ハリー・ウィンストン “Z”のデザインを再解釈した ビビッドなカラーバリエーション

FEATURE本誌記事
2021.10.01

多様性に富んだアプローチで、ウォッチメイキングの可能性を一気に押し広げたハリー・ウィンストン。
そうした試みのひとつが、2004年から連作されている「プロジェクト Z」シリーズだ。

ジルコニウム基の軽量素材でありながら、独特な重厚感と鈍色の輝きを放つ独自素材「ザリウム」に、目にも鮮やかなビビッドカラーを組み合わせた「ザリウム バリエーション」は、ハリー・ウィンストンでしか作り得なかった、ワン&オンリーのラグジュアリースポーツだ。

ザリウム

(左)ザリウム バリエーション・イエロー
2016年に発表されたZ10をベースとするカラーバリエーション。ザリウムケースを含む基本構成はそのまま、ビビッドなイエローカラーを纏う。
自動巻き(Cal.HW3305)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ザリウム(直径42.2mm、厚さ10.6mm)。世界限定100本。280万5000円。
(右)ザリウム バリエーション・オレンジ
こちらはオレンジカラー。Z10ではマットブルーで統一されていたマンハッタン・ブリッジのオープンワーク部分をブラックアウトして上品な印象に。
自動巻き(Cal.HW3305)。35 石。2 万8800 振動/時。パワーリザーブ約65時間。ザリウム(直径42.2mm、厚さ10.6mm)。世界限定100本。280万5000円。
星武志:写真
Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
鈴木裕之:取材・文
Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2021年11月号]


HARRY WINSTON “Zalium Variation”

 1989年に高級時計の世界に参入して以来、ウォッチデザインの改革者でもあったハリー・ウィンストン。レトログラードを多用した時分表示に見られる独創性は、2004年に始まった「プロジェクト Z」で劃期を迎えた。チタンとよく似た特性を持つジルコニア基の特殊素材、ザリウムをベースとした独自合金の開発と導入である。全体をサテナージュで仕上げたケースは鈍色の輝きを放ち、現在市場にあるどんな金属よりも重厚な印象を与える。対して実際に手にしてみると、その重厚なイメージからは想像もつかないほど軽い。同族の工業用素材であるチタンと異なり、ブランク材からの切削以外に加工する術を持たない難物だが、ハリー・ウィンストンはその色調と特性に、審美性と実用性の鞍点を見いだしたのだ。

 歴代の「プロジェクト Z」の中でも、時計愛好家からひときわ高い評価を得たモデルが、世界限定300本で16年に登場した「プロジェクト Z10」だった。ベースムーブメントの仕様が、シリコン製のヒゲゼンマイを用いたフリースプラング仕様となった初号機でもあり、ケースの立体感もこの頃から大きく高められていた。Z10のカラーリングは、鈍いザリウムの輝きにトーンを合わせたダークブルーが主体。これは歴代のプロジェクト Zに共通する、いわばテーマカラーのようなものだ。さらにプロジェクト Zの発表から1年のブランクを空けて、同デザインの18KRGバージョンが、HW オーシャン・コレクションの1本として再ローンチされることが通例だった。

 先頃発表された「ザリウム バリエーション」は、こうした従来の慣例を覆した意欲作。ザリウムケースを含めたZ10の基本構成はそのままに、イエローとオレンジのビビッドカラーに再構築されたのである。

 ブラックラバーの上に縫い取られたアリゲーターの表革は、目が覚めるような鮮烈なビビッドカラー。オフセットダイアルの12時位置に設けられたHWのロゴや、各表示針やアプライドインデックスに施されたルミナスマーキングも、未発光の状態では鮮やかなビビッドトーンだ。一方、分目盛りのチャプターリングとレトログラードカウンターの外縁は、コーティング処理による金属感を残している。この部分はオリジナルのZ10ではマット調だったが、新作ザリウム バリエーションでは金属光沢を残すような処理に変更されている。こうしたカラーリングアレンジが凡百なカジュアルスポーツと一線を画すのは、ザリウムケースの鈍い輝きをベースにすることを前提に、適切なコントラストとラグジュアリー感を演出している点だろう。

 歴史的な側面から言えば、Z10というリミテッドモデルはスウォッチ グループに参画した初期に作られたプロジェクト Zでもあった。このモデルをターニングポイントとして、ハリー・ウィンストンのウォッチメイキングは〝次の段階〞へと歩を進めたのである。それは格段に向上したケースの仕上げや、ムーブメントの基礎体力向上といった部分に表れている。しかし鮮烈な印象に生まれ変わったザリウム バリエーションの生産数は、オリジナルZ10よりも希少な各100本でしかない。争奪戦必至のレアプロダクトと言えるだろう。


Contact info: ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション TEL:0120-346-376
www.harrywinston.com/


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