ヴァシュロン・コンスタンタン パトリモニーの魅力。トラディショナルとの違いは?

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2022.03.03

ヴァシュロン・コンスタンタンの「パトリモニー」と「トラディショナル」は、それぞれ似て非なるコレクションだ。歴史や特徴を知れば、両者の違いはもちろんのこと、パトリモニーの魅力を理解できるだろう。パトリモニーがたどってきた歴史やその魅力、注目モデルを紹介していく。

パトリモニー


パトリモニーの歴史と変遷

ヴァシュロン・コンスタンタンの「パトリモニー」について理解を深めるために、まずはコレクションの歴史に触れておこう。現在は別のコレクションである「トラディショナル」との違いも、押さえておきたいポイントだ。

2004年 パトリモニーの始まり

パトリモニー・マニュアルワインディング

2004年に誕生し、ヴァシュロン・コンスタンタンを代表するタイムピースとして高い支持を得ている「パトリモニー・マニュアルワインディング」。文字盤の緩やかな曲面に沿うようにセットされた時分針が優美な表情を放っている。手巻き(Cal.1400)。20石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPG(直径40mm)。3気圧防水。237万6000円(税込み)。

パトリモニーは、ヴァシュロン・コンスタンタンが2004年に発表した、比較的新しいコレクションで、クラシカルかつシンプルな意匠が特徴だ。

パトリモニーのデザインは、1950年代にヴァシュロン・コンスタンタンが製造していた作品を現代的に解釈し直したものだ。

分針やインデックスなどのディティールが、ブランドのアイデンティティとして受け継がれている一方で、絞ったラグに細身のストラップを合わせるなど、随所に取り入れられた現代的な要素も特徴である。

クラシックとモダンが共存するデザインは、パトリモニーにおける魅力のひとつといえるだろう。

2007年 トラディショナルの誕生

トラディショナル・マニュアルワインディング

ドーフィン針や文字盤外周のレイルウェイトラックといったクラシカルなディテールを採用しつつ、パトリモニーとは異なる力強い表情を見せる「トラディショナル・マニュアルワインディング」。手巻き(Cal.4400 AS)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KPG(直径38mm)。3気圧防水。255万2000円(税込み)。

ヴァシュロン・コンスタンタンの正統派クラシックラインであるパトリモニーは、多くのシリーズを誕生させている。そのひとつが、2007年にパトリモニーの派生モデルとして登場したトラディショナルだ。

トラディショナルは1930~50年代のモデルにオマージュを捧げた時計である。パトリモニーに比べて伝統的な要素をより多く取り込んでいる点を特徴としている。

夜光塗料を使用しないドーフィン針や、かつての懐中時計に採用されていたレールウェイサークルは、まさに古典の再現ともいうべきディテールである。

2014年 それぞれが独立したコレクションに

トラディショナル・コンプリートカレンダー・オープンフェイス

複雑機構搭載モデルを数多くラインナップしているのもトラディショナル コレクションの特徴。写真は2021年12月に発表されたばかりの「トラディショナル・コンプリートカレンダー・オープンフェイス」。トリプルカレンダーと高精度ムーンフェイズ機構を備えるのみならず、Cal.2460 QCL/2の姿があらわになった大胆なデザインも目を惹く。自動巻き(Cal.2460 QCL/2)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。18KPG(直径41mm)。3気圧防水。563万2000円(税込み)。

トラディショナルは2007年の誕生以降、「パトリモニー・トラディショナル」としてパトリモニーのカテゴリー内に位置付けられていたが、2014年に独立したコレクションとなった。

両者ともにブランドを代表するドレスウォッチではあるが、古典を再解釈しつつ現代的な要素も取り入れたコレクションがパトリモニー、クラシカルな要素を強めたコレクションがトラディショナルという違いを明確に示した形である。

トラディショナルは現在、単独のコレクションとして多彩なモデルを生み出している。特に、複雑機構を搭載したモデルが有名だ。


パトリモニーが愛好家に支持される理由

時計愛好家はパトリモニーのどのような点に魅力を感じているのだろうか。パトリモニーが支持される理由に迫る。

エレガンスとミニマリズムを究めたデザイン

パトリモニーが支持される理由のひとつに、エレガンスとミニマリズムを追求したデザインが挙げられる。正統派ドレスウォッチらしい、上品かつシンプルなたたずまいが魅力だ。

整えられたラインと緩やかなカーブのバランスは見事で、パトリモニーの気品高い美しさを表現している。スリムなケースは1950年代のモデルから着想を得たデザインである。

一切の無駄を省略したミニマリズムは、2針や3針のクラシカルなスタイルや、シンプルな文字盤、インデックスに見てとれる。伝統とモダンが調和した、名門らしいコレクションだ。

メゾンの象徴「マルタ十字」の強調

パトリモニー・マニュアルワインディング

コレクションを代表する「パトリモニー・マニュアルワインディング」は、ミニマルなダイアルデザインに加え、ケース厚はわずか6.79mmに抑えられており、実にエレガントなプロポーションになっている。

ヴァシュロン・コンスタンタンの時計には、シンボルマークであるマルタ十字のロゴが使われている。かつての時計に取り付けられていたムーブメント部品と形が似ていることから採用されたモチーフだ。

4つのくさび形を四方に向けて組み合わせたマルタ十字は、ダイアルの12時位置に配されるのが基本である。モデルによってはラグやリュウズにも用いられている。

マルタ十字をより強調している点も、パトリモニーの大きな特徴だ。12、3、6、9時位置のインデックスがくさび形になっており、文字盤全体でロゴへのオマージュが体現されている。