正式名称はジン特殊時計会社。1961年、ドイツ空軍のパイロットであったヘルムート・ジンがフランクフルトにて創業した。創業当初からパイロット用腕時計の製作を行っていたが、事業の中心は飛行機のコックピットに搭載する時計であった。85年に「140.S」が宇宙飛行士の個人装備品として使われると、92年、93年にも同社の腕時計が宇宙飛行士に着用されることとなった。94年にローター・シュミットが経営を引き継ぐと、97年にはミッションタイマー「EZM1」「EZM2」を発表し新たな一歩を踏み出す。
以降独自のテクノロジーを搭載した時計を製作し、2005年にはドイツの船舶や潜水器具の認定機関DNV GL(旧ゲルマニア・ロイド)によって、時計ブランドとして初めて欧州潜水器具規格に基づく耐圧性能の認定を受けた。また同社が12年に定めたパイロットウォッチの技術規格(TESTAF)は、16年にドイツ規格協会が策定したパイロットウォッチ規格「DIN8330」のベースとなっている。同社はシンプルなパイロットウォッチである「556」や両回転式ベゼルを備えたパイロットクロノグラフ「103」をはじめ、ドイツ警察特殊部隊用に開発された「EZM3」等、各種用途において確実な性能を発揮するラインナップを揃える。また、80,000A/mの耐磁性能を誇るマグネチック・フィールド・プロテクション、−66℃まで粘性を維持し+228℃まで揮発しないジン特殊オイル、ドライカプセルとプロテクトガス、EDRパッキンによるArドライテクノロジー、浸炭加工によって1200ビッカーズ以上の硬度を持たせるテギメント、ケース内に特殊なオイルを封入して5000mという高い防水性能を実現するハイドロといった独自技術はジン・テクノロジーと呼ばれ、実用性を重視する同社の時計に搭載されている。