シチズン時計のカンパノラが放つ抗しがたい魅力。おすすめと併せ解説

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2021.03.25

シチズン時計は光発電エコ・ドライブやデュラテクトなど、実用性を高める時計製造技術に長けている。カンパノラはシチズン時計の高度な技術を結集した上で、哲学的な命題に触れる希有なブランドだ。カンパノラの宇宙を手にするような魅力に触れよう。

カンパノラ

シチズン時計を代表するブランドのひとつ「カンパノラ」。「時を愉しむ」をコンセプトとし、2000年に誕生した。


シチズン時計とカンパノラの成り立ち

近年のシチズン時計は、薄型化や高い精度を追求したクォーツムーブメントの製造技術を極めている。また機械式ムーブメントにおいても、スイスのラ・ジュー・ペレ社と協業することで、その製造のノウハウを学び、品質を高めている。

一見するとこの技術追求の哲学とは相容れない、異色のコンセプトで作られるのがカンパノラだ。芸術的かつ哲学的な、カンパノラの成り立ちについて見ていこう。

Cal.2035やCal.8826、Cal.0100で名をはせた高いクォーツ技術

シチズン時計はクォーツ式時計の巨頭として知られるが、現在の地位を決定付ける契機となったのは、1980年に始めたムーブメントの外販事業である。

81年に世界市場へ売り出したクォーツ式ムーブメントCal.2035は瞬く間に時計業界を席巻し、世界標準となっていく。99年にはCal.2035の累計生産数量は17億個にも達し、ギネス記録に認定されるに至った。

2016年には厚さわずか1mmのCal.8826や、18年には自律型で年差±1秒という高精度なCal.0100を発表するなど、その技術力は進化し続けている。

複雑機構をクォーツで実現したカンパノラ

世界で最も普及しているCal.2035シリーズがそうであるように、クォーツムーブメントの機能は3針を基本とし、実用性を重視したシンプルな設計を持つ。

しかし、シチズン時計が蓄積したムーブメント製造技術は、クォーツ式時計に機械式時計然とした複雑機構の搭載を可能とした。

2000年にスタートした「カンパノラ」は、クォーツ式時計の認識を一変させる複雑時計のブランドである。

ミニッツリピーターやパーペチュアルカレンダーなど、機械式時計でも採用例の少ない高度な複雑機構を、コンプリケーションに向かないと考えられていたクォーツ式時計で実現したのだ。


シチズン時計 カンパノラの魅力

カンパノラとは、南イタリア・カンパニア地方で紀元前5世紀に鐘で時刻を知らせた「カンパノラ・ベル」の逸話に由来する名だ。世界で初めて人々に時刻を伝えたとされる鐘楼には、時間に関する複数の意味が重ねられる。カンパノラの魅力を探っていこう。

「宇宙」を想起させる独創的デザイン

時計とは何か、あるいは時間とは何かを突き詰めれば、天文学や宇宙につながる。

カンパノラはダイアルを多層構造とし、風防を歪みのないドーム型にするなどして、まるで手元に小宇宙があるかのような「宙空の美」を表現している。

カンパノラ Ref.BU0020-62A

見返し部にリングソーラーセルを採用する立体的な文字盤に、ドーム型風防を組み合わせて奥行き感を巧みに表現するエコ・ドライブ搭載のRef.BU0020-62A。

和文化への敬意とこまやかな配慮

時間は過去から現在、未来へと流れ、時間を重んじることは歴史や伝統を連綿と受け継いでいくことにつながる。日本から発信されるカンパノラのダイアルには、日本の伝統技術である「漆」を施すものが多くある。

会津漆器の大家である伝統工芸士・儀同哲夫(ぎどう てつお)氏による文字盤をはじめとし、幾重にも漆を塗り重ねて唯一無二の宙空の美が表現されている。

カンパノラ Ref.NZ0001-04E

儀同哲夫氏が作り上げた漆塗りの文字盤を採用する「彪目金(あやめきん)」。特徴的な彪紋柄は黒漆地に小さな種を並べて描かれている。その上に金を蒔き、何層にも漆を塗って研ぎ出している。Ref.NZ0001-04E。自動巻き(Cal.Y513)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SS(直径42mm、厚さ14mm)。日常生活防水。限定80本。95万円(税別)。

