単独主演映画「港のひかり」の公開が、7年ぶりに決定した舘ひろし。そのエレガントな佇まいや歳を重ねてもまったく変わらない体型に、同世代のみならず幅広い年代から称賛されている名俳優だ。今回は、経済学者・成田悠輔のTVトーク番組「夜明け前のPLAYERS」に出演した際に、舘ひろしが着用した時計に注目した。
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年5月18日掲載記事]
英国風の洗練をまとう、日本紳士の美学
いつまでも変わらぬダンディーな姿で、日本人としての紳士道を貫いている舘ひろし。祖父が英国文化を愛した影響を受け、幼少期から洋品店でコートを仕立て、その経験を養ってきたという。
2019年に日本ジュエリーベストドレッサー賞を受賞した際は、ステージに登壇し「テレビでこの賞を観ていて、いつかオレも欲しいなと思っていた。この年になると、ジュエリーというのは人に贈るもの、または買わされるもの。最近、身につけたのはラグビーワールドカップのバッヂだけど、これを機にジュエリーをつけていきたい」とコメントして、来場者に笑顔を向けた。
医師の家系から俳優へ、永遠のスターへの軌跡
旧士族の家系に生まれた舘ひろしだが、父と弟は医師。自身も同じ道を考えたが、絵が好きだったので建築家を目指したという。大学在学中にアメリカのバイカー映画を観てバイクに憧れ、東京・原宿にてオートバイチーム「COOLS」を結成。それが芸能関係者の目に留まり、デビューへと繋がった。
映画デビューは松田優作が主演の「暴力教室」だ。教師役の松田優作と殴り合う姿は鮮烈な印象を残し、東映の社長は舘ひろしを積極的に売り出していくように指示したという。石原プロに入ってからは特に渡哲也に憧れ、TVドラマ「西部警察」に出演して多くのことを側で学んだ。
成田悠輔との対談で着用、舘ひろしの選んだ腕時計とは
経済学者・成田悠輔が旬のゲストと本音で語り合う対談番組「夜明け前のPLAYERS」に、舘ひろしが出演。「帰ってきたあぶない刑事 ABUDEKA IS BACK」のプロモーションも兼ねていた。
年下の成田にも敬語で対応し、相手の知らない話題では語りすぎないよう配慮する姿勢に、視聴者は「紳士とはこうあるべき」と感動した。番組はYouTubeにてダイジェストが無料公開されている。
その番組中、舘が着用した時計はブレゲの「トラディション」だった。
ブレゲの歴史をオマージュしたエレガントなコレクション
「トラディション」は、ブレゲの歴史と高度な技術力を融合させたコレクションだ。オフセンターの文字盤、ブレゲ針、ギヨシェ彫り、コインエッジなど、クラシカルな意匠を現代的に昇華している。

7027の後継モデル。基本構成は同じだが、文字盤が拡大され、立体感も強調された。手巻き(Cal.507DR)。34石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KWG(直径40mm、厚さ11.65mm)。3気圧防水。503万8000円(税込み)。
舘ひろしが着用していたのは「7027」だと考えられており、ムーブメントの輪列を文字盤側に露出させる大胆な構造が特長だ。衝撃防止のパラシュート機構を4時位置に備えるなど、ブレゲならではの先進技術も誇る。
伝統と革新が調和する時計、その腕元が物語る品格
石原プロ解散後、舘プロを立ち上げ、俳優業もこなす精力的な活動ぶりで、直近では映画「港のひかり」で主演を務めることが決定している。75歳という年齢を感じさせない姿勢と気品は、彼が選ぶ時計にも表れている。
ブレゲ「トラディション」を身に着ける舘ひろしの腕元は、時代に流されず、本質的な価値を追求する姿勢そのものだ。時計愛好家の間でも高い評価を受けるブレゲの技術と美学を選び取る感性は、長年にわたり日本の映画界を支えてきた舘ひろしの審美眼を物語る。
一方で、伝統を重んじながらも革新を恐れないブレゲ「トラディション」の立ち位置は、彼自身のキャリアとも重なるものがある。渡哲也や石原裕次郎といった巨星たちの背中を見て育ちながらも、独自の存在感を放ち続けた舘ひろしだからこそ選んだ一本なのかもしれない。
ダンディーさだけでなく、人間味あふれる役柄もこなす舘ひろしの、これからのますますの活躍に期待したい。