オメガ「シーマスター 300」の魅力とは? 歴史と特徴を解説

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2024.04.21

オメガの人気モデル「シーマスター 300」は、初期型の復刻版として発表されたモデルだ。初代のヴィンテージ感を失わず、しかし現代オメガらしい優れた性能を備えており、幅広い層の人気を集めている。本記事では、そんなシーマスター 300の特徴や歴史を解説する。


オメガ屈指の人気作「シーマスター 300」の特徴

2014年、オメガのコレクションに「シーマスター 300」が加わった。このコレクションは、半世紀以上の時を経て復活した本格ダイバーズウォッチである。まずは、モデルの基礎知識と特徴を押さえておこう。

初代モデルの復刻時計

初代シーマスター 300は、オメガ初の本格ダイバーズウォッチとして誕生したモデルである。潜水や水中作業を行うプロフェッショナルのために、特別なデザインを備えて1957年に発表された。

シーマスター300 歴代

シーマスター 300の変遷。初代のデザインをベースに、アップデートされていることが見て取れる。

50年以上の時を経て、シーマスター 300は2014年に新生モデルとして復刻を果たす。初代の意匠を受け継ぎつつ、時代に即した実用性と魅力的な外観をまとい、進化を遂げた高級スポーツウォッチとしてよみがえった。

マイナーチェンジを繰り返したオリジナルシリーズが1970年代に生産終了した後も、シーマスター 300の名はプロフェッショナル用の潜水モデルに使われている。しかし、新生シーマスター 300は、初代モデルの純粋な復刻版だ。

文字盤やケースのデザインは、初代とほぼ変わらない。非凡な性能を誇るムーブメントを新たに搭載し、最新鋭の中身を与えられた腕時計として生まれ変わっている。

本格ダイバーズウォッチとしての実力

シーマスター 300の大きな特徴は、ダイバーズウォッチとしての優れた防水性と堅牢性である。初代モデルの200m防水は、同時代のロレックスの名機「サブマリーナー」と同等のスペックだ。

モデル名の「300」は、300m防水を目指して開発されていたことに由来している。誕生当時は200mまでしか計測技術がなかったものの、300m防水を実現すると確信して名付けられたと言われている。

現行のシーマスター 300は、いずれも300mの防水性を備えているモデルだ。なお、シーマスターコレクションの中には、水深1200mの水圧に耐えられるよう設計されたモデルも存在する。


シーマスター 300の歴史

ダイバーズウォッチとして誕生したシーマスター 300は、50年以上もの長い時を経て、高い実用性を備えたヴィンテージモデルとして鮮やかな復活を遂げた。誕生から復刻までの歴史を見ていこう。

1957年 初代シーマスター 300の誕生

1957年は、現在も販売が続くオメガの代表3モデルが誕生した年である。その3モデルとは「スピードマスター」「レイルマスター」「シーマスター 300」だ。

シーマスター300

1957年に発表された初代シーマスター300。オメガ初のプロフェッショナル向けダイバーズウォッチとして登場した野心作だ。ニトリル製のOリングや、ナイアス高耐圧リュウズ、変形しにくいアーマードガラスなどの技術を採用することで、初代シーマスターから性能を大幅に向上させた。

いずれもオメガのプロフェッショナルラインとして、60年以上にわたり高い人気を誇っている。

宇宙をイメージさせるスピードマスターと、鉄道時計のコンセプトを持つレイルマスターと併せて、初代シーマスター 300はオメガ初の本格ダイバーモデルとして発表された。

50年代は、ロレックスのサブマリーナーなど優れた防水性を持つダイバーズウォッチが、各社から多数リリースされた年でもある。これらに対抗するため、過剰とも言える防水性を持たせて開発されたのが、初代シーマスター 300である。

2014年 新生シーマスター 300として復刻

初代モデルの登場から50年以上の時を経て、シーマスター 300は2014年に新生モデルとして復刻した。

シーマスター300

オメガ「シーマスター 300」
自動巻き(Cal.8806)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径39mm、厚さ14.1mm)。30気圧防水。生産終了。

ケース・文字盤のデザインは、初代モデルを忠実に再現している。一見すると単なるレトロウォッチだが、内部には最新の性能が搭載された。

最大の特徴は、1万5000ガウス以上の耐磁性を備えたムーブメント「マスター コーアクシャル」を搭載したことだ。これによって、日常使用において磁気帯びする可能性はほとんどない。

