゼルはこれまでのプレザージュの中では珍しいデザインで、クラシカルなテイストを加えるのに一役買っている。ケースの上面はヘアライン仕上げで、ケースサイドはポリッシュ仕上げである。また、ケースサイドはふっくらと膨らんだ曲線を持つシルエットであり、本作を柔らかく、優しい印象としている。
時計の仕上がり厚さは12.5mmと薄いとは言えないが、コンパクトさが感じられる実用的なサイズ感だ。手首の太い男性ならばコンパクトに、手首の細い男性は自身の体格にマッチしたモデルとして、女性にとっては存在感のあるサイズとして選ぶのにマッチしたケースサイズとなり、幅広いユーザー層に歓迎されることだろう。
組み合わされるのは、シックな印象のネイビーのレザーストラップ
ストラップは、深くて大きなシボを持つレザー製で、セイコー・ブルーに合わせてネイビーに染められている。かなり濃い色調で、スーツ生地の“濃紺”に近い。照明を落としたシーンではブラックに見えるほどで、シックでクラシカルな本作にマッチしている。
ホワイトとブルーという組み合わせは、“ホワイトのシャツにネイビースーツ”という鉄板コーデに通じ、ビジネスシーンやドレスシーンで主張しすぎず、しかし気品のある腕時計として活躍してくれるはずだ。この観点から「身に着ける人の挑戦をそっと後押しする1本」というセイコーの説明には説得力があると感じた。
コンパクトでも性能は本格派
搭載されるのは自動巻きのCal.6R51である。キングセイコー「KSK」の直径36.1mmのモデルにも搭載されており、パワーリザーブは約72時間である。金曜日の晩に主ゼンマイが十分に巻き上がっていれば、月曜日の朝にも駆動し続けている計算となり、利便性が高い。
時代を超えて通用する魅力を持つ、要注目なセイコー プレザージュの新作
筆者は本作に対して“クラシカル”という表現を使ってきた。クラシカルあるいはクラシックという言葉には、単に古めかしいという意味を超えて、“時代を超えて通用する定番や王道”という意味が含まれている。本作の直径36mmというサイズ感や、シンプルで上品な文字盤デザインは、時代を超えて通用する魅力を持っており、言葉の意味通りのクラシカルと評することができる。
さまざまな腕時計に触れてきた好事家だけでなく、腕時計に興味を持ち始めた方が初めての1本として選ぶのに好適な完成度を本作は持っており、2026年のうち、要注目の新作である。




