車いすテニス、世界ランキング1位のまま現役引退を表明した国枝慎吾が着けていた腕時計はラドー!

LIFEセレブウォッチ・ハンティング
2023.03.12

世界のセレブたちがどんな時計を着けているのか、ワンシーンを切り取り紹介する連載コラム「セレブウォッチ・ハンティング」。今回はテニス界に大きな功績を残した車いすテニス元世界ランク1位の国枝慎吾が着用しているラドーの時計を紹介しよう。

沼本有佳子:文
Text by Yukaco Numamoto
2023年3月12日掲載記事


グランドスラム車いす部門で、男子世界歴代最多となる優勝記録を保持する国枝慎吾

 2023年1月22日に世界ランキング1位のまま現役引退を表明した国枝慎吾は、グランドスラム車いす部門において、シングルス28回、ダブルス22回の優勝という男子世界歴代最多となる計50回という優勝記録を持っている。年間最終世界ランキングでは10回1位を記録しており、生涯ゴールデンスラムを達成している。

国枝慎吾

Photograph by GettyImages
2014年9月6日にニューヨーク市クイーンズ区のフラッシング地区にあるUSTAビリージーン・キング・ナショナル・テニスセンターで撮影されたUSオープンでの1枚。この日は大会13日目で、ステファン・ウデ(フランス)と国枝慎吾がゴードン・リード(イギリス)とマイケル・シェファー(オランダ)を破り、勝利した。

 生涯ゴールデンスラムとは、選手生活の間に4大大会すべてに加えてオリンピックもしくはパラリンピックを制覇することを指し、年間グランドスラムと同様に、非常に達成しにくいものである。というのもオリンピックやパラリンピックは4年に1度しか開催されないため、チャンスが激減するのだ。国枝慎吾は2007年には史上初となる車いすテニス男子シングルスの年間グランドスラムを達成し、2021年に東京で開催されたパラリンピックにおいては日本選手団主将として挑み、シングルス3個目の金メダルを獲得した。

 引退を決意する直前となる2022年の全豪オープンでも同大会11回目の優勝を果たし、さらにウィンブルドン選手権でも優勝を飾った。素晴らしい戦績と功績を称え、2023年3月に国民栄誉賞授与が決定し、パラスポーツ選手、およびテニス選手への初の国民栄誉賞受賞が決定している。


「ラドー ハイパークローム コートコレクション」を着用する国枝慎吾

 2014年9月6日にニューヨーク市クイーンズ区のフラッシング地区にあるUSTAビリージーン・キング・ナショナル・テニスセンターで撮影されたUSオープンでの国枝慎吾の手元を見ると、着用されていたのはラドーの「ラドー ハイパークローム コートコレクション」だ。ウィンブルドンの芝のコートを連想させるグリーンモデルである。国枝慎吾は日本におけるラドーフレンドとして、ラドーの魅力を広めた。

ラドー ハイパークローム コートコレクション

「ラドー ハイパークローム コートコレクション」を着用する国枝慎吾の手元のアップ。このモデルはラドーから2013年に発表された。

 ラドーは2012年から世界のテニストーナメントのオフィシャルタイムキーパーを担当している。2016年からはスイス・テニス協会のパートナーとしてもスイスのテニスをサポートしており、この活動の一環として毎年3万人以上の選手が参加するスイス最大のテニス大会「ラドー・インタークラブ・チャンピオンシップ」のスポンサーも務め、スイスで行われる国際テニス連盟のプロトーナメント全大会を含むスイス・テニス国際ツアーのプレゼンティングパートナーにもなっている。テニスの発展のために重要な貢献を行っているラドーがラドーフレンドとしてパートナーシップを結んだ選手のうちのひとりが国枝慎吾であった。

 ラドーのモットーに「想像することができるならば、作り出すことができる。作り出せるならば、実行する」というものがある。これは1957年の「グリーン ホース」が発表された際に使用された。すでに成功を続けているもので満足するだけではなく、より新しいものを独創性と先見性で生み出す姿勢は21世紀に入った現在でも守られている。

 一方、国枝慎吾のテニスとの向き合い方にもラドーの姿勢と通じる部分がある。国枝慎吾は1984年生まれで9歳の時に脊髄腫瘍による下半身麻痺のため車いすの生活となった。元々体を動かすことが好きだったため、バスケットボールのチームを探したものの見付からず、母の薦めで車いすテニスを始めた。テニス用の車いすに乗った直後から驚異的な才能を見せたという。このチェアワークは、のちのち選手としての特徴として他の選手を圧倒することとなる。車いすテニスのルールでは2バウンドまでが認められているが、国枝慎吾はほとんどを1バウンドで打ち返すのだ。

 2006年頃までは世界ランク10位前後だったのだが、全豪オープンの会場で出会ったメンタルトレーナーからのアドバイスにより「オレは最強だ!」と毎日言い続けることでメンタル面も強化され、わずか10カ月後には世界ランク1位になった。最強の自分を実現するために行動すること、潜在する自分の力を信じて行動することはラドーの精神に通じるものがある。


2012年に発表されたラドーのハイパークロームシリーズ

ハイパークローム オートマティック クロノグラフ

フルセラミック製で滑らかなデザインを特徴とするラドーのハイパークロームコレクション。画像はクロノグラフ機能を搭載した「ハイパークローム オートマティック クロノグラフ」の現行モデル。自動巻き。37石。パワーリザーブ約45時間。ハイテクセラミック(直径45.0mm)。10気圧防水。64万9000円(税込み)。

 前述のとおり、2012年にテニス大会のオフィシャルタイムキーパーとしてのチャレンジを再始動させた翌年の2013年にラドーが発表したのがこの「ハイパークローム コートコレクション」である。テニスコートをモチーフにしたコレクションで、ハードコート、芝コート、クレーコートの3種類のコートが持つカラーをアクセントカラーとして採用している。ケースにはハイテクセラミックを採用し、スポーティで軽やかな着用感を実現している。

 国枝慎吾着用モデルのラバーストラップに入れられたラインはセンターではなく左寄りに入れられており、ラインぎりぎりを攻めるテニスの緊張感が表現されている。

 ハイパークロームシリーズはラドーのヴィンテージタイムピースにインスピレーションを受けて作られた。「毎日どんなときでも着用できるように」と2012年に発表された汎用性の高いコレクションである。滑らかなデザインと大きめのケースデザイン、軽やかで快適な着用感は新鮮な驚きをもって迎えられ、現在もラドーを代表するモデルのひとつとなっている。


パラスポーツ普及に貢献した国枝慎吾

 国枝慎吾が引退の決意をtwitterとインスタグラムで伝えてから、まだ1カ月と少ししか経っていない。2006年に初めて世界1位になってから17年もの間、走り続けた国枝慎吾のメッセージからは優しく強い人柄がにじみ出ている。

「最後まで世界一位のままでの引退はカッコつけすぎと言われるかもしれませんが、許してください(笑)」とインスタグラムのコメントの中にもあるが、この言葉の裏側にはどれほど苦労と努力があったか計り知れないものがある。約20年の間で賞金も上がり、特に東京2020オリンピック以降、パラスポーツを普及させるイベントなどが各地で開催されるようにもなった。筆者も車いすテニスを体験するイベントに参加したことがあるのだが、自在に車いすを操りながらテニスボールを追う難しさだけでなく、パラスポーツが持つ面白さを実感した。

 これから、そういったイベントが開催されることによりますます国枝慎吾の強さは再認識されていくのだろう。引退後も車いすテニスの発展に大きな影響を与え続ける国枝慎吾は最強だと思う。


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