2年間のみ販売された幻のクロノグラフ。その復刻モデルをレビュー/ブローバ「クロノグラフA “サーフボード”」

FEATUREWatchTime
2021.01.12

かつてNASAから依頼を受けて、ブローバが開発したクロノグラフウォッチ、コードネーム「クロノグラフA」。ダイアル中央に配された特徴的なカラーリングによってサーフボードの愛称で親しまれた同作が、2020年に再登場されることとなった。今回は復刻されたブローバ「クロノグラフA “サーフボード”」よりセリタSW510を搭載する限定モデルを、WatchTimeのマーク・ベルナルドが着用レビューする。

クロノグラフA “サーフボード”

自動巻き(Cal.SW510)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ48時間。SS(直径38.5mm、厚さ16.7mm)。20気圧防水。世界限定350本。30万円(税別)。
Originally published on watchtime.com
Text by Mark Bernardo
2021年1月12日掲載


ブローバ「クロノグラフA “サーフボード”」

 ブローバのアーカイブシリーズはデジタルウォッチのパイオニア的存在「コンピュートロン」から、特徴的な深海ダイバーズ「オーシャノグラファー “デビルダイバー”」に至るまで、ブランドのカルトクラシックなピースを掘り起こしている。このコレクションに加わった最もカラフルで遊び心にあふれ、レトロ調の雰囲気を色濃くあしらえた「クロノグラフA “サーフボード”」と長く過ごす機会を最近得ることができた。

 サーフボードを連想させるブルーに彩られた楕円が3時と9時位置のサブダイアルをつなげているデザインから、風変わりなニックネームが与えられた「クロノグラフA」は、1970〜71年の2年間だけ生産されたクロノグラフだ。

クロノグラフA “サーフボード”

 ヴィンテージ調の外観を持つモデルの市場はブームに沸き返っているが、面白いのは復刻版が成功するかに、必ずしもオリジナルの発売時に商業的大成功を収めているかは必要とされていない点だ。特に「クロノグラフA “サーフボード”」のレトロ的魅力は否定しようがなく、今回レビューする機会を得た350本のリミテッドエディションは、今回日本で展開される新作全3モデルのうち唯一、機械式の自動巻きムーブメントを搭載している(他の2モデルはクォーツムーブメントを採用しており、ケース直径が2mm大きく、現代的な色使いとなっている)。

 クロノグラフA “サーフボード”のステンレススティール製クッションケースは直径が38.5mmで、存在感あるカラフルなベゼルが強い個性を放っている。ケース表面は全体的にサテン仕上げが施されており、カーブしたラグのみポリッシュ仕上げが与えられている。ケースサイドから見るとしっかりと厚みがあるのが分かり(厚さ16.7mm)、ベゼルの上をわずかにドーム型無反射加工サファイアクリスタル製風防が覆っている。

クロノグラフA “サーフボード”

 リュウズとクロノグラフプッシャーの表面も同じく艶ありのポリッシュ仕上げとなっている。リュウズには刻みが入っており、ケースにねじ込まれている。指でつまむにはどちらかというと小さいが、それで困ることはない。プッシャーはオリジナルモデル発売時に一般的であったマッシュルーム型で、指でソフトに、しっかりと押し込む必要がある。2時位置のプッシャーでオレンジ色のセンタークロノグラフ針をスタート/ストップでき、4時位置のプッシャーで零位置に帰針させる。


見所の多い文字盤ディテール

 ブローバがベージュと表現する独特のクリームカラーの文字盤には、70年代のオリジナルモデルから引用したディテールが散りばめられている。文字盤外周側から見ていくと、当時の多くのヴィンテージクロノグラフで採用されたブラックプリントのタキメーターがあるが、文字盤とケースサイズとの兼ね合いで非常に小さいサイズである。アプライドされたインデックスはレクタンギュラーで、僅かに持ち上がったセンター部分にスーパールミノバが塗布されている。12時と6時のマーカーは若干長く、3時と9時位置には、ダークブルーの“サーフボード”とふたつのスモールダイアルに場所を奪われているため、存在しない。

クロノグラフA “サーフボード”

 オフホワイトの文字盤上のオレンジの針や、ブルーサーフボード上の風変わりな形の小さなホワイトの針、レッド・ホワイト・メタリックを組み合わせたベゼルなどの多彩な色使いと、明るいグリーンの蓄光塗料、まさにヘッドを魅力的なものとしている。

 時分針はホワイトのバー型で、先端は前述のクロノグラフ針と同様オレンジに色付けされており、アワーマーカーと同じ蓄光性のストライプが入っている。9時位置のサブダイアルは秒針、3時位置のサブダイアルはクロノグラフの30分積算計だ。ふたつのサブダイアルにはホワイトの数字とインデックスが採用され、一風変わったボトル型またはパドル型とも呼べるホワイトの針が組み合わせられている。ここでも凝縮された時計のサイズのため、ベストな視認性を誇るとは言い難いが、この時計で重要なのはヴィンテージらしさであり、その良さがデザインにしっかりと受け継がれている。

クロノグラフA “サーフボード”


セリタのSW510を搭載

 サンバースト仕上げ以外に装飾がされていないねじ込み式のソリッドケースバックには、ブローバのロゴとリミテッドエディションのナンバーがエングレービングされ、内部にはセリタ製SW500-1をベースとした自動巻きCal.SW510 BH bが搭載されている。SW500およびSW510は汎用クロノグラフムーブメントとして有名なETA7750の代替として設計されたものである。

 レトロ調外観を持つブレスレットのコマは表面がサテン仕上げ、サイドがポリッシュ仕上げとなっている。ブレスレットを手首に留めるのは、ステンレススティール製ダブルフォールディングクラスプで、両サイドのしっかりとしたボタンで外れるようになっている。

クロノグラフA “サーフボード”

 ブローバのその他のアーカイブコレクション同様に、クロノグラフA “サーフボード”は、その細部に至るまで存在感がある。ブローバの豊かな歴史からタイムピースを掘り起こす姿勢の継続性を示し、まったく新しい現代の顧客層に訴求する。今回の場合は、古いサーフボードにワックスがけをして、まったく新しい波に乗るようなものであろう。


Contact info: ブローバ相談室 Tel.0570-03-1390