【インタビュー】ノモス・アメリカ副社長 "メルリン・シュヴェルトナー(Merlin Schwertner)"

FEATURE本誌記事
2019.08.31
三田村優:写真 Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

立役者が明かすニッチからブランドへの変化をもたらした理由

 ノモス グラスヒュッテ創業者であるローランド・シュヴェルトナー。その後継者が、メルリン・シュヴェルトナーである。彼と会ったのは確か5年前だが、今や同社の副社長になっていた。

メルリン・シュヴェルトナー

ノモス・アメリカ副社長。
1985年、スペイン生まれ。スペインのESADEを卒業後、バレアレス諸島大学で経営学を学び、ノモスでインターナショナルセールスに従事。2015年から現職。創業者ローランド・シュヴェルトナーの後継者である彼は、いち早くオンラインビジネスに着手したほか、アメリカのみならず、全世界のセールスを統括する。「私たちのブランドはバジェットがあるわけではない。だから、消費者の話題にしてもらえるような時計作りを続けたい」。

 彼曰く「今回の来日の目的は、19年のつながりのある大沢商会とリテーラーに会い、新作へのリアクションを聞くため」とのこと。5年前のノモスは、ドイツと日本では有名だったが、他の国ではまだまだ認知度が高くなかった。しかし今や、ノモスは世界的なブランドに成長を遂げた。

 拡大するポイントは3つだ。まずは海外進出。今や香港や上海にもノモスのブティックがある。2015年にはカナダに進出。アメリカと中国でもビジネスを伸ばしている。そしてもうひとつが、オンラインビジネスへの取り組みだ。
「ノモスには機能的で分かりやすいデザインとプライスポイントという魅力がありました。加えて、大きなバジェットを持っていないことが強みでした。おそらく、時計メーカーでオンラインビジネスを最初にやったのはノモスだと思います。2012年か13年だと思います。もともとはビジネスが目的ではなかったのです。コミュニケーションを図るためのツールでした。インターネットがあるから、カスタマーがすべて見られるようにしよう。それが始まりでした」。売り上げを作るためのツールではない、と彼は強調するが、関係者によると、ノモスのオンライン比率はかなり高い。

 そしてもうひとつが、商品のバリエーションだ。「1990年にノモスが設立された時、限られたコレクションしかありませんでした。でも今はムーブメントも改善されましたし、ラインナップも増えました」。

 今年は薄型のスポーツウォッチとして、「タンジェント スポーツ」を加えた。一見スポーツウォッチには見えないが、防水性能は300mもある。「新しいDUW 6101を搭載しています。薄くて日付のクイックセッティングが付いています。このムーブメントを生かすべく、薄い防水時計に仕立てました」。加えてこの時計には、ノモス初のブレスレットが付いている。筆者の好みを言うと遊びがなさ過ぎるが、アジアの消費者には歓迎されるだろう。

 昔から面識があったこともあり、取材中、ノモスの製品に関して、改善すべき点をコメントした。驚いたことに、彼はすべて話を聞いただけでなく、ほかにもアドバイスはないのか、と聞いてきた。確か5年前も、彼は同じように改善点を教えてくれと尋ねてきた。ノモスが世界的なブランドになったのも、むべなるかな、ではないか。

タンジェント スポーツ ネオマティック 42 デイト

ノモス グラスヒュッテ タンジェント スポーツ ネオマティック 42 デイト
スポーツウォッチらしからぬ薄型モデル。特殊なガスケットの採用により、ベゼルを薄くすることにも成功した。ブレスレットは、往年のポルシェデザインを思わせるほどよく出来ているが、左右の遊びに乏しい点は残念。自動巻き(Cal.DUW 6101)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42.0mm、厚さ10.9mm)。30気圧防水。58万円。


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