オリス流レトロモダンを味わうダイバーズウォッチ、「ダイバーズ65 クロノグラフ」の着用レビュー

FEATUREWatchTime
2020.06.24

1965年、オリスは100m防水のケースに逆回転防止ベゼルと蓄光性の大きなインデックスを備えた、当時としては非常にモダンなダイバーズウォッチを発表した。これに着想を得て50年後に登場した「ダイバーズ65」は、現在のレトロトレンドの人気も相まって大きな成功を収めた。そして2020年、シリーズ2作目となるクロノグラフモデルが追加投入された。レトロトレンドに沿いながらも、現代的な要素が随所にちりばめられた仕様だ。今回はこの新作「ダイバーズ65 クロノグラフ」の魅力を、着用レビューと併せて掘り下げよう。

Originally published on watchtime.com
Text by Martina Richter

ダイバーズ65 クロノグラフ

自動巻き(Cal.Oris 771/SW 510ベース)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径43.0mm)。10気圧防水。SSブレスレット。50万6000円(税別)。


1965年のオリス初のダイバーズウォッチをベースにした「ダイバーズ65」

 1965年のオリス初のダイバーズウォッチをベースとし、2015年に誕生した「ダイバーズ65」。レトロモダンな外観を備え、シンプルな3針表示からクロノグラフ搭載機のほか、再生プラスティック製のストラップを組み合わせたモデルなど、いくつかのバリエーションを展開してきた。またアメリカ海軍史上初のアフリカ系アメリカ人であり、義足で初のマスターダイバーになったカール・ブラシアに捧げた限定モデルも2018年に2作目が作られた。
 オリスが著名人に敬意を捧げた時計を製造することはよく知られており、また海洋環境保全やその他の慈善活動に熱心であることも同様である。

オリス ダイバーズ65 クロノグラフ

視認性の良い、幅の広い針とくっきりとしたアワーマーカー。

「ダイバーズ65」のケース素材の多くにはブロンズが採用されてきた。新作の「ダイバーズ65 クロノグラフ」では、ブロンズはブラックアルミニウムインレイにバー状のミニッツスケールが与えられた逆回転防止機能付きベゼルの、外周部分のみに用いられている。
 ベゼルの回転は1周120刻みで、ダイアル外周にあるミニッツに合わせて調整するのには慣れが必要だ。またドーム型風防の縁の湾曲部分は、反射によって文字盤外周のローズゴールドの目盛りの読み取りを妨げる瞬間がある。

 湾曲のある風防は過去のモデルを反映したもので、時計のレトロ感を高めるひとつの要素でもある。1960年代の風防はプラスティックであったが、現在のものは傷に強いサファイアクリスタル製で、無反射加工が施されている。

 ケースの直径はオリジナルの36mmから43mmに大型化され、素材はクロムコーティングが施された真鍮からステンレススティール製になっている。防水性は100mで、現在のダイバーズウォッチの主流である200mまたは300m防水からすると若干低い性能だ。

 もちろんオリスには、現代風のダイバーズウォッチが製造可能かどうかを示す必要はないし、疑念もすぐに払拭される。例えばオリスの「アクイス」「プロダイバー」といったモデルを見れば、両者ともに高い防水性を誇るプロフェッショナルダイバーズ向けの時計で、さまざまな革新要素が組み込まれていることが分かる。ダイバーズ65の防水性が100mという事実は、歴史に捧げられたオマージュという点で説明がつき、今回のコレクションでは受け入れられるだろう。たとえ「ダイバーズ」という名称が、ケースのより高い防水性を期待させるものであってもだ。入浴、水泳、シュノーケリング、浅瀬でのダイビングにダイバーズ65 クロノグラフ着用はなんの問題もない。

 ダイバーズ65 クロノグラフは、陸においても快適な相棒である。ブラックの文字盤には、このモデルの特徴である幅広の針とくっきりしたインデックスが際立っている。表示にはイエローのスーパールミノバがたっぷりと塗布され、かつての自発光塗料であるラジウムを塗布したヴィンテージウォッチの雰囲気を醸し出している。この蓄光素材が日中は時計のレトロ感を演出し、暗所では明るいグリーンとして浮かび上がる。サブダイアルのスモールセコンドの針も同様に蓄光処理され、これによりムーブメントが動いているかどうかが確認できる。クロノグラフの30分積算計や、ベゼル上のドットも蓄光処理されている。センターのクロノグラフ秒針のみが暗所では沈み込むのだが、ダイバーにとっては細かい秒単位の時間計測よりも、分表示の方がずっと重要であるということは周知の事実だ。

