ロンジン 39mm径に込めたオリジナルダイバーズへのリスペクト

FEATURE本誌記事
2023.12.12

2007年に登場し、ロンジンを代表するレトロダイバーズウォッチとなった「ロンジン レジェンドダイバー」。その起源は、スーパーコンプレッサーケースを採用し、1959 年に発売された「Ref.7042」にさかのぼる。今回の新作で注目すべきは、着実なアップデートの中にのぞかせる、原点への敬意だ。同社がたどったこれまでの歴史を振り返りつつ、今作の持つ正統性をひもといていきたい。

ロンジン レジェンドダイバー

ロンジン レジェンドダイバー
今作で初めてISO6425規格に準拠し、名実共に本格ダイバーズウォッチとなったロンジン レジェンドダイバー。それでいて上品な佇まいは、エイジング加工を施したレザーストラップとも抜群の相性を見せる。自動巻き(Cal.L888.6)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.70mm)。30気圧防水。49万8300円(税込み)。
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
野島翼:文 Text by Tsubasa Nojima
加瀬友重:編集 Edited by Tomoshige Kase
[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]


新モデルが追加された「ロンジン レジェンドダイバー」

ロンジン レジェンドダイバー

今回の新作が登場したことで、SSケースのノンデイトモデルが復活。これによって、シンプルなダイアルの判読性が一層高められた。

 ロンジンの代表作のひとつ、「ロンジン レジェンドダイバー」に、新しいモデルが追加された。過剰な変化を避け慎重に、しかし着実に完成度を高めた今作。その魅力をひもとくには、同社の歴史をたどらねばなるまい。

 ロンジン初の民生用ダイバーズウォッチは、1958年の「ノーチラス スキンダイバー」だ。当時、クロノグラフの名門として名を馳せていた同社は、これを機にダイバーズウォッチの開発に注力。翌年にはレジェンドダイバーのルーツ、「Ref.7042」を生み出す。本機に12気圧もの防水性を与えたのは、エルヴィン・ピケレのスーパーコンプレッサーケースだ。ふたつのリュウズとインナーベゼルを備え、水圧を利用して気密性を高めるこのケースは、多くのブランドがこぞって採用した。その後、ロンジンは基本的なデザインをそのままに、防水性の向上と、ムーブメントの変更を加え、アップデートを続ける。60年代には、20気圧防水を備えた「Ref.7594」を発表し、70年代には30気圧防水に達した後継機をオーストラリア海軍へ納入した。

ロンジン レジェンドダイバー

スーパーコンプレッサーケースの意匠を踏襲したふたつのねじ込み式リュウズは、シンメトリーに配されている。リュウズは前作から薄型化され、よりオリジナルに近いデザインを獲得した。

 数々のアーカイブピースを復刻してきたロンジンが、これらをレジェンドダイバーとしてよみがえらせたのは、2007年のこと。オリジナル同様の直径42mmのケースに現代的なねじ込み式リュウズを備えた本機は、すでに復刻モデルとしての高い再現度を有していたが、決して古臭さを感じさせなかった。マッシブなダイバーズウォッチとは一線を画すエレガントなデザインは、現代では新鮮に映る。ビジネスシーンから海辺まで対応できる汎用性が、本機をロングセラーモデルへと押し上げたのだ。当初はCal.L633(ETA2824-2ベース)を搭載したノンデイトモデルであったが、やがてデイト表示が付加され、さらにベースムーブメントを変更したCal.L888を搭載するに至った。バリエーションも着々と拡充され、小ぶりな36mmケースやノンデイトのブロンズケース、カラーダイアルが、ファンを魅了した。

ロンジン レジェンドダイバー

新たなデザインが採用されたのは、ねじ込み式のケースバックに配された潜水士のレリーフだ。よく見ると、その腕にはレジェンドダイバーが装着されており、堅実なアップデートに忍ばせた同社の遊び心が垣間見える。

 今回の新モデルでは、原点であるRef.7042をより意識した要素を加えつつも、取り回しやすく実用性に優れた、現行機らしい仕様へとブラッシュアップされている。研ぎ上げたラッカーダイアルは、多くのファンが待ち望んだであろうノンデイト仕様。時針のスーパールミノバは、オリジナル同様に根元まで塗布され、暗所での視認性をさらに高めている。時刻表示に特化したストイックなその姿には、安全性を最重要視するダイビングツールとしての出自が垣間見える。

Ref.7042

新型「ロンジン レジェンドダイバー」のインスピレーション源となったRef.7042。1959年にエルヴィン・ピケレ製のスーパーコンプレッサーを採用した同作は2ピースのケース構造もあり、120mの防水性能を誇った。なお、2007年以降に復刻されたロンジン レジェンドダイバーは3ピースケースを採用するが、裏蓋を2ピース風にデザインしている。

 SS製ケースは、コンパクトな直径39mm。サイドには新たに力強いサテン仕上げが施され、優雅なケースラインを強調する。前作では長く湾曲したラグを有していたが、今作ではそれらを控えめにすることで、装着感を高めている。ねじ込み式リュウズは、2時位置がインナーベゼルの操作、4時位置が時刻調整を司る。リュウズ自体も高さが抑えられ、オリジナルの意匠にさらに近づいた。

 レジェンドダイバーは当初、明らかに復刻モデルという位置付けであったと思う。しかし、同社はそのままで終わらせず、その後十数年にわたって改良を重ねてきた。その過程を振り返れば、07年のリリースは、もはや復刻ではなく復活だったと表現するのがふさわしい。レジェンドダイバーの歴史は、これからも長く紡がれていくに違いない。

ロンジン レジェンドダイバー

ロンジン レジェンドダイバー
レザーストラップのほかに、ヴィンテージ感のあるライスブレスレットもラインナップ。ブラックと、グレーがかったレトロなブルーダイアルを用意する。搭載するCal.L888.6は、ケーシング状態でC.O.S.C.のクロノメーター認定を取得。自動巻き(Cal.L888.6)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.70mm)。30気圧防水。49万8300円(税込み)。



Contact info: ロンジン Tel.03-6254-7350


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