【インタビュー】スイス・オメガ社 社長兼CEO「レイナルド・アッシェリマン」

FEATURE本誌記事
2019.10.21
広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

キャリバー3861はスピードマスターのスタンダードになる

「CEOに就任して以降、オメガの歴史的な側面に目を向けてきました。スピードマスター プロフェッショナルはオメガにとってのピラーです。ですが、搭載するキャリバー861系は、現行オメガの中で最も古いムーブメント。そこで見直しをかけました。マスター クロノメーターになったキャリバー3861は、モダンヴィンテージであり、未来を示す存在ですね」

 一方で、歴史的な側面は、ついに復活を果たしたキャリバー321に担わせるという。オメガCEOのレイナルド・アッシェリマンは断言する。「321を載せたムーンウォッチは未来に残します」。そこで気になるのは、3861を載せたムーンウォッチの量産化と、現行モデルが搭載する1861系の今後だ。

スイス・オメガ社 社長兼CEO。
1970年、スイス生まれ。サンクト・ガレン大学を卒業後、投資・財務コンサルタントを経て、96年にオメガ入社。2000年にスペインのブランドマネージャーに昇格、01年にはセールスとリテールなどの責任者となる。13年に経営会議メンバーとなった後、16年6月に副社長から昇格して現職に就任した。スイス時計協会(FH)の理事も兼ねる。20年以上オメガに在籍するスウォッチ グループのいわば“秘蔵っ子”である。

「3861はムーンウォッチのスタンダードになります。発表初年ということもあり、2019年は限定モデルにのみ搭載しました。アーキテクチャーを見直して、改良を加えたら、量産に堪えうる安定性を得るはずです」。彼は明言しなかったが、1861を載せた現行モデルは、今後大きく縮小されるかもしれない。

「量産版の3861はオメガらしい時計になるでしょう。大事なのはバリュー・フォー・カスタマー。性能を上げたからといって、法外な価格は付けません」。普通、時計メーカーのCEOは価格のことを言いたがらない。しかし、アッシェリマンは一貫して「質に対してお買い得」を強調する。彼はバリュー・フォー・カスタマーの例として、やはりスピードマスターを挙げた。

「以前、ノーマルモデルはトランスパレントバックを持っていませんでした。しかし、ムーブメントを見せるために仕上げを良くしました。受けの仕上げを改善したのです」。確かに新しい3861は、ダイヤモンドカットを強調した面取りを持っている。個人的な好みを言うとモダンに過ぎるが、これもまた、彼の述べる「ネオ・ヴィンテージ」の表れだろうか。

 意外だったのは、3861搭載機が、以前と比べてはるかにまともな装着感を持っていた点である。

「私たちにとって重要なのは人間工学的であること、です。したがって、ブレスレットを改良しました。理由は装着感の改善です。私たちは、かさばる分厚い時計は作りたくないのです。デザインによって快適さを作り上げていきたいのです」

 今や順風満帆とも言えるオメガ。しかし、アッシェリマンは抜かりない。彼は今後、重要になる3つのポイントを挙げた。

「スタッフへのトレーニング、時計の見せ方、そして何より、私たちの情熱をできるだけ見てもらうことですね」

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