売り場面積もブランド数もぶっちぎりNo.1! 高級時計を「イッキ見する」なら名古屋に限る!?

FEATURE役に立つ!? 時計業界雑談通信
2022.08.20

名古屋の時計店事情がスゴイことになっている。松坂屋名古屋店の時計売り場改装・オープンで、ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾンと合わせて、売り場面積、取り扱いブランド数、どちらも日本No.1クラスの時計売り場が2つも揃ったのだ。今回の記事は、その規模が他の百貨店と比較してどのくらいスゴイのか。また、改めて百貨店と専門店の魅力について考えたい。

左が松坂屋名古屋店北館5階、時計サロン「GENTA the Watch」。
右は「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」。
渋谷ヤスヒト:文 Text by Yasuhito Shibuya
(2022年8月20日掲載記事)


名古屋に「売り場面積日本最大級」の時計売り場がふたつも!?

 今年2022年7月2日に14年ぶりに改装オープンした、名古屋の繁華街・栄にある松坂屋名古屋店の北館5階にある時計サロン「GENTA the Watch」は、同店の発表によれば売り場面積が全体で約1400㎡、時計だけで約1200㎡という日本最大級の時計売り場だ。10月までに随時オープンするブランドや数え方の問題もあるのでブランド数は書かないが、提携しているウェブサイトの「Gressive」によれば75ブランド以上となっている。

松坂屋名古屋店の北館5階にある時計サロン「GENTA the Watch」のフロアガイド。

 そして、名古屋にあるもうひとつの「日本最大級の時計売り場」が、約1年前の2021年7月21日、JR名古屋駅のすぐ近くの大名古屋ビルヂング1・2階にオープンした「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」である。こちらのふたつのフロアを合わせた売り場面積は約1200㎡。約90ブランドを取り扱っている。

 どちらも「日本最大級」という表現に間違いはない。これはとんでもない広さでありブランド数だ。では、どのくらいスゴイのか、日本全国の他の売り場と比較してみよう。

「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」のフロアガイド。

 同じ髙島屋が2015年に東京・日本橋にオープンして大きな話題になった「タカシマヤ ウオッチメゾン 東京・日本橋」は売り場面積が約800㎡。翌2016年11月に大阪・難波の髙島屋大阪店5階にオープンした「タカシマヤ ウオッチメゾン 大阪」の売り場面積が約1100㎡。そして大阪での直近の時計売り場の改装である、2020年2月にリニューアルオープンした阪急うめだ本店6階「インターナショナルブティックス ウォッチギャラリー」の売り場面積は約700㎡。

 東京の百貨店で時計売り場の充実に力を入れているのは言うまでもなく三越伊勢丹ホールディングス傘下の「伊勢丹 新宿店」と「日本橋三越本店」だ。2019年に売り場面積をそれぞれ約2倍、約2.5倍に拡張している。広さの数値は公開されていないので比較はできない。だが、筆者の体感では、このふたつが名古屋の2店舗を超えているとはとても思えない。

松坂屋名古屋店北館5階「GENTA the Watch」の「Watch Terrace」の様子。

 松坂屋名古屋店北館5階「GENTA the Watch」も「ジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾン」は、どちらも発表数値通りであれば、これまでのNo.1である「タカシマヤ ウオッチメゾン 大阪」を抜いて、売り場面積は日本最大級、というか日本No.1だ。そして、この面積に比例して取り扱いブランド数も多い。

 つまり日本No.1の売り場面積、取り扱いブランド数を誇る時計売り場が名古屋市内に2店舗も揃ったのだ。だから、さまざまなブランドの時計を「イッキ見して」「自分好みの1本を見つけたい」という人は、名古屋のこの2店を訪ねることをオススメしたい。

 どちらの店舗も時計ブランドの魅力、その世界観を体感できる空間作りをポイントにしていて、特に松坂屋はサロン的な設備や修理コーナーなども充実している。またブランドのフェアや時計関連のイベントも多く開催されており、専用のウェブサイトも充実している。時計愛好家にとってはこの点も見逃せない、うれしいところだ。

「GENTA the Watch」の修理コーナー。ガラス張りのため、修理の様子も見られる。

 松坂屋名古屋店が名古屋市の中心部に位置する繁華街の栄地区、ジェイアール名古屋タカシマヤがJR名古屋駅のすぐ近くの立地と、この両店舗はちょっと離れている。だがそれは、名古屋という街の広さ、面白さを知る良い機会になると思う。

 ところでロレックスについては両店とも、修理以外は「事前予約」が必要なので注意が必要だ。


売り上げも日本No.1が目標

 なお、松坂屋名古屋店は売上目標を前年度(2021年度)+15%を掲げ、百貨店として時計で日本No.1を目指すと公言している。今回の改装オープンではその目標達成もターゲットだという。

 ライバルのジェイアール名古屋タカシマヤ ウオッチメゾンも、広報担当者の話では2021年度の売り上げは想定を上回る前年2020年度比約1.5倍を達成。販売単価も以前より約15万円もアップして100万円オーバーのモデルが好調とのこと。

 確かに高級時計は、新型コロナ禍における旅行需要の多くを代替しているためか、世界的に絶好調だ。日本でも日本時計協会がまとめた2021年度の日本国内のウォッチの市場規模は実売金額で約7139億円と前年比+15%。その中でも輸入ウォッチは実売金額で5857億円、前年比+17%となっている。

 そもそも名古屋は百貨店の外商比率が、他の地域の約30%に対して約50%と高く、高級品の売り上げが高いエリア。この2店舗のどちらかが時計の売上高No.1を達成することは十分に可能だろう。


まだ残る「百貨店の時計売り場」の課題とは?

 続々と拡張され、成果を上げる全国の百貨店の時計店売り場。今から約20年前の2000年前後、時計業界では「これからは時計専門店の時代だ」と言われた。「百貨店には時計専門店ほど専門知識を備えた人材はいないし、そもそも、売り場の構造的に、高級時計にふさわしいサロン的な接客は不可能では」と言われたものだ。

 しかし、百貨店は高級時計ブランドのブティックを店内に取り込み、売り場をラグジュアリー化し、拡張してサロン化することで、この課題のひとつは克服した。また、取り扱いブランド数でも時計専門店を大きく凌駕している。また百貨店のカードによるポイント還元という、時計専門店では実現不可能な「武器」も持っている。とはいえ「高級時計を買うなら百貨店で」と断言できるかというと、残念ながらそうではない。

 何世代にもわたって時計を取り扱ってきた時計専門店には、百貨店には真似のできない強みがある。それは「時計に関する専門知識を備えた人材」と「世代を超えた家族ぐるみの親しいお付き合い」だ。

 名古屋にも1915年から3世代にわたって高級時計を取り扱い、スイスの時計ブランドの時計作りの現場に通いつめ、現地の人々と深い絆で結ばれた「時計・宝飾 ヒラノ」のような時計専門店がある。

 もし時計のために名古屋に行くのなら、ぜひこうした時計専門店も訪ねてみることを個人的にはオススメしたい。


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