【パイロットウォッチ特集】フライトの大半を共に過ごしたロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」

2025.05.26

現代におけるパイロットウォッチの在り方を再考する。そんな『クロノス日本版』Vol.98「パイロットウォッチ礼賛」特集を、webChronosに転載。今回から、実際のパイロットにインタビュー。活動内容や現場での現実とともに、彼らの“時”との向き合い方に注目。第二回は、国際オーナーパイロット協会(AOPA)理事の西村博行さんと、彼が愛用するロレックスの話である。

【パイロットウォッチ特集】現役パイロットは、どのように“時”と向き合っているのだろうか?

FEATURES

民間パイロットウォッチのための「GMT」機構を、ロレックスやブライトリングなどのモデルから理解する

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奥田高文:写真
Photographs by Takafumi Okuda
細田雄人(本誌):取材・文
Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2022年1月号掲載記事]


Pilot’s Interview 2 西村博行さん

西村博行

 パイロットとひと口に言っても、操縦する機体のジャンルは多岐にわたる。そして着用者であるパイロットの数だけ、パイロットウォッチの理想形も存在するに違いない。今回は自家用ジェット機を自身で操る、AOPA理事の西村博行さんと、彼が長年愛用するロレックスを紹介しよう。


「針の位置でGMTの計算ができるなど、直感的に使用できる時計が好みです」

西村博行

AOPAの理事を務める西村博行さんは、21歳の頃に留学先のカナダで航空機の免許を取得。20代から30代は年に1時間ほどしか飛ばなかったというが、40代半ばに仲間と4人でムーニー社の軽飛行機を所有して以来、積極的にフライトを楽しむようになる。3年前にセスナ社のサイテーション・ムスタングを購入。

 パイロットウォッチには厳密な定義が存在しない。その上、それを使うパイロット自体も多種多様だ。個人所有の軽飛行機を操縦する人も、自衛隊でステルス機を操る人も、もちろん打ち上げロケットの乗組員だってパイロットである。そのため最良のパイロットウォッチが何であるかを考える際は、誰が着用するかも重要だ。

 国際オーナーパイロット協会(AOPA)の日本支部AOPA-JAPANで理事を務める西村博行さんは、所有するジェット機の操縦を自身で行う、プライベートパイロットだ。まとまった休みを取って、セスナ社のサイテーション・ムスタングでフライトを楽しむ。そんな彼がパートナーに選ぶのは、ロレックスの「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」だ。

プリ・フライトチェック

プリ・フライトチェックは西村さん自身が行う。整備士に任せる人も多いというが、自己責任の下、タイヤの空気圧から両翼の点検までを行う。

「フライト前に空港の管制塔へ提出する必要のある飛行計画では、移動開始時刻や帰着時刻などをGMT(UTC)で記入する必要があります。また、飛行中は常時、航空管制とコミュニケーションを取っていますが、この間の時刻のやりとりはすべてGMT。通過予定時刻や到着予定時刻を急に聞かれることがあるのです。そんな時にGMTウォッチがあると便利ですね」

飛行計画

フライト前には必ず飛行場の管制塔へ飛行計画(FLGHT PLAN)を提出する。その際、記入する移動開始時刻や帰着時刻は必ずGMT(UTC)で行うため、日本であれば時刻表示から-9時間の計算が必要となる。
GMTマスターⅡ

GMT針を協定世界時に合わせておけば、飛行計画を記載するたびにわざわざ計算をしなくても一目瞭然だ。なお、西村さんが使用するGMTマスターⅡは初期のモデル。大切に扱われているのだろう、日常的に着用しているとのことだが、アルミベゼルには擦れも退色も見られない。

 そう、西村さんはGMTマスターⅡのGMT針を協定世界時に合わせた上で時針を日本時間、つまりGMT+9時間に設定している。現在でこそGMTウォッチは時針、GMT針共に居住する国のタイムゾーン(ホームタイム)に合わせておき、異なるタイムゾーンへ移動した場合に時針のみを動かす、トラベルウォッチとしての用途が圧倒的に多い。しかし本来、GMT針はグリニッジ標準時を指すためのもの。忘れがちだが、GMTマスターはパン・アメリカン航空のパイロット向けに開発された、純然たるパイロットウォッチである。GMTマスターⅡを本来の用途で使用する人と初めて会ったが、フライト中にさっと目視でGMTが確認できるのは頼もしい限りだ。

GMTマスターⅡ

飛行中の1カット。空の上でも黒文字盤は埋没することなく、高い視認性を確保していることが分かる。

「見ていただいたのでよくお分かりだと思いますが、操縦中はかなり忙しいので、時計付属の航空用回転計算尺などを、操作している暇はないですよね。対して時分針とGMT針が太くて見やすく、文字盤の反射も気にならないGMTマスターⅡは最適です。仲間には夜間の視認性に優れるApple Watchを使う人も多く、自分も一時期使っていましたが、ロレックスに戻ってきてしまいました」

 21歳で免許を取るよりも前にカナダで購入し、これまで計2200時間以上にわたるフライトの大半を共に過ごしたGMTマスターⅡ。西村さんにとって、この時計こそが最良のパイロットウォッチなのだ。

サイテーション・ムスタング

サイテーション・ムスタングを格納しているハンガーにて。迫力満点ながら、これでも超軽量ジェット機(Very Light Jet)というジェット機としては最も小型の部類に属す。パイロット1名での飛行も可能ではあるが、基本的には2名以上で飛ばすもののようで、ひとりでの操縦は非常に多忙だ。西村さんは現在、このハンガーでサイテーション・ムスタングの他に、ムーニーの軽飛行機も保管している。


「人類の最も古い夢」を育み続ける、パイロットウォッチの歴史とは?

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これは究極の1本!だけど……ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」で時計好きは幸せになれるのか!?

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2024年の新作発表も済んだので、ロレックス「GMTマスターⅡ」をおさらいしよう

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