慎重なムードで幕を開けた今年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ。だが、各ブランドが独自の強みをより熟成し、言うなれば “滋味”にあふれた会場であった。小径化のトレンドが定着する中、名作の丁寧なブラッシュアップや精緻な装飾を凝らしたモデルが続々と登場。小ぶりなケースにメカニズムと美意識を凝縮した、真に価値ある腕時計がそろう実り多き年となった。時計有識者がセレクトした腕時計から、注目作トップ10を紹介しよう。

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの注目作
10位 ロレックス/オイスター パーペチュアル全般
25point / 4persons

自動巻き。SS×18KYGケース。142万8900円(税込み)。(問)日本ロレックス Tel.0120-929-570
ロレックスのオイスターケース誕生100周年を記念して発表された本作の41mmモデルは、随所に100周年を祝う意匠を取り入れている。日付表示なしでゴールドとステンレススティールのコンビネーションというのもまさにトレンドである。(名畑)
9位 ヴァン クリーフ&アーペル/ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ
28point / 2persons

自動巻き。18KRGケース。予価825万円(税込み)。10月発売予定。(問)ヴァンクリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906
2018年の前作よりも直径が42mmから38mmと小径化し、エナメルの色合いも非常に複雑かつ優雅。とても魅力的な腕時計だと感じています。こんな腕時計をさりげなく着用している人が目の前に現れたら、そのすべてに釘付けです。(後藤)
8位 H.モーザー/ストリームライナー・トゥーハンズ
30point / 2persons

自動巻き。SSケース。予価469万7000円(税込み)。(問)H.モーザージャパン株式会社 Tel.03-6807-5880
人気モデルの小径化モデルだが、それだけにとどまらない存在感がある。直径34㎜ケースにあえての2針はまさに現代のツボ。さらにダイアルにはフロスト仕上げのフュメダイアルを採用しており、その美しさはロゴがなくともH.モーザーだとひと目で分かる。ある意味でストリームライナーの完成形かも。(安藤)
7位 ヴァン クリーフ&アーペル/ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ
30point / 2persons

自動巻き。18KWGケース。予価2574万円(税込み)。6月発売予定。(問)ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906
技術、表現ともに素晴らしい。(篠田)
6位 A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア・アニュアルカレンダー
30point / 3persons

自動巻き。18KPGケース。要価格問い合わせ。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845
新開発のCal.207.1を搭載しており、カレンダー表示とムーンフェイズ表示はそれぞれに付与されたプッシュボタンで操作できるのに加え、10時位置のプッシュボタンで一括修正も可能。プッシュボタンはリュウズを引いた状態でないとロックが解除されないなど、実用をとことん考え抜いた機構が見事だ。(安藤)
5位 ショパール/L.U.C 1860
31point / 3persons

自動巻き。ルーセントスティール™ケース。421万3000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
まずキメ細かなギヨシェ文字盤が美しく、それが微妙にスモーキーなブルーにカラーリングされている点を高く評価したい。加えてグレーのシボ革製ストラップとも絶妙なマッチングである。(名畑)
4位 ブルガリ/オクト フィニッシモ
36point / 2persons

自動巻き。Tiケース。262万9000円(税込み)。(問)ブルガリ・ジャパン Tel.0120-030-142
筆者は「オクト フィニッシモ」という時計をかなり気に入っており、所有もしている。もともといい時計だが、新しい37mmサイズは、ひょっとして本コレクションの完成形ではないか。高級というより、上質に見える仕立ても今風だ。良い意味で気に障らない時計だと思う。(広田)
このサイズながら、立体的なケースデザインは健在。とても綺麗です。(篠田)
3位 パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ
38point / 2persons

自動巻き。SS×Ptケース。601万7000円(税込み)。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com
美しさと機能、独自性をそろえる時計で、今年のウォッチズ&ワンダーズでも大きく注目されたと思う。GMTラトラパンテ、ミニッツラトラパンテと同様の見た目であることも興味深い。シンプルな見た目が好きで「トンダ PFGMT ラトラパンテ」を愛用し、ミドーの「マルチセンタークロノ」を探している私には完全にツボでした。(後藤)
2位 ゼニス/G.F.J.
40point / 4persons

