【インタビュー】ショパール共同社長「カール-フリードリッヒ・ショイフレ」

FEATURE本誌記事
2020.11.02
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)

ショパールのヒット作となったアルパイン イーグル。プロジェクトを推進したのは、共同社長のカール-フリードリッヒ・ショイフレの息子であるカール-フリッツだった。息子との共同作業はカール-フリードリッヒにも良い影響を与えたという。


ショパールの強みは時間をかけることと家族経営のスピード感

カール-フリードリッヒ・ショイフレ

カール︲フリードリッヒ・ショイフレ
ショパール共同社長。1958年、ドイツ生まれ。15歳でスイスに移住し、HECローザンヌ校に入学。卒業後、ショパールに入社。1988年にミッレ ミリア コレクションをスタートさせたほか、96年にはフルリエに工房を設立し、自社製ムーブメントである「L.U.C」の製造を開始した。ポートレートの右に見えるのは、アルパイン イーグルを共同製作した、ショパールのオーナーファミリー4代目を担う予定のカール-フリッツ・ショイフレである。

「約5年前、息子が机の引き出しにあるサンモリッツを発見しました。数日間、身に着けた後、彼はその本質や特徴を失うことなく、ヒネリを加えて再解釈できると確信したようです。そして、彼は私を説得しに来ました。正直なところ、サンモリッツとはアイコンであり、そのまま保存する必要があると思っていたので、最初はヒネリを加えることに興味がありませんでした。そこで、カール-フリッツは私の父であるカールに助けを求めたのです。その後、息子は祖父と一緒に最初のプロトタイプを製作し、私に紹介しに来ました。非常に良い議論とともにね。注意深く聞いて、私は確信したのです。これがプロジェクトの始まりですね。私たちは、アイコンの復活を誇りに思っています」。息子との対話の中で、彼はいろいろな学びを得たようだ。

「息子とは世代が違いますが、意見の交換はできると思いましたね。鍵はシンプルに聞くこと、ですね。そして、リラックスした雰囲気で聞くこと」。対して、息子のカール-フリッツはこう述べる。「父には、時計作りには時間をかけろ、と言われました。ですから、自分でもテストをしました。ルーセント スティール A223の品質をチェックするため、日常使いはもちろん、マウンテンクライミングに持っていきました」。

 正直、5年もの期間をかけて新製品を開発できるのは、ファミリー企業ならではの強みだ。しかし、時間のかかる時計製造と、情報化時代のスピード感は、ますます乖離しつつある。整合性をどう取るのか?

「ショパールの強みのひとつは、製造の二分法です。私たちは、職人が優れた作品を製作し、達成するために必要な時間を与えます。一方で、家族経営のメゾンであることで、業界他社と比べて早く反応することができるのです」。では、コロナ禍の影響をどう乗り切る予定なのか?

「コロナウイルスのパンデミックは、私たち人類に非常に大きな打撃を与えました。しかし、すべての主要な危機が創造性を生み出したとも言えるでしょう。この点で、この世界的な災害はプラスの影響を与える可能性があると確信しています。こういった時代にあって、人々は製品がどこから、どのように、誰によって作られたかに対して特に敏感であると感じています。そこで、メゾンのアルチザンにスポットライトを当てるために、時計とジュエリーのワークショップの扉を開くことにしました」

アルパイン イーグル XL クロノ

ショパール 「アルパイン イーグル XL クロノ」
ショパールのラグジュアリースポーツモデルに加わったクロノグラフ版。ムーブメントは「L.U.C クロノワン」用のムーブメントを改良したもの。スポーツモデルのため、あえてヴァリナーテンプは使っていない。自動巻き(Cal.Chopard 03.05-C)。45石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。ルーセント スティール A223(直径44mm、厚さ13.15mm)。100m防水。220万円。



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