手が届きやすい価格ながら高い品質

カンパノラのダイアルには0.0001mm以下の凹凸まで表現する電気鋳造も用い、ワニ革ストラップにはスモールクロコダイルの「竹斑(たけふ)」のみを使用するなど、細部まで徹底して品質を追求している。

さらに搭載する複雑機構はミニッツリピーターやパーペチュアルカレンダー、スイス老舗メゾンの機械式時計であれば1000万円以上でもおかしくない内容だ。

にもかかわらず、カンパノラは30万円ほどから130万円程度という、シチズン時計ならではの、良心的かつ戦略的なプライス設定である。


シチズン時計 カンパノラのおすすめシリーズ

カンパノラには5つのコレクションがあり、いずれもシチズン時計の高度な技術の一面や、宇宙を見る視点の違いが表現されている。ここでは3種類に絞ってコレクションの特徴を紹介しよう。

複雑機構をクォーツで実現 グランドコンプリケーション

カンパノラ 焦香

グランドコンプリケーションを搭載し、漆で日本の伝統色「焦香(こがれこう)」を彩ったRef.AH4081-09Wの「焦香・集(こがれこう・すだく)」。クォーツ(Cal.6772)。SS+デュラテクトα(直径43.0mm、厚さ16.5mm)。日常生活防水。カーフストラップ。限定250本。40万円(税別)。

カンパノラは高度な複雑機構を特徴とする「コンプリケーション」コレクションを擁するが、中でも「グランドコンプリケーション」シリーズは従来のクォーツ式時計では考えられない複雑さである。

搭載するのはパーペチュアルカレンダー・ミニッツリピーター・ムーンフェイズ・クロノグラフだ。

カンパノラのパーペチュアルカレンダーは、2100年2月28日までの月末の日付修正、うるう年の修正が不要な仕様である。

シチズン時計の代名詞的機能搭載 エコ・ドライブ

カンパノラ Ref.BU0020-62A

「天彩星(あまいろほし)」と名付けられたエコ・ドライブ発電搭載のRef.BU0020-62A。12時位置のサブダイヤルは電気鋳造で太陽の輝きを、6時位置のサブダイヤルは螺鈿で漆黒の空間に輝く星を表現している。光発電エコ・ドライブ。SS(直径43.5mm、厚さ14.8mm)。日常生活防水。31万円(税別)。

「エコ・ドライブ」コレクションは、シチズン時計が1976年に開発した画期的な光発電技術エコ・ドライブを搭載している。

蛍光灯のわずかな光でも発電し、フル充電時から約半年間は暗所で駆動し続けるほどタフだ。カンパノラが採用するリング状のフレキシブルソーラーセルはダイアルデザインに干渉しない。

電気鋳造によって太陽の輝きを表現した12時位置のサブダイアルや、漆加工とムーンフェイズによる宇宙の表現も秀逸である。

「宇宙」をイメージした真骨頂 コスモサイン

カンパノラ コスモサイン Ref.CTV57-1231

北緯35度の全天星座を表示する「コスモサイン」のRef.CTV57-1231。4.8等星以上のこうせい1027個をはじめ、アンドロメダ銀河やオリオン大星雲などの星雲・星団を166個をレイアウトし、恒星の表面温度を4色で表している。クォーツ(Cal.4398)。SS(直径44.0mm、厚さ14.5mm)。日常生活防水。28万円(税別)。

「コスモサイン」は、月齢盤あるいは北緯35°全天星座表示をダイアル上に表現した、天体の動きをリアルタイムで把握できるコレクションである。

月齢盤は24時間盤とは異なる速度で回転し、太陽と月の位置や、太陽の出没時刻まで表示する。星座盤モデルでは、4.8等星以上の恒星1027個、星雲・星団166個まで表示するモデルもあり、精緻の限りを尽くしたダイアルが美しい。

星空が見えないときでも常に手元で天体観測を行えるような、「宇宙を手にする」心地すら味わえるコレクションである。


人を引き付けるカンパノラの独創的な美しさ

クォーツウォッチの開発に長けたシチズン時計は、時計製造にとって永遠の命題である時間や宇宙を、カンパノラを通じて表現する。

グランドコンプリケーションはもちろん、エコ・ドライブやコスモサインも、シチズン時計あるいはカンパノラだからこそ到達できた解答だ。カンパノラを手にすれば、腕時計の新しい価値や美しさに触れられるだろう。



Contact info: シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807


カンパノラ コスモサインで星空を手元に。独創性の高いシチズン

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