高級時計としての質感を与えられていることもポイントである。近年のオメガに見られる品質改善への取り組みが、新生シーマスター 300にも反映されている。

2017年 トリロジーコレクションの発売

初代モデルの誕生から60年後の2017年には、オメガのプロフェッショナルライン3モデルのそれぞれで、60周年記念モデルがトリロジーコレクションとして発表された。

シーマスター 300 1957 トリロジー60周年リミテッド

オメガ「シーマスター 300 1957 トリロジー60周年リミテッド」
自動巻き(Cal.8806)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径38mm、厚さ12.7mm)。60m防水。生産終了。

シーマスター 300においては、初代モデルを基にした世界限定3557本のモデルがリリースされている。

リュウズにはナイアードの印が、ケースバックにはシーホースが刻まれている。いずれも1957年当時のパッケージにインスパイアされたデザインだ。ムーブメントは、オメガが誇るマスター クロノメーターが搭載されている。

2021年 コレクションの刷新へ

2021年、シーマスター 300のコレクションが刷新された。サンドイッチダイアルや初代シーマスター300を意識したブランドロゴ、ロリポップ秒針の採用などと、より意匠にヴィンテージテイストを取り入れつつ、マスター クロノメーター認定ムーブメントを搭載させたことが大きな変更点だ。

オメガ「シーマスター300」Ref.234.30.41.21.01.001/234.30.41.21.03.001
自動巻き(Cal.8912)。38石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.9mm)。30気圧防水。108万9000円(税込み)。

また、蓄光塗料もエイジングの風合いを感じさせるブラウンを帯びた色合いとなっており、現代的な性能を取り入れつつも、巧みにシーマスター 300の伝統を崩さないスタイルを実現した。


シーマスター 300が支持される理由

シーマスター 300は、オメガの傑作として高い評価を集めているモデルだ。性能、デザイン、人気の観点から、主な特徴を紹介する。

高性能ムーブメントに代表される実用性

シーマスター 300には、オメガの代名詞的存在ともなっている、高性能ムーブメントが搭載されている。現行モデルではマスター クロノメーター認定のCal.8912(SSモデルの場合)が搭載されており、1万5000ガウスの超耐磁性能や優れた精度を実現している。

コーアクシャル脱進機を採用していることも、特筆すべき点だ。3つの爪石が駆動するガンギ車は風車状になっており、低摩擦で安定した脱進が可能である。また、ヒゲゼンマイやテンプをはじめとした部品には、耐磁性の高い素材を採用している。

なお、2014年のシーマスター 300も、マスター コーアクシャルとして、コーアクシャル脱進機および1万5000ガウスの耐磁性能が備わっている。

また、バックルに、工具を使わずに操作できる微調整機構が付いていることも、特筆すべき点だ。

ダイバーズウォッチのように重量のある時計は、ピッタリと手首サイズに合わせたいというニーズも少なくない。そんな時、コマを外さずに微調整できる仕様は高い利便性をもたらしてくれる。

ヴィンテージ感あふれるデザイン

2014年の復刻以来、シーマスター 300、初期型のデザインを再現している。2021年の刷新では秒針がロリポップ式となり、いっそう初代モデルをほうふつとさせるテイストとなった。

日焼けのようなカラーリングの蓄光塗料や、セラミックスではなくアルミ製のプレートを持つベゼル、そして1950年代当時の雰囲気を醸し出すブレスレットデザインなど、全体がヴィンテージ感あふれるデザインとなっている。なお、アルミにはオメガの特別な陽極酸化処理が施されており、幅広い色彩を表現できる一方で、一般的なアルミニウムの約2倍となる硬度を有している。

一方、トランスパレント式のケースバックは、近年のトレンドが反映されている。レトロの中にモダンな要素を絶妙に取り入れたデザインと言えるだろう。

人気、知名度が高い

オメガは世界で最も有名な時計ブランドのひとつだ。このビッグネームはステータス性を感じることや、「高級腕時計を身に着けている」ことに伴うコミュニケーションツールとなりうることに寄与するだろう。

加えて、日本で人気の高いブランドであるがゆえに、店舗が国内に充実しているというメリットにもつながっている。購入時や、メンテナンスが国内で完結しやすいため、初めて高級腕時計を購入する層にとって、扱いやすいブランドウォッチと言えるだろう。