オリエント 日本のスケルトンを持つ矜恃

2017.02.03

20万円台の時計ではおそらく初めて採用された手縫い(!)のアリゲーターストラップ。腕に当たる側のテンションを強めて縫うことで、ストラップの曲がりを良くしている。

 もっとも、部品点数が少ないオリエントの46系は、大半の実用機に比べて、スケルトン化に適していた。その利点を理解した同社は、以降、46系スケルトンの大改造に取り組むこととなる。その中で最も目を引くのが、6時位置に追加されたスモールセコンドである。46系の輪列は2番車と4番車が重なっており、スモールセコンド化は難しい。対して同社は、3番車が6時位置の秒カナを駆動させる輪列に改造したのである。普通、スモールセコンドの下には4番車がある。しかしオリエントの技術者は、スケルトンの〝抜け感〟を重視するため、秒針を秒カナだけで駆動させてしまった。ほかの量産時計メーカーでは考えられない離れ業だ。

 変わった取り回しを持つハックレバーも、このムーブメントが実用機らしからぬ〝抜け感〟を持てた一因だ。46系スケルトンのハック機構は、直接テンプを止めるようになっている。しかし、ほかのムーブメントのように、テンプ回りにハックレバーは見えない。理由は、スモールセコンドを斜めに横切るような位置に、ハックレバーを置いたためだ。既存のハックレバーを復活させただけとも言えるが、スケルトン化に伴い、形状が変更された。

オリエントスター スケルトン WZ0031DX
高い視認性をもたらすダイヤモンドカットされたインデックスと針。パワーリザーブインジケーターやスモールセコンドの外周も同様にダイヤモンドカットが施されている。面白いのは、別部品で貼り付けられたロゴの位置。耐久性を持たせるため、このスケルトンは手巻き機構の周りを抜いていない。見栄えは悪くなるが、そこにロゴをプリントしたプレートを貼り付けて、巧みに余白を埋めている。

オリエントスター スケルトン
プレステージショップ限定モデル WZ0051DX

文字盤の色を変更したオリエントスター スケルトン。文字盤外周にはプレスによるギヨシェ風の仕上げが与えられている。これは切削では出せない複雑な模様と、切削並みの精密さを両立したものだ。色を載せても明瞭なエッジが残っているところに高い加工精度が見て取れよう。基本スペックは右ページのモデルに同じ。24万円。


 四半世紀をかけて46系スケルトンを熟成させてきたオリエント。その帰結が2016年発表の「オリエントスター スケルトン」である。地板と受けの肉はいっそう省かれ、実用機らしからぬ〝抜け感〟は一段と強調された。加えて、ダイヤモンドカットされたインデックスや針などが、この時計にさらなる立体感を添える。そして、言うまでもないことだが、オリエントの美点である高いコストパフォーマンスと実用性は、このモデルでも不変だ。一見、オリエントらしからぬ造形を持つ本作。しかしこれは、オリエントにしか作りえないスケルトンなのである。

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