ヴァシュロン・コンスタンタンのトゥールビヨンに迫る。仕組みや傑作モデルも

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2022.03.24

ヴァシュロン・コンスタンタンに興味があるなら、トゥールビヨンモデルもチェックしてみよう。トゥールビヨンの歴史を知ることでその魅力をより深く理解でき、時計の仕組みも語れるようになる。トゥールビヨンの基本や魅力に加え、ヴァシュロン・コンスタンタンのおすすめトゥールビヨンモデルを紹介する。

オーヴァーシーズ・トゥールビヨン


トゥールビヨンの基礎知識

そもそもトゥールビヨンとはどのような機構なのか。誕生した背景や動作する仕組みなど、まずはトゥールビヨンの基本を押さえておこう。

世界三大複雑機構の中でも難易度の高い機構

トゥールビヨンとは、時計の姿勢差から生じる時計の誤差を抑える機構のことである。文字盤のくり抜かれた箇所に設置され、ゆっくりと回転している部分だ。

トゥールビヨンを備えた時計は重力の影響を受けにくくなり、安定した精度を保ちやすくなる。

カレンダーの調節が不要なパーペチュアルカレンダーや、時刻をゴング音で知らせるミニッツリピーターと並び、トゥールビヨンは世界三大複雑機構のひとつとされている。

この三大機構の中でも、トゥールビヨンはかなり難易度の高い機構だ。ブランドにとっては自社の技術力をアピールできるものであり、身に着ける人には高い満足感が得られる存在となっている。

トゥールビヨンが誕生した背景

トゥールビヨンは、天才時計師と称されたアブラアン-ルイ・ブレゲ(1747-1823)が発明した機構で、1801年に特許を取得している。

当時は懐中時計を上着のポケットに入れ、持ち歩くスタイルが主流であった。しかし、懐中時計を常に垂直の向きで携帯すると、重力の影響で精度が落ちていたのだ。

これを解消するべく、ブレゲはトゥールビヨンを開発。懐中時計の向きが変わっても重力を分散させることに成功した。なお、他にも数々の機構を発明したブレゲは、「時計の歴史を200年早めた男」ともいわれている。

トゥールビヨンが動く仕組み

オーヴァーシーズ・トゥールビヨン

文字盤の6時位置に確認できるのがトゥールビヨンキャリッジ。ヴァシュロン・コンスタンタンのトゥールビヨンウォッチは、マルタ十字のモチーフを施したキャリッジが特徴のひとつになっている。

トゥールビヨンの目的は、テンプをコントロールするヒゲゼンマイにかかる重力を分散させることである。時計の心臓部であるヒゲゼンマイが偏った重力を受けると、時計の精度を保ちにくくなってしまう。

テンプやガンギ車、アンクルから成る調整機構をキャリッジと呼ばれるケージに入れて回し続けるのが、トゥールビヨンの仕組みだ。

通常の機構と違って秒針の歯車である4番車が固定されており、ほとんどのトゥールビヨン搭載機には秒針が付いていない。

トゥールビヨンはフランス語で「渦」を指す言葉である。多くのメーカーが文字盤や裏蓋をくり抜き、渦のように回転するキャリッジの動きを楽しめる仕様にしている。


進化するトゥールビヨン

現在は多くのブランドが、より進化したトゥールビヨンを自社モデルに搭載している。代表的なふたつの進化系トゥールビヨンを覚えておこう。

ダイナミックな「フライング・トゥールビヨン」

トゥールビヨンが進化した機構のひとつにフライング・トゥールビヨンが挙げられる。キャリッジが空中に浮いているように見えることから、この名前が付けられた。

一般的なトゥールビヨンでは、キャリッジを押さえるためのブリッジが上部に見えているのだが、フライング・トゥールビヨンでは上部にブリッジがなく、キャリッジの内部を可視化させている。

見た目をより重視して設計されているのが、フライング・トゥールビヨンの特徴である。ダイナミックな動作や精巧なメカニズムを視覚的に楽しめるだろう。

3次元キャリッジを備える「ジャイロトゥールビヨン」

球体のキャリッジを使ったトゥールビヨンがジャイロトゥールビヨンだ。複数の軸を用いて、ガンギ車やテンプがさまざまな方向に回転する仕組みを持っている。

キャリッジを球体にするためには、極めて高度な技術が必要である。単に球体の設計にするだけでなく、機構に本来求められる精度も保たなければならない。

ジャイロトゥールビヨンは、スイスの名門ジャガー・ルクルトが世界で初めて開発した。フライング・トゥールビヨンと同様、見た目でも楽しめる機構である。