手巻き。タンタルケース。1122万円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861
復活した歴史的名機「Cal. 135」を搭載した「G.F.J.」。中でも新作のうちの1本はケースに注目の素材「タンタル」を使用、さらにダイアルには人気の半貴石からオニキスを採用するなど、今欲しいと思わせる要素が全部載せられている。(安藤)
半貴石ダイアルの表現力が素晴らしい。(篠田)
1位 カルティエ/サントス デュモン
51point / 4persons

手巻き。18KYGケース。予価858万円(税込み)。6月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
「ロードスター」の復活など、今年も話題に事欠かなかったカルティエ。この「サントス デュモン」は新開発のゴールドブレスレットが最大の特徴。1920年代のスペシャルオーダー品に着想を得たという15連ブレスレットは、それだけで主役になりうる。しなやかで装着感も心地よい。(安藤)
時計愛好家が憧れる伝説の名品。新作では細かなリンクの新しいブレスレットと硬質で渋いカラーのストーンダイアルを組み合わせることで、新たな魅力を獲得した。(名畑)
選考委員による選定モデルの詳細
後藤洋平(50歳) 朝日新聞編集委員
「夢かシンプルか、その両方か」
腕時計を担当する記者でありながら、歴の浅い腕時計コレクターでもあります。記者として夢のような新機構や装飾を見つめる目と、「もし自分が所有できるなら」という観点による、シンプルで美しいものを探す視点……つまりまったく別のベクトルが併存しており、毎回迷いながら、今回もそれぞれ両極端な時計に引かれています。
- パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ
- カルティエ/サントス デュモン(オブシディアンダイアル)
- グランドセイコー/マスターピースコレクション 手巻きスプリングドライブ SBGZ011
- ヴァンクリーフ&アーペル/ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ
- パテック フィリップ/セレスティアル、日昇・日没時刻 6105G
- ショパール/L.U.C 1860
- ゼニス/G.F.J. 18KYGケース
- ロレックス/オイスター パーペチュアル36(ジュビリーブレスレットモデル)
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール・クロノメーター・デイト・パワーリザーブ
- ウブロ/ビッグ・バン インパクト ワンミリオン
篠田哲生(51歳) ウォッチディレクター
「アクセサリー化する時計が ちょっと気になる」
骨太な本格派時計が好みなのだが、散々時計を買ってくると、ちょっと食傷気味なのも事実。変化球もね、と考えていたところに、アクセサリーとしての個性強めの時計たちが俄然気になり始めた。サイズは小さく、装飾はやや過剰。クワイエットラグジュアリーではなく、しっかりと個性を楽しみたい。大人は結構わがままなのだ。
- カルティエ/ベニュワール(クル ドゥ パリモチーフ)
- フレデリック・コンスタント/クラシック マンシェット
- ブルガリ/オクト フィニッシモ
- H.モーザー/ストリームライナー・トゥーハンズ 34mm
- ピアジェ/スウィンギン ペブル
- ヴァンクリーフ&アーペル/ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ
- エルメス/スリム ドゥ エルメス ポケット ROAAAAAR!ー
- ゼニス/G.F.J.
- シャネル/J12 GOLDEN BLACK 28MM
- ロレックス/オイスター パーペチュアル 34
安藤夏樹(50歳) 時計ジャーナリスト
「良作の一方で、驚きは少なかった」
小径化、半貴石ダイアル、ケース素材開発など、近年の流れから逸れない印象。小型化は単なる縮小ではなく新たな魅力の創出がキモだが、今年は成功したブランドが多かった。ダイアルやケースも同様で、ランキングのモデルは甲乙付け難い。一方、完全新作は少なく、アーカイブの洗練に加え、未来志向の新作を見たかった。
- IWC/ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー・セラリューム
- ゼニス/G.F.J.
- H.モーザー/ストリームライナー・トゥーハンズ
- ヴァンクリーフ&アーペル/ミッドナイト ユール ディシ エ ユール ダイヨール ウォッチ
- グランドセイコー/エボリューション9 コレクション スプリングドライブU.F.A. Ushio 300 Diver
- カルティエ/サントス デュモン Ref.CRWGSA0123
- シャネル/J12 COCO GAME
- ロレックス/オイスター パーペチュアル 36
- ショパール/L.U.C クアトロ スピリット 25 ストローマルケトリー エディション
- A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア・アニュアルカレンダー
髙木教雄(63歳) ライター
「各社が独創性を発揮し、個性を競う」
小径化やクラシック路線は続くが昨年ほど顕著ではなく、各ブランドの個性をより強く感じた。アイコンモデルの丁寧なブラッシュアップや新型ムーブメントに見るべきものが多く、スケルトンやメティエダール等の工芸的アプローチも試みられていた。豊富なバリエーションは新規顧客の開拓を促進する。今年の時計界の展望は明るい。
- ヴァン クリーフ&アーペル/ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ
- A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア・アニュアルカレンダー
- チューダー/ロイヤル 36mm
- パテック フィリップ/ゴールデン・エリプス 3738/100G
- カルティエ/サントス デュモン
- ショパール/L.U.C 1860
- ゼニス/G. F. J .(タンタルモデル)
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール・クロノメーター
- IWC/パイロット・ウォッチ・クロノグラフ “プティ・プランス”
- タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ
名畑政治(66歳) 時計ライター
「シンプルで美しく価値あるタイムピースを」
今年のW&Wの新作をザッと拝見したところ、小径化や薄型化のトレンドはもちろん継続中だし、日付表示なしというのも多くのメーカーに広まっていると感じた。やはり人々は小ぶりなケースにメカニズムが凝縮され、美しくて価値のあるものを求めているのだな、と実感する。例によってすべて同列、順位なし。
- カルティエ/サントス デュモン
- ショパール/L.U.C 1860
- クロノスイス/パルス GMT エナメル スカイゴールド
- ペキニエ/ロワイヤル パリ クロノ
- ロレックス/オイスター パーペチュアル 41
- ルイ モネ/1816
- オートランス/クベラ シリーズ1
- H.モーザー/ストリームライナー・ポンプ
- ユリス・ナルダン/スーパーフリーク
- レイモンド ウェイル/ミレジム ザ フィフティ
広田雅将(52歳)『クロノス日本版』編集長兼アートソルジャー
「今回はあえて〝滋味〟なモデルを選んだ」
不透明な市況を受けて、保守的な印象の強かった2026年のウォッチズ&ワンダーズ。というわけで、今回は底上げされた各社の定番に目を向けた。例外はタグ・ホイヤーとパルミジャーニ・フルリエのクロノグラフ。もっとも、ユニークな機構の代償として価格は安くない。
- ブルガリ/オクト フィニッシモ
- パルミジャーニ・フルリエ/トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ
- タグ・ホイヤー/タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ
- ジャガー・ルクルト/マスター・コントロール・クロノメーター
- カルティエ/ロードスター
- A.ランゲ&ゾーネ/サクソニア・アニュアルカレンダー
- ヴァシュロン・コンスタンタン/オーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナルポイント
- エルメス/エルメスH08 スケレット
- パテック フィリップ/ゴールデン・エリプス 3738/100G
- チューダー/ロイヤル
ランキングの集計ルール
●選考委員は、各号のテーマに沿った腕時計を10本選び、順位をつける。
●選考委員ひとりあたりの所持ポイントを110点とし、これを1位20点、2位18点……10位2点として選考モデルに振り分ける。
●選考された時計が順位なしの場合は、所持ポイントを10等分して、各モデルに11点を与える
(選考本数が10本に満たない場合でも、1モデルあたり11点とする)。
●獲得点数が同点となった場合は、選考者数の多いモデル、その中で選考順位の高いモデル、プライス設定の低いモデルの順で優位とする。
●最低有効得票数を2票とする。