オリス ダイバーズ65 クロノグラフ

「古いラジウム」調の蓄光塗料が時計のレトロ感を高め、暗所での視認性も担保している。


ブロンズ、レトロ、バイコンパックスは現在のトレンドを反映している

 クロノグラフ駆動中、分積算は3時位置のカウンターで読み取ることができる。この30分積算計は少し奥まっていて、アントラサイトカラーの目盛りが配されている。スモールセコンドのサブダイアルも同様の仕様で9時位置に配されている。

 横ふたつ目のサブダイアルはバイコンパックスと呼ばれる配置であり、レトロ調と同様に現在のトレンドのひとつとなっている。レトロでバイコンパックスという組み合わせは過去を想起させるのに完璧な要素だ。またノンデイト、オリジナルモデルと同じねじ込み式リュウズ、その脇を固めるクロノグラフを操作するプッシュボタンといった点でも過去への忠実さはより確かとなる。

 リュウズのねじ込みは極めて容易で、リュウズもつまみやすく時刻調整しやすい。ムーブメントは、オリスの平均的な精度を備えるセリタSW 510をベースとした自動巻きキャリバーOris 771だ。ソリッドケースバックに隠れて見えないが、オリスの典型的なレッド・ローターを搭載している。歩度計測では日差の最大値が+約10秒となる位置があった。

ドーム型サファイアクリスタル製風防、ブロンズとアルミニウムが組み合わされたベゼルは、レトロとモダンの融合となっている。

 ダイバーズ65 クロノグラフにはカーフレザーストラップまたはステンレススティール製ブレスレットが用意されており、ステッチの効いたレザーストラップはバックルと合わせてそのレトロ調の様相を強くし、ステンレススティール製ブレスレットはスポーティーでモダンな魅力にあふれている。しなやかな作りのブレスレットは、片開きのフォールディングバックル仕様だ。ブレスレットの長さ調整は、リンクがネジ留めではなくピン留めのため少々厄介である。


総評

 レトロ調の時計を探している人にとって、オリスのダイバーズ65 クロノグラフは魅力的な選択肢となるだろう。願わくば、姿勢差誤差の解消や、容易なストラップ交換方法などを今後オリスが採用すればさらに喜ばしいことである。


技術仕様

リファレンスナンバー: 771 7744 4354 8 21 18
機能: 時、分、スモールセコンド、クロノグラフ(センタークロノグラフ秒針、30分積算計)、ベゼルは片方向にのみ回転
ムーブメント: セリタSW 510をベースとしたキャリバーOris 771、自動巻き、2万8800振動/時、27石、ゴールドプレート・ニッケル製テンプ、ニヴァロックス製ヘアスプリング、耐震軸受け(インカブロック使用)、パワーリザーブ約48時間、直径30.0mm、厚さ7.90mm
ケース: ステンレススティール×ブロンズ製ケース、ドーム型サファイアクリスタル製風防(内側に無反射加工)、100m防水
ストラップ&バックル: ステンレススティール製片開きフォールディングバックル付属のステンレススティール製ブレスレット、もしくはカーフレザーストラップ
サイズ: 直径43.0mm、厚さ16.44mm、重量162.0g(実測値)
価格: 50万6000円

※価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。


精度安定試験

(秒単位日差、完全巻き上げ時/24時間後)
着用時: +7.2
文字盤上 +5.3/+8.4
文字盤下: +6.1/+8.7
3時上: +10.2/+11.6
3時下: +7.5/+12.3
3時左 +3.7/+7.3
最大姿勢差: 6.5/5.0
平均日差: +6.6/+9.7
平均振り角:
水平姿勢: 314゜/298゜
垂直姿勢: 292゜/270゜



Contact info: オリスジャパン Tel.03-6260